先週は木曜日にポルトガルの10年債利回りがユーロ導入以降で最高となる7.64%にまで跳ね上がりECBが市場介入して(=同国債を購入して)事態の収拾を図るという局面がありました。週末の水準でも7%は越えているので予断は許しませんが、何が深刻かというと今回は特段引き金を引いたような事象は思い当たらず、市場に遍く燻る不安が同国債の売りを加速させたと言う不気味な背景があります。7%は金融市場が勝手に引いた心理的な合否ラインであり、これ以上の利息の負担はポルトガルにEU/IMFからの支援要請を余儀なくさせる水準と思われていますので今週予定されている同国の1年物の入札結果に注目が集まります。規模は約1bioユーロです。
FRBのBernenke議長は12月と1月で0.8%も失業率が低下した事は求人増加や企業の今後の採用計画の増加などにも裏付けられており非常に勇気付けられる状況であると言う見解を示しましたが、本格回復には数年掛かるとの見通しを示して過度の楽観論を戒める発言をしています。
これはFRB内部にも昨年11月に議長主導で導入された$600bioの資産購入をすると言うLSAPについて景気が回復軌道に乗ったら早期に切上げるべきだとの意見が出ている事も意識した牽制発言であり、一部のコモディティ価格が上昇しているがインフレーションに対する懸念は時期尚早であるという見解を強調する内容になっています。
データ的にインフレーション懸念が上昇しているのは寧ろ英国や豪州なのですが、一部で木曜日の利上げ可能性も指摘されていた英国ではBOEが政策金利を据え置き(0.5%)、GBP200bio規模の資産購入プログラムも維持すると発表しました。今後は今週16日(水)のInflation Reportと来週23日(水)の議事録の内容に焦点が移ります。
豪州は雇用の数字が市場予想比結構弱めに出た事などもありインフレ懸念と利上げ期待もやや後退しています。
カナダですが、12月の貿易収支が10ヶ月ぶりに黒字に戻っています。規模的にもCAD3bioの黒字と言うのは2008年10月以来の高水準でした。エネルギー資源の輸出が好調で輸出が9.7%伸びたのに対して輸入は0.7%増という微増だった事で大きな改善となりました。
カナダと米国と言う北米経済が足元は好調を維持している状況ですが、カナダは元々が黒字国だったものが過去9ヶ月のスランプを経て復活しているのと米国も雇用の回復基調に加えて債券カーブでもBellyと言われる5年~7年ゾーンが売られており、これは従来民間の資金需要が回復する時に起こる現象であることから幅広な経済活動に関する底入れ期待が上昇しているようです。
このような状況下で世の中のお金の流れに関しては二つの大きな潮流を意識しておく必要があるでしょう。①債券から株式へ、②Emerging市場からCommodity市場へ というものです。
①に関しては、現状株式市場は明らかなOverbought状態にあり、あらゆるテクニカル指標が反落調整を示唆しながらも市場がそれらをぶっちぎる形で上昇を続けています。こういう時は他市場との兼ね合いで判断して行く必要があるのですが、今は債券から株式と言う大きな潮流があるので今年の株式市場は調整が始まる前に相当な水準まで上がってしまう可能性が出てきたようです。
②に関しては、インド株がかなり調整を始めているので上海など他のアジア市場や中南米などの新興国にも飛び火するリスクも無視出来ないでしょう。