もう12月なので今年の展開をざっと振り返ると、最初の大きな節目は5月初旬の欧州問題の表面化でした。日本の黄金週間早々にギリシャの財政問題などが材料視されてユーロが暴落したのです。
その後は市場の関心は欧州ソブリンリスク問題から米国の量的緩和(QE2)とグローバルな不均衡問題是正のための中国人民元の切り上げと事実上の米ドル切り下げを国際合意するのではないかというDFCR(De-Facto Currency Revaluation)問題にシフトしていきました。
11月には再び欧州ソブリンリスクに焦点が戻った格好になりましたが、今度はアイルランドが標的になりました。
どうしてアイルランド問題が再び統合欧州全体を脅かしているのかと言うと大きく言って二つの理由があると言われています。
1 一旦市場を沈静化させた欧州のStress Testの内容が信用出来ないという事が証明されてしまった。
2 各国のイメージで放蕩的なイメージの強いギリシャとは対照的な実直・堅気なイメージのアイルランドまで危機的な状況である事が判ったことでその他の不安視される国々も同じ問題を抱えているという不安が急上昇した。
不謹慎な言い方を許していただければ、クラスで最も不真面目な子と最も生真面目な子が掃除をサボったのなら他の子もサボっていた可能性が高いと疑われるようなものでしょうか。
12月2日(木)のECB政策決定会合では、1週間、1ヶ月物の資金供給オペの継続は確実視されていましたが3ヶ月に関しては変動金利から固定金利に切り替える予定だったものを固定金利のままにして資金調達コストを低めに維持するとともに日米のように中央銀行として購入している国債買取枠の増枠をしてくるかどうかという部分に注目が集まりました。
結果は予想通りの金利据え置きと資金供給オペの継続でしたが、注目された国債買取に関しては総裁の記者会見でも言及が無く、失望した市場がユーロ売りに動いたその時に・・・・ECBが猛烈な勢いでアイルランドなど周辺国の国債を買い始めたので市場は一転ユーロの買戻しに動き始めました。
ECBは金曜日にも同様の動きを継続し、米国の雇用統計も予想を裏切る弱い内容だったことからドル売り・ユーロ買いの動きは週末まで継続し、終わってみれば先週の水、木、金の後半3営業日でユーロは大きく復活を遂げる結果となりました。
1.29台前半から3取引日で1.34代前半まで500pipsレベルの反発となりました。ECBのTrichet総裁に関しては有言実行というよりも今回は無言実行に近い感じでした。言葉よりも行動で示したと言う事になるのでしょうか。見事な手際でした。ユーロがボトムを打ったのかどうかは今週以降見極めていく事になります。