2007年6月28日木曜日

Arrived in NY under thunder storm.

無事にNYに到着しました。

予想通り飛行機はほぼ満席でしたが、極少ない空席の一つがなんと私の隣でしたのでちょっとラッキーだったと思います。

機内では2階の禁煙席でしたが、通路を挟んで左右に3席ずつという配置になっていて、私の席は左3席の一番通路側でした。窓際に若い女性、通路側に私、真ん中が空席と言う状態で離陸時間が近づくにつれて徐々に期待が膨らんできましたが、最後の最後に走り込むように一人の乗客が入ってきたので覚悟を決めたのですが、この人が2階席のもう一つの空席に座るのを見て安堵の胸をなでおろしました。

通路側のシートは前の座席の下の荷物を置けるスペースが小さかったので、私は窓際の女性に断った上で中央座席の前方シートの下に私の機内持ち込み荷物を滑り込ませました。
 その際に私が真ん中の空席を指差して、「ちょっとラッキーかもしれませんね」と言うと、窓際の女性も「はい!」と満面の笑みを見せながらガッツポーズを作っていました。

私は早速読書を始めましたが、エコノミークラスにはシートが狭いという事に加えて通路が狭いと言う問題があることに直ぐに気がつきました。中央座席が空席になった事で前者の問題は消滅したのですが後者は最後まで私を悩ませました。
 通路を通る人々がショルダーバッグなどを持っているとかなりの確率でそれが私の側頭部を直撃しましたし、成人が半身になって通るのがやっとという程度の通路なので普通に歩かれると冗談ではなく女性の骨盤などが私のこめかみを直撃することもありました。

一番困ったのはベテランと思われる私よりも年長なくらいのスチュワーデスさんでした。土俵入りでもするのかという下半身の彼女が、通路を通る度に私は被害にあい、特に通路の反対側の乗客に食事や飲み物をサーブする時に彼女がかがむと、こちら側に出っ張る格好となる彼女の臀部が私の顔を直撃するのでした。一度思わず”うわ~”と声が出てしまったほどです。

どういう訳か世の中相性の悪い人と妙に縁が有ることもあり、私が読書用のライトのSwitchを探して色々ボタンを押していたらその中にサービスリクェストのボタンがあったようで突然暗がりからこの女性が現われたりもしたのですが、復路の成田行きの便にもこの人がいたらどうしようなんて思ってしまいました。

JFK空港からは、YellowCabでManhatanのGrandCentral駅まで来ましたが、NY市内までは一律45ドルのところを69ドル請求されるという手荒い歓迎もありましたが、それが手厚い歓待に思えるくらい懐かしさがこみ上げてきました。

その後電車とタクシーで郊外の自宅に着いて、ドアを開けて家族と対面しましたが、今週は東海岸に熱波が到来しており・・・・・既にエアコンを取り外した家の中で子供は上半身裸で遊んでおり、妻は汗だくで必死に引越し準備をしていました。

それにしても異様な熱波だと思っていたら、程なくかなりの雷雨となり、一部の地区では洪水被害が出るなどのStormとなってしまいました。テレビでは、NY郊外の多くの地域でも大木の倒壊や停電なども発生していたようです。

CT州やNY郊外では、かつては真夏でも窓を開ければ過ごしやすいという程度で、暖炉やヒーターはあっても冷房などとは無縁だったのですが、この数十年でかなり状況が変わってきたようです。

地球温暖化や気候変動という問題に改めて思いを馳せる最初の夜でした。

2007年6月27日水曜日

Paying through the nose to fly.

27日の水曜日の便で渡米します。月を越えて7月3日の火曜日の便で家族と一緒に戻ってくる予定です。もう日本に来て4ヶ月弱と言う時間が経過していると言うのはただ驚くしかありません。

業務命令による所謂転勤ですので、本人にも家族にも会社がビジネスクラスの座席を用意することになりますが、今回の私のように家族全員が一度に移動するわけではない場合、特にあとから来る家族を迎えに行く場合は結構経済的に大変です。

当初私は、3月の自分の移動は自己負担のエコノミーとして、7月にて家族を迎えに来て一緒に帰るときに家族全員分のビジネスクラスを用意してくれるように会社と交渉しましたが全く相手にされませんでした。

仕方なく3月にビジネスクラスで日本に来て、今回は自己負担で往復することになったのですがちょと悲しくも面白い発見もありました。

私の今回の計画は、往路をエコノミーとし、復路を家族と同じビジネスで押さえようと言うものでした。

ところが・・・・なんと・・・・・・・・・・・・

米国籍、或いは永住権保持者でない人間は米国行きの片道切符というのは買えないことが発覚しました。Agentから私の場合は格安往復チケットでも買って復路を放棄するしかないという悲しい事実を告げられて愕然とした私は、思わず”せめて一番お得な組合せを探してください”と頼み込んだのでした。

結局往路が東京ーNY、放棄するので安ければよい復路がホノルルー東京という妙な組合せとなりましたが、この報復チケットが800ドル台で、家族と一緒に帰るために購入した片道のビジネスクラスが約3倍ですからこの価格差は何だと言う気がしますね・・・・
今回は往路(エコノミー)と復路(ビジネス)の待遇の違いを研究してみようと思います。

電化製品の調達と今回の旅費で相当お財布にダメージがあったのですが、最後にはおまけのオチがつきました。

Agentからチケットが発券されて、米国の自宅に郵送されて来たので妻が内容をチェックしてくれたのですが、私は細かいことは何も言っていなかったので私のチケットの放棄する復路(ホノルルー成田)という表示を見た妻は、私が最後のサプライズで家族でのハワイ旅行をプレゼントしようとしていると思ったのでした。

事情を知った妻は拍子抜けしてして笑っていましたが・・・・・・ そんなお金も時間もないのよ・・・・

2007年6月24日日曜日

安普請だな~

土曜日には待望のエアコン取り付け工事が行われましたが、二つ購入したうちのリビング+キッチン用に購入した大きい方のエアコンは取り付けられずに持って帰ってもらうことになりました。
 天井と壁の材質および構造に不安があり、断言は出来ないもののエアコンの重さに耐え切れない可能性があるとの説明を受け、”そのリスクを取りますか?”と聞かれてなかなかYESとは言えないですよね。
 ほぼ同じパワーで軽いやつもあるようなので別のものに取り替えてもらう必要がありますが、その手続きにも購入した店に出向く必要があるとの事で日曜日に行って来ようと思います。

今住んでいる建物は安普請のようで、ガスを開通してもらう際には業者の人にガス漏れセンサーが使用期限切れであるので交換を勧められ、洗濯機の取り付け時には洗濯機用蛇口が法令基準を満たしていないので使用の都度蛇口を閉める事を指示され、この蛇口では水漏れ事故などが起きてもメーカーも販売店も保障の対象外とせざるを得ないとの通告を受けました。

実は今回のエアコン取り付け不能の説明を受ける時にも、業者が手で押しただけで天井が持ち上がるという恐ろしい光景も目にしました。近隣の相場からすればかなりの低水準で賃貸しているので文句は言えませんが、将来不動産を購入するようなことがあれば色々と目配りをしないといけないと痛感しました。少し前の事件で、いい加減な建築士による手抜き設計・工事が発覚して大問題となり、多くのマンション保有者が多大な金銭的且つ精神的な苦痛を蒙る羽目になった話がありましたが、今回のことももしも購入した家だったらかなりショックだったのではないでしょうか。

子供部屋となる部屋に取り付けた小さな方は無事に装着出来ましたが、すこぶる快調で改めて日本製品のレベルの高さを確認した思いです。売り場でははっきり分からなかったことですが、兎に角音が静かなことには驚きます。極論すればエアコンがONなのかOFFなのかは分からないくらいです。またこの製品には効率性を高める工夫の一環として部屋の中の人間の位置を確認してそのエリアを重点的に快適にするという機能があるので、ゲゲゲの鬼太郎のオヤジさんのような”目玉”によく似たセンサーが私を監視しており、ちょっと面白いと思いました。

それにしても実際に目に見えない部分でどういう工事がなされていたのか等はこうして実際に住んでみて初めて分かる世界ですから、最近広告が良く入るモデルルーム見学などでもチェックのしようが無いと思います。結局は信用の置ける業者が作ったと言うような情報を頼るしかないのでしょうか。将来不動産を購入するとなると大きな決断を要する買い物になりますが、そういう時に我々にはわからない作り込みやそれこそ蛇口の規格などまでチェックしてくれる人が居れば助かりますね。実は洗濯機やエアコン、PCなどを買うときにも膨大な選択肢の中から何を選ぶか、或いは選ぶ以前にそれぞれが何がどう違うのかを理解するのは至難の業だと感じました。

そういうのも充分商売のヒントになりそうですね~

2007年6月21日木曜日

課題先進国の ”課題”

久しぶりの日本の梅雨は幸いにして例年よりも雨量が少ないようですが、今週くらいから夏の気配が確実に強まってきました。
 既に日中は相当暑いのですが、私は昼間は空調のきいた会社に居ることが殆どで朝と晩しか自宅には居ないため、これまでのところ何とかエアコンなしでも大丈夫でした。
 しかし今週に入ってからは、朝6時過ぎに家を出た時から既にかなり蒸し暑く上着を脱いで歩いています。また夜寝る時も網戸にして風を入れながら就寝しています。

7月には家族を呼び寄せますが、日中も過ごし易くしてあげないとたまらないだろうと言うことで遂に先週末に最新式のエアコンを2台購入しました。今週末に取り付け工事を行いますがちょっと楽しみです。

少し前のドラム式洗濯機の話とも通じますが、日本の電化製品は本当に多機能で様々な工夫に感心しています。
 エアコンでも最新式は、10年間掃除不要というのが当たり前で、自分でフィルター掃除を行うようになっています。米国で使用していたエアコンはすぐにフィルターに埃がたまり、細菌が発生するのか久しぶりに使う時などはちょっと匂うような時もありましたが、自己掃除機能付き且つ殺菌機能なども充実した日本のエアコンは大いに期待できます。冷やすだけではなく高い除湿能力で快適な空間を維持すると言うのも素晴らしいですね。

ところで、これらの工夫の背景には何があるのでしょう?

それを考えた時に直ぐに思い浮かんだのが、東京大学の小宮山学長が訪米時の講演会で力説されていた言葉です。

”日本は課題先進国である”
”少子高齢化など現在日本が直面している課題は50年後、100年後には全世界の課題になる”

彼はそういう話をされていました。

我が家は3階建ての建物の3階にありますが、1階の住人は夏になると油断すると布団もカビる様な湿気に悩まされるそうです。また私と同じ3階の住人に聞くと、湿気は1階よりはマシですが、物凄い熱波を感じるそうです。
 布団もカビるような湿度というのは恐ろしいの一言ですが、こういう気候だからこそこういうエアコンが開発されたと言う事が言えるのでしょう。米国の東海岸では、ここまでの除湿機能も除菌機能も不要なので、このような技術も開発されないのだと思います。

”課題があるところに対策がある”、”課題が工夫を、工夫が技術を生む”

そういう事だとすれば、少子高齢化、地方の過疎化、都心と地方の格差拡大、などという課題にこれからの日本がどのように対処出来るのかはとても重要だと思います。

もしかしたら先進国の中では突出した高温多湿の国である日本の技術が所謂地球温暖化対策の切り札となる可能性も充分にあるのではないでしょうか?

大学まではエンジニアを目指していた私は、今金融と言う分野に身をおいていますが、長期にわたる異常な低金利の国でこそ発展する投資技術と言うものもあるのではないかという気持ちになってきました。海外のヘッジファンドの動向を必要以上に気にしている時代もあったと語り合う時代が早く来ればいいな~と思っています。

今日も暑いな~・・・先ずはエアコンを待ちましょうか。

2007年6月19日火曜日

Angel's grin:Something beyond devil's whisper

月曜日は市場も静かでいつもより幾分早めにオフィスを出ることが出来ました。もしも午後8時までに帰宅できれば水戸黄門が見れます。
 私は足早に帰路を急ぎ、タイミングよく発車寸前の電車にも飛び乗ることが出来ました。

ある駅で、そのJRから私鉄に乗り換えた時でした。

先ほどの自分のように発車寸前に飛び乗って来た男がいました。長髪、ふけだらけ、汚れた衣服、髭ぼーぼー・・・・・・車内は既に混んでいましたが、彼は私の真横に立ちました。スーツにネクタイ姿の私と彼は座っている人達の目には極端なコントラストを構成していたのではないでしょうか。

私はWalkmanを聞いていたので、横目で彼の仕草を見ていただけですが、彼は私とは反対側の隣に立っていた男性が読んでいた雑誌のグラビアを顔をうずめるように覗き込んだり、座っている乗客の顔を一人ずつ覗き込んだりしていたようです。

インド音楽にはまっていた時のジョージハリソンかオカリナを吹かない宗次郎がしばらく風呂にも入っていないようなイメージの男でした。

二つ目か三つ目の駅に近づいた時でしょうか、やや大きめに電車が揺れた時に、いい加減に吊り輪に掴まっていたこの男がよろめき、丁度そこに運悪く同じようによろめいて来た女性の足が彼の足を踏んでしまったようでした。

「馬鹿野郎、テメー何しやがるんだ!、殺すぞこら」

女性はすぐに謝りましたが、この男はしばらく彼女を毒づいて、彼女のすぐ横に立って威嚇を続けたので車内は極度の緊張に覆われました。

次の停車駅で車両を換える人々が出てきました。座っている乗客は引田天功ショーで催眠術に掛かるサクラのように頭を垂れて、目の前の女性などはそのままメトロノームのように左右に揺れながら距離を取り始めました。ダルマじゃねーんだよ。
 何気に横を見ると今度は横に立っていた女性も横歩きで距離を取り始めていました。蟹かお前は。

問題は、足を踏んでしまった女性が金縛り状態で動けないのかその場に立ちすくんでしまったことでした。真横にいるあの男から怖い顔で見下ろされて顔の表情も引き吊っていました。

彼女が車両を移るなどの行動に出ると思っていた私は、そうすれば私もこの男から離れようと思っていたのですが、これでは完全に私も動けなくなりました。怖くないといえば大嘘になりますが、万が一これ以上の事態となれば彼女を助けなければいけないし、それ以前に私がそこに居ることがある種の抑止力にもなると思ったのです。

可哀想な女性と、変な男と、そのすぐ側にスーツ・ネクタイの私が居て、2メートルくらい空けてまた乗客が居ると言う不思議な情況が3駅くらい続いたでしょうか、幸いにしてタバコが吸いたくなったらしいこの男は、胸のポケットからタバコを取り出すともう一度女性を毒付いて下車していきました。

ドアが閉まり、走り出した電車の窓からホームでタバコを吸うこの男と真正面で目が合い、何故かその瞬間、彼の目が笑ったように感じました。

彼女は大丈夫かしら・・・・・・・・

そう思って左後ろを振り向くと、そこには・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰も居ませんでした。

やっと金縛りが解けて車内を移動したのだと思うのですが、何かとても不思議な体験をしたように思いました。

自分も逃げたほうがよいと言う悪魔の囁きを無視してその場に居続けたことはよしとして、積極的に彼女を助けたわけではないというどこか情けないという気持ちもあり、やや複雑な気持ちで帰宅しました。

Lawsonで買ったおにぎりを食べながら水戸黄門を見ました。里見浩太郎バージョンは初めて見ましたが、ちょっと元気すぎますねあれは。反対に私はもう少し元気でも良いのかもしれません。

悪魔の囁きと天使の微笑を両方垣間見たような夜でした。

2007年6月17日日曜日

Last comes compliance. Could this be a blind spot of global economy?

中国における知的所有権の軽視まではともかく、毒野菜、毒肉、毒入り歯磨きなどの輸出による問題の広がりは場合によっては中国経済のアキレス腱になりかねないという危惧を抱かせます。日本でも中国産の土鍋にカドミウムが使用されていたことが発覚し、輸入元が製品の回収に動いていました。

中国は”世界の工場”を目指して膨大且つ安価な労働力を提供し続けており、世界中の企業が生産拠点を中国に移す動きを促進してきました。世界中の企業が自社製品を中国で生産して自国に逆輸入して販売していると言うのはまさにGlobalizationの実現であり、事実上の雇用の輸出となる為に米国の製造業界なども必死にロビー活動をしていますがこの流れを変える力はありません。

経済のグローバル化の恩恵を受けて中国とともに世界経済を牽引するのがインドですが、ある米国の要人が最近の公演の中で、インドは中国以上に有望であると予測していました。その理由は国民の殆どがほぼ問題のないレベルで英語を理解し、使えるという事だったのですが、この要人は触れていなかったインドの人々の高い数学力やIT理解度などを考えても充分に納得できる話だと思いました。

ところが・・・どっこい大作

少し前に自社のオンラインバンキングのアドミンセンターとカスタマーサービス機能をインドに移転したある英国系銀行があるのですが、そこが今結構な問題に直面しているそうです。
 トラブル続出と言うと何かシステム統合の問題でもあったのかと思ってしまいますが、実はこれ、不正の頻発が問題なのだそうです。
 送金の依頼をしたら余分に引き落とされたというような苦情(というより事件ですね)が多く、中には何かのFEE程度としか思わずに気にしないような小額の引き落としを広い範囲からかき集めたり、ドンブリ勘定と思われる狭い範囲から何回にも分けて引き落として懐に入れてしまうような事例がかなり起きているそうです。
 
これらはインターネットなどのHacking行為と同じで、悪意に加えて相当高い技術がないと実行できない訳ですからインドあたりも単純に、英語、数学、ITの水準が高い安易な労働力などと思っているとモラルの部分で足元をすくわれかねないと言うわけです。

私の多くの友人達は、中国の人もインドの人も極めて優秀かつ善良な人々なのですが、それぞれの国内ではどうやらモラルの面なども含めてかなりの階層に分かれていると言う現実もあるのではないでしょうか。更に急激に裕福になっていく人々も出ている中で乗り遅れたくないとの欲望からモラルが破壊されやすい状況にあるということも考えられます。

欧米や日本でも実は高度経済成長期には随分とイケイケドンドンモードで突っ走ったこともありましたし、私も経験した80年代の日本のバブル経済の時の日本のモラルだって決して褒められたものではありませんでした。もしかしたら経済的な成功を収めたあとの成熟期になって初めて所謂コンプライアンスというものが根付いていくと言うことなのかもしれません。

地球温暖化問題でも先進国の懸念を理解も共有もしながらも経済成長を犠牲にしてまで環境に配慮する気はないという中国やインドも含めた途上国の一致したスタンスを見ていてもそう思うのです。

Globalizationの波は、MoralやComplianceをも地球規模で共有させることが出来るのか、それとも一旦この波も世界経済も後退するのか・・・・?

Last comes compliance. .................or Compliance lags. というのはGlobalizationの盲点或いはアキレス腱になるのでしょうか?

それにしてもこと細かさに関しては日本のコンプライアンスは米国の比ではありません。
成熟しすぎなのよ・・・・日本は・・・・

2007年6月16日土曜日

Memory Storage and Restoration.

皮下脂肪というものは、一旦付いてしまうと運動やダイエットなどで燃焼させたり完全に取り去ることは不可能で、痩せた様に見えても実際には脂肪の細胞が圧縮されているだけなのでちょっと油断するとすぐに復活してしまうと言う話を聞いたことがあります。再び太ると言うことではなく、無理に圧縮していたものが復元してしまうと言うことだとしたら所謂リバウンドと言うやつが早いのも当然かとも思えます。

記憶と言うものも同じようなものかもしれません。

先日書いたように今週から立て続けに旧友達との再会を消化していますが、その中で、ちょっとしたきっかけから長年忘却の彼方に封印されていた(?)過去の記憶が湯水のように溢れ出てくるという事を何度も経験しました。
 こういうことがあると、驚きと興奮から妙に盛り上がるのですが、やはり自分がこれまでの人生で時間と空間を共有した人々は潜在意識という名前の圧縮メモリーの中に存在し続けるし、私自身も皆の中に居続けるのだと言う思いを強くしました。クッションおじさんのように圧縮されているかもしれませんが。

本日も会うのは98年以来という友人と新橋駅のSL広場で待ち合わせをし、格闘技の会で使用して以来気に入っているFERMOというイタリアンレストランに行きました。
 この友人は京都の人で、高校を卒業後はキャバレーやピンクサロンのボーイ等をしていましたが、突然啓示を受けたように覚醒し、米国の大学を出て金融仲介業者となった人です。

米国で出会ったお互いが、新橋で一緒にパスタを食べていると言うのは非常に不思議だと言う話をしながらアルコールが入ってくると、後は蛇口をひねったような思い出の放流状態となりました。

実はこの店、味も雰囲気も良いものの強いて気になる点を上げるとすればテーブル間が狭すぎます。横のテーブルにはアベックがいて完全に二人だけの世界に浸っていたのですが、二人の会話は洋画の恋愛物の吹き替え作業のごときでした。

隣の雰囲気を壊しては申し訳ないと思いながら、我々は当初は上品に振舞いながら、笑っちゃう会話にはお互いに”目”言葉で反応していました。

男 「君と話していると疲れが抜けていくようだ。時を経つのも忘れてしまうね」

(私と友人の目言葉 → おいおい聞いたかい?)

女 「私も何か今夜は子供に戻った気分」

(目言葉 → 子供の顔はそんなにてかってねーだろうが)

女(携帯をチェックして) 「あ、5件も入ってる。X君、Y君からも入ってる」
男 「XやYも電話してくるのか・・・・・・折り返ししたほうがいいんじゃないの?」
女 「・・・・・・・・・・本当はそう思ってないくせに・・?」

(目言葉 → 物凄い駆け引きだ。Bid-Offerが詰まって取引が成立する寸前に似ているじゃん)

と、ま~こういう具合です。

ところがあなた・・・上述のような過去の記憶の津波のような復活が始まってからはアベックへの気遣いは完全に消え去り、私と友人は時空を超えて昔の我々に戻ってしまいました。

私 「そういえばお前、陰金だったよね」
彼 「よー覚えてるなー そんなことこっちも言われて思い出したわ」
私 「一日中かいてたらパンツに血が付いたって言ってたよ」
彼 「いやー痒かったわ。何やったんやろね。陰金は違うと思うわ」
私 「南京虫かもね。確かチャイニーズレストランの二階に居候していただろう」
彼 「そうかも知らんね」
私 「俺、1年ほど独り暮らしだったじゃない」
彼 「はいはいそうね」
私 「お前からその時の軟膏の残りもらったの覚えてる?」

こんな会話も絶対に隣のアベックに聞こえていたはずです。

挙句の果てには、隣のテーブルの白ワインのボトルがクーラー内の氷の関係で斜め上に突き出していたのをトイレの帰りに避け損ね、脇腹を直撃された私は酔いの回ったやや大きめの声で・・・・・・・・・・

OOPS!

とやっちゃいました・・・・・・

チェックを済ませて席を立つ前に、男が身を乗り出すようにして「もう少し飲もうか?」と誘い、女性も頷いていました。二人の指先が少し重なっているようでした。

私と友人も最後はレアチーズケーキまで食べながら、復活して押し寄せる記憶をぶつけ合う楽しい時間をすごしました。

走馬灯・・・・・・そんな言葉を想起しながら、暫し目を閉じた私の指先にも・・・何かが触れたようで目を開くと・・・・・・・勘定書でした。

私 「げ、結構高いじゃん・・・」
彼 「たのみ過ぎよね・・・・」

酔っ払いの反省モードで帰ってきましたが、旧友との再会は、居酒屋あたりが無難かなと思い始めました。

かつてカレンシーデリバティブの世界を共有したこの友人は、今はクレジットデリバティブ市場に居ます。再会ラッシュの友人達は良く考えると今では株式、債券(金利)、為替、クレジット、コモディティと完全に金融市場を網羅していることに気が付きました。

皆がそろえば世界が見える・・・・なんて言い過ぎですが、人の繫がりとは不思議なものですね。近くに居る疎遠な人も、遠くに居る親密な人もたくさん居ませんか?

2007年6月15日金曜日

"美しい国"よりも先ずは"まともな国"へ

時代の変わり目と言うことなのでしょうか。この日本と言う国は色々な分野でまさに外科手術的な浄化が進行中のようです。このプロセスは、ここ数年特に加速してきた印象もありますが、現在進行形のものだけでも談合問題、野球の裏金問題、市中金融機関の貸出金利制限、大相撲の八百長疑惑、生損保の保険金未払い問題、社会保険庁のずさんな年金データ管理などなど・・・・実はずっと気づいていたけどパンドラの箱のように敢えて開けずに来た、もっと言えば談合などは一部では必要悪のように黙認すらされてきた事象に鋭いメスが入っています。

あまり対象を拡大すると収拾が付かなくなるので、自分でも気になってきた年金問題を取り上げてみましょう。丁度これは、今の日本という国がいかに訳がわからない状態であるかを象徴的に示しているとも言えるからです。

国の仕事が如何にいい加減だったかについては驚愕する思いです。手書き台帳からコンピュータ管理体制に移行した時に誰に帰属するかわからなくなったデータが5千万件あるとか、元データはマイクロフィルムも元帳も残っていないものも多いとかいう状況については、ズバリこれはシステム移行に完全に失敗したのだと言い切ることが出来ます。更にデータがおかしいのではないかとか、過去に収めたはずのデータが消えていると言う照会に対しては国民側が証拠を持って証明しないと全く取り合わず、システム移行に頓挫しておきながら5年経過で時効などという無謀なルールで自らを守っていたと言うことは横断歩道、いや言語道断です。

ある邦銀が合併だか統合だかの際にシステム統合に失敗した事がありました。あの時に国がその銀行に下した処分や銀行が自主的に課した役員退職金の支払い凍結などの厳しい処置との対比において、これまでの国側の対応や身内である社会保険庁の守り方は異常です。国民の怒りに後押しされたメディアや野党が必死に与党を突き上げて状況は変わりつつありますが、ここへ来て与党側からも社会保険庁の解体と年金業務の民営化案が出ているというのは笑止千万です。

金融に限らずに殆どの産業がそれぞれの監督官庁の管理下にあり、お役人たちは絶大な権限を持って各企業に対する検査や監査を行い、必要に応じて行政処分や強制力を伴う指導を行います。
ところが、民間を管理・監督・指導することは得意な行政も自分たちで事業を行えば社会保険庁のようなざまとなるのです。そしてその解決策が民営化だというならば、いったい国や行政に民間を管理指導する能力が最初からあるのかという疑問がわきます。

私に投票権があるのかどうかは要チェックですが、今度の参議院選挙は大いに注目しています。米国ではかつて多くの人々が10年間不況が続く中で革命も政権交代も起こらない日本という国を不思議がっていました。当時私は、そういうものかな・・・という程度にしか感じていませんでしたが、この参院選で与党が大敗を喫しないとしたらやはり日本という国や国民に対して私も全く同様な気持ちを抱くことでしょう。この年金問題や自殺した故松岡農相問題なども含めて与党の対応は不遜の一言に尽きると思うからです。

”美しい国”の前に”まともな国”であって欲しい。そう思うのです。

政治と国民、国家と国民、官庁と民間、他の先進国との比較においても異常な上下関係とも感じるパワーバランスにも外科手術的な修正が入ると日本も本当に良くなるような気がします。

2007年6月12日火曜日

Reunion after a long seperation.

今の私を形成しているのは、これまでに出会った全ての人々からのReflectionであるとよく思います。
数え切れないくらい多くの人々と出会い、別れ、そして再会してお互いの人生に参加しあってきました。
時間の長短、距離の遠近、親密さの濃淡などはありますが、遭遇した人々全てから気が付かないところで必ず何らかの影響を受けて来た事に気が付いてハッとする時があります。

米国在住時代の最後の2年間ほど私は定期的に日本のテレビ番組に出演していました。
 今考えても不思議なのですが、会社から内々に帰国の打診があり、少々動揺していた時に立て続けに何人もの旧友たちからE-mailやBloombergーmailが入ったことがありました。皆が一様に偶然テレビで私を見て涙が出るくらい懐かしくなって必死に連絡先を探してメールを入れたという内容でした。
 特にBloombergという端末は、名寄せで世界中の人々が検索出来るのでBloombergの使用を継続するような仕事(要するに金融市場関連業務ですね)に留まる限り、色々な人の近況を辿ることが出来るのです。(余談ですがMLB選手などの有名人の情報まで出ちゃいますよ)

私の米国行きを喜んでくれながら非常に寂しがってくれた人達。私が不精なせいもあって流石に10年を超えると徐々に付き合いが薄くなってしまった友人達から押し寄せたメールは、暫し私をタイムスリップさせて昔の思い出に浸らせるとともに、帰国と言う現実を受け入れる準備をさせてくれたことは間違いありません。

番組に出演するようになってから既に2年ほど経過していた時期ですので、なぜあのタイミングで旧友たちからあのようなメールが押し寄せたのかは今考えても不思議で仕方ありませんが、私は神様の演出であり、抗うべきではない流れが出来ていると判断して身を任せることに決めたのでした。

今週から来週にかけては、そんな旧友達との再会がたくさん予定されており、月曜日の晩はその第一弾でした。

本当に楽しい会でした。予想以上に人が集まってくれて懐かしさ爆発と言う感じで最初から大いに盛り上がりました。立場的には時として利害が対立するポジションで仕事をしていた人間同士も顔をあわせたのですが、やはりお互いに必死で駆け抜けたペーペーの時期を共有したと言う連帯感も強く、まさに立場を超越したReunionとなりました。

お互いのその後の人生について色々な事を話し合い、色々な発見やそれ以上に有意義な再発見がありました。

私はやはり自分の中の無意識な部分にこの人達がいると言う発見をしましたが、私自身が忘れてしまっているようなかつての私の言動に影響を受け続けていると言う人もいて、半分はお世辞にしても彼らの中にも自分が存在したのだと気付かれました。

生きると言うことは、こういうことでもあるのか・・・・・

そんな想いとともに、神様のマスタープランの中で再びそうした仲間達とReuniteした日本での生活に少々希望が持てた気がする夜でした。

何か面白いことを考えようという野心が蘇ってきました。

When lonliness finds you.

帰国してからずっとあるイベントのプロジェクトに従事してきました。
 海外が長かったせいで、非常に官僚的な部分もある日本の会社の動かし方に不慣れだった私は時として非常に苦戦しましたが、孤軍奮闘の結果何とか形を作ることが出来ました。

このイベントは先週遂に本番を迎えて成功裏に終了し、今後の細かい費用の支払いなどを除けば事実上私の双肩から大きな荷物を降ろすことが出来ました。

イベントは都内の著名ホテルで行われましたが、国際的なイベントで海外からもずいぶん人が来ており、その一部には私の友人達も入っていました。
 勿論ずっと掛かりっきりだったわけではありませんが、数ヶ月間担当者として準備を進めてきたイベントですので本番のイベントにも参加してお祭り気分を楽しめばこれまでの苦労も報われるだろうと私はかなり期待していました。

ところが・・・・・どっこい大作

営業課の作成した当番表では、私の出番は前日夜と当日早朝の会場展示物準備と当日夕刻の後片付けとなっていました。日中のイベントには営業課の人間が交代で参加して顧客のケアや展示商品の売り込みを行う体制となっていたのです。

ま~仕方ないかな・・・・

特定の企業を担当しているわけではない以上、それは仕方の無いこととも思えました。
 ちょっとさびしい思いを抱きながら当日の早朝から会場で準備を行い、イベント開始を見届けてからオフィスに出社した私は、自分の担当時間を終えて戻ってくる営業課の同僚たちがわが社の展示が充分ライバル企業のそれと互角以上の出来栄えであったと褒めてくれるのをせめてもの慰めにしていました。自分は自分の持ち場で役割は果たしたのだと。

夕方ホテル会場に出向いて後片付けをして大きなダンボール箱をいくつも抱えてタクシーで帰社する途中に一人だけ会場にも残って後片付けを手伝ってくれた後輩が”そもそもどうしてロバートさんだけなんでしょうね・・・後片付けの当番が・・・・”と言ってくれた時には、しまい込んでいた感情がちょっと揺さぶられそうになりました。

帰社後に全てが完了したと言う報告をしようと上席者を探しましたが、なんと全員退社済みでした。

まじ・・・・かよ・・?

脱力状態で週末を過ごしましたが、週が明けてから、どういう風の吹き回しか(?)、イベント成功に尽力したスタッフを慰労する昼食会を開きたいと言う話が持ち上がりました。

少し・・・気持ちが持ち直した感じですが、昼食なんかよりも、やはりあの時、オフィスに残っていてほしかったと強く思います。形だけではちょっと寂しい・・・・・

When lonliness finds you, you think of ....life.

2007年6月10日日曜日

米国は世界の5番街か?

先週は、火曜日にFRB のBen Bernanke議長が現在進行中の住宅市場の低迷は当初予想したよりも長期間米国経済成長の足を引っ張ることになりそうだと言う発言をして債券が買われて金利が低下し、為替市場では米ドルが下落して注目を集めました。
 しかしその後結局長期金利が大きく反転上昇し、米ドルも反発して週を終えているので、Bernenkeさん・・・またやちゃったな・・・と言う感じです。金融市場では、この人の言動で相場が動いた時の相場の持続性が非常に短命である事が知られており、可哀想な事にこの人はトレーダーでもないのに最低のトラックレコードの男などと一部では呼ばれているようです。

他人のトラックレコードの話はさておき、全米で見た場合には実際に住宅市場の低迷はまだまだ継続しているのでしょう。
 今でも不思議に思うのですが・・・・今回も然りですが、これまでの住宅市場の低迷時にもNY地区(含むConnecticut州、NJ州)の住宅市場は売買市場も賃貸市場も殆ど影響を受けていないのです。実際にNY市内や郊外でも今年に入ってからも物件の値段は上昇しており、全米規模で見た場合の住宅スランプからは明確に一線を画しているようです。

消費全般についても全く同様で、どんなに景気が悪いと言われ、経済指標も悪化し、FRBが金利を下げたりしている時ですらNY市には観光客が溢れ、高級レストランやホテルも予約で一杯なのです。

週末の5番街などは歩くのも大変なのですが、実は通りの両サイドに陣取るビジネスの顔ぶれは少しずつですが変化しており、この新陳代謝にこそ衰えぬ活力の源があるのだと考えられます。

各ビジネスには好調不調の時期があり、好調時にはNY市にも出店して勝負をかけるものの、不調時には撤退してその時に勢いのあるビジネスがそれに取って代わるということが繰り返されて5番街全体の反映が維持されていると言うことです。

視野を広げて考えてみると面白いことがわかります。
世界中の国々は、入れ代わり立代わり好景気と不景気を繰り返しながら勢いのある国ほど米国に製品を輸出して来ました。そしてその過程で、米国の外側ではかつての日本や韓国から今では中国、インドというように景気の循環が起きていますが、この間米国だけは一定して繁盛していたと言うことに気が付きます。

実質的に製造業からサービス業への転換が完了したともいえる米国の経済モデルの奥深さは、米国内の住宅市場の中でNY地区はいつも好況であったり、全米では消費が落ちていてもマンハッタンの5番街だけはいつも例外のように消費が強いというように、世界的な景気の波や地域的な栄枯盛衰はあっても米国経済だけはいつも堅調だったと言う点にこそ見出すべきです。

そう・・・米国経済のビジネスモデルは、世界の5番街なのだと言っても良いのではないでしょうか?

米国は世界の中の5番街と言うコンセプトはそれなりに真理を付いていると思っているのですが、それだけに5番街の景気が如実に低迷するようなことがあれば米国経済も世界経済も本当に危ないと考えるべきなのだと思います。

世界の5番街なら・・・米国株が下がりにくいわけですね・・・

2007年6月8日金曜日

Scylla and Charibdis

スキュラもカリブディスもギリシャ神話に登場しますが、イタリア半島とシチリア島の間にあるメッシナ海峡にあってそこを通る船を巨大な渦巻きを起こして飲み込んだ恐ろしい怪物がカリブディス、その対岸の岩間に潜み、カリブディスに船を沈められて逃れようとする船乗りたちを溺死させたのがスキュラという怪物でした。

この時の船乗りの状況を思うと夜もうなされてしまいそうですが、そんな背景から進退窮まった大ピンチという状況を、Between Scylla and Charibdis  或いは発音しにくい固有名詞ではなく状況説明で Between devil and deep blue sea  等と 表現することがあります。Stingの”Wrapped around your fingers" というヒット曲にはこれらが両方使われていました。

ところで、ここ数年間金融市場を支配してきた複数の”魔物”達にも多くの連携がありました。

過剰流動性、信用拡大、レバレッジ、資産バブル、Low Volatility、High Correlation・・・・ これらが、渦を巻いたり待ち伏せをしたりして多くの船を沈没させてきたのです。

長期金利を上昇させて過剰流動性と信用拡大という魔物を退治するという戦略を立てたのが金融界のカリスマ、Allan Grenspan前FRB議長でした。
 しかしこの戦略に基づき政策金利(FFレート)を何度も引き上げたのに長期金利はさっぱり上昇しない状況が続き、Greenspan前FRB議長はこの状況を”Conundrum”(不可思議な難問)と表現して嘆きました。

奇しくも同時期にオプション市場では長期ゾーンのImplied Volatilityから異様な低迷が始まりました。本来は先々のことになるほど予測は困難なわけですからYield CurveにしてもVolatility Curveにしても長期ゾーンになるほど最低でもリスクプレミアム分だけ数字が大きくなる順イールド構造が基本です。
 しかし最近ではGreenspan前議長ですら一時的な異常現象だと思っていた”Conundum”の日常化が起こって久しいのです。

市場参加者の間ではこの”異常の日常化”を受け入れないと上手く泳げないという認識が広まってきたのですが、過去2週間、特に今週後半の動きはいよいよ”Conundrum"が解消に向かい始めた可能性の匂いを嗅ぐような現象が見られ始めたと感じています。

世界株価の調整反落に端を発し、長期金利の急上昇、オプション市場のImplied Volatilityの上昇、エマージング等低流動性通貨下落、高流動性通貨上昇(特に米ドルが急騰)、クロス円で円高、などと言う潮流が蠢き始めており、異種アセット間、異種市場間のCorrelation(相関)にも下落傾向が出始めました。

Wall Streetを中心に世界株価への警戒感は年初からずいぶん聞かれましたが世界的な投資ブームの拡大が相場をひたすら持ち上げてきました。
 そのような状況下足元の動きについては、5月までに年初来50%を超える上昇を示現して年末までに100%(=2倍)に到達かという中国株に対するGreenspan前議長の大幅調整不可避発言、中国の株式取引に係る印紙税の増税、影響力のある米系証券が相次いで(モルスタ、Citi)株価下落の警告レポートを出すなどの動きから上述の怪物たちの足並みがやや乱れ始めたというところでしょうか。

この程度の下落では株価は依然調整の域を出ない中で、顕著なのは長期金利の上昇です。特に米国の財務省証券10年債利回りが5%を突破した事のインパクトは大きく、世界中の運用機関が巨大債権ポートフォリオが被ったダメージコントロールの為に利益の出るポジションで益出しを始めた為に株式市場や為替市場で逆流の渦が出始めているようです。

この動乱がどの程度のものになるかは来週以降の相場を見ていく必要がありますが、結果的にはFRB議長退任後にも長期金利低迷という”Conundrum”の解決にGreenspan氏が執念を見せた格好となっておりこの部分も実に面白いと思っています。

実は金融市場からの絶大な信頼と影響力を維持した歴史に残るカリスマ議長となったGreenspan氏は、現役時代は魔術師、呪術師、マエストロ等と呼ばれていました。この人も怪しげな怪物なのです。

Scylla、Charibdis、Greenspan・・・ 金融市場という深く、巨大な海の戦いは新たな展開に入ったのでしょうか?

過剰流動性、低Volatility、高相関という深海の神秘にはメスが入るでしょうか?

巨大イカでもいたら怖いですね・・・

2007年6月6日水曜日

Inconvenient Truth and Convenient Lie.

今でもよく覚えていますが、2000年の米国大統領選は大接戦でした。

共和党候補のGeorge W.Bush に対して民主党はそれまで2期8年間続いたClinton政権で副大統領を務めてきたAl Goreを立てた非常に激しい選挙戦となりました。
 実はClintonの地元アーカンソー州、Goreの地元テネシー州を共和党のBushが押さえたことなどが大勢を決した要因だとの指摘もありますが、とにかく当時は最後の最後まで大接戦となったフロリダ州の票の集計方法が問題となりました。

州の中身は群に分かれますが、Bushが取った郡もGoreが取った郡も非常に僅差のところが多く、全ての無効票を再勘定したら最後はどうだったのかは今でも諸説あります。
 
最後は最高裁の判断を仰ぐ大騒ぎの末にGoreが最高裁の判断を受け入れてBush政権が誕生したのですが、Bush政権がイラク戦争などで迷走した事などを考えると当時の民主党側の致命的な戦略ミスのツケはとても大きかったと言わざるを得ないかもしれません。

”全ての票をカウントせよ” 民主主義の根幹でもあるこの主張には誰も反対できなかったはずです。フロリダ全州での無効票の見直しを要求していれば実際に認められた可能性があると私は今でも思うのですが、民主党Gore陣営はここで致命的なミスを犯しました。
 どんなに無効票があっても、どんなに僅差でも、自分が取った郡はそのままにして、僅差で落とした郡のみの無効票の徹底的な再集計を求めて提訴したのです。

結果的にこれでは説得力が無いし、選挙終了後に異常な長期間大統領が決まらないという事態が好ましくないという理由で最高裁がGore陣営に大人の対応を求めたのですが、これはあまりにも手前味噌な作戦ミスだったと思います。

”ウソも方便”と言う意味の”White Lie”とも言えない単なる手前味噌の我侭だったわけですが、この”Convenient Lie”のせいで人生最大の勝負に敗北したAl Gore氏が逆転本塁打を狙って目をつけたのが地球温暖化であり、それを"Inconvenient Truth"(不都合な真実)という題名で世に問う彼のめぐり合わせはにはとても皮肉なものを感じます。

世の中の潮流はGore氏に追い風となっており、最近の地球温暖化というテーマの盛り上がりには物凄いものがあります。

私は、我々の世代が子供や孫の世代にバトンを引き継いでいく今後の50年、100年という期間に世の中を大きく動かす・・・・失敗すれば人類絶滅をも起こしうる・・・そんないくつかの要素についてよく考えます。

①地球温暖化問題 
②国際不均衡問題
③宗教間抗争
④エネルギー革命

今後それぞれについて、考察していく機会を持ちたいと思いますが、特に目先については①と②が重要でしょう。

私はこれを ”不都合な真実” と ”不突合な真実” と名付けていますが、特に後者の産物であるアジア諸国などの巨額な外貨準備の運用手法やリスク管理の多様化は従来の金融市場のパラダイムを抜本から揺さぶり始めているようです。

今後これも掘り下げましょう。

2007年6月5日火曜日

The chicken or the egg ?

ジョージ・ソロスという我々の世界ではカリスマそのものの人物がいます。Quantum Fundを作った人でヘッジファンドの勃興期においてその存在を世に知らしめた人物といってよく、私は駆け出しのころに彼が引き金を引いた欧州通貨危機のお陰で訳もわからずに多額の収益を計上し、自他共に勘違いした結果この世界に長居することになったと言う因縁があります。

東ヨーロッパ出身の彼は決して流暢な英語を話すわけではないので、私は米国滞在中にTVのインタビューや講演会などで彼が話すのを聞きながら最初は少しイメージダウンが否めない感じでした。

ところが・・・どっこい大作。

この人は本当に頭が切れる人です。私もよく頭が切れますが全く別の意味です。とにかく彼が書く文章の格調は高く、内容も時として吸い込まれるような時があります。

最近の金融市場に鑑み、我々が将来のリスクとして頭に入れておくべき話だと思えるものの一つに彼のBoom&Bustの説明があります。

彼は経済を考える時に、実体経済と金融経済を区別して考察することは有益であるとしており、所謂経済活動は前者で起こり、信用の拡大・縮小は後者の話であるとしています。
 融資という経済活動は実体経済で起こり、それによる信用創造は金融経済の話ですが、まさにここで二つの経済がリンクします。

活発な経済活動(→実体経済)は、資産価格の上昇と収入増を通して新たな信用創造をもたらします。
創造された信用によって可能になった融資によってさらに経済活動が活発化するとこれが収入増と資産価格の上昇を招いて一層の信用創造につながります。

景気の回復から好景気へという段階ではまさに好循環なのですが、やがて新規融資と資産価格(多くの場合担保価格と置き換えられます)に明確な正の相関関係か確立され、やがて前者の伸びが後者の拡大を支えきれなくなると、片方の失速・縮小がもう片方の失速・縮小を招き、ともに内向きの渦巻きを作って螺旋状に崩壊に向けて加速していく事で一つのBoom&Bustが完結すると言うモデルです。

これは、所謂バブルという物が時間をかけて創出される一方で、最終局面では急速且つ悲惨な終わり方をするというBoom&Bustの非対称な性格をもよく説明できていると思います。

ここで言う”新規貸し出し”と”資産価格”のように本来別々のものが相互依存度を高めながら大きくなって最後は一緒に壊れ去る過程の背景には、異なる両者間の相関の上昇と言う要素があります。

今の金融市場では、Volatilityの低下ばかりにスポットライトが当たりますが、一方で各アセット間の相関係数がかつてないほどに上昇しているという事実があります。
 現状は”低Volatility環境”という事ではなくて、”低Volatility+高相関”な環境なのだと言うことを意識していく必要があると思います。

こうなると・・・金融市場は”The Chicken or the Egg"です。全てが原因にも結果にもなりえるのです。
「金が売られたので株が売られた」、「流動性の吸収が資産価格の下落を招いた」、
「資産価格の下落によって流動性が絞られた」、などなど何でもありです。

”The Chicken or the Egg" → 何でもあり と言うならばどうせなら
”The Chicken and the Egg"  としてしまえば・・・ 親子丼 になりますね。

こちらのほうがよほど安全なようです。

2007年6月4日月曜日

やはりアジアの時代か?

週明けから中国株が大きく下落しています。

先週中国政府が突然株式取引に係る印紙税を3倍に引き上げたことの影響が続いていると言う解説が一般的ですが、3倍と言っても0.1%から0.3%に引き上げただけですし、0.5%から過去4回引き下げて0.1%になっていたものを0.3%に戻しただけですから既に今年50%以上のリターンを確保している中国株がこの程度のことで大きく揺らぐとも思えません。

実は、今日6月4日は有名な天安門事件のAnniversaryなのですが、米国市場で9月11日がなんとなく不安を誘う日付であるのと同じように印紙税の引き上げ直後に天安門事件のAnniversaryが来たことで調整幅が拡大していると言う要素もあるのではないでしょうか。ロジカルではないと思いますが、実際には金融市場には多分に感情的且つ不可解な要素もあるのです。

海外市場は結局これの影響を受けて株式市場が軟調で、いわゆるRisk Aversionの高まりから円売りポジションにも縮小バイアスがかかっているようで円が上昇しています。

中国、インドが取り上げられることが多いのですが、タイ、インドネシア、マレーシア、香港、さらにはカザフスタンなどアジア経済の勢いは完全に世界をリードしています。欧米のファンド勢もとにかくアジアへの投資に熱心ですし、一方で勢いのあるアジアからは米ドル偏重の外貨準備を分散するべく欧州やカナダ、オーストラリアなどの資源国にお金が流れるので現状は世界景気が好調で資産市場も総じて値上がりと言うちょっとしたWin-Win Situationが継続しています。

今日のこれまでの動きを見ている限り、経済だけではなく市場影響力と言う切り口でもアジアのStatusは本当に上昇したものだと痛感します。
 数年前には、世界中の株式市場が米株市場に”右ならえ”状態だったのですが、今は中国株の動向が欧米の株式市場に大きく影響を及ぼしていると言うわけです。

ところで、英語の有名な慣用表現に、不器用な様を表す表現で、
"a bull in a china shop"というのがあります。陶器のお店に雄牛が入れば大変なことになり扱いに困るのはイメージし易いので非常にわかりやすい表現なのですが、先週の新聞の見出しに思わず唸らされるものがありました。

A bull market in a china shop.

う~ん・・・寝てみたい。じゃなくってお見事!

グローバルな強気相場(ブルマーケット)が中国に牽引されており、どこと無く危なっかしい様子が見事に織り込まれていると思いませんか?

もう少し前の記事にはこういうのがありました。中国と両輪のようにアジアの勃興を担うインドの金融市場で遂に先物市場が立ち上がったという記事なのですが、その記事の見出しもお見事でした。

Thier "future" is now.

遂に、金融先物(Future)市場が整備されて取引が始まったという事が、Futureという単語のもう一つの意味である将来と”now”を見事に対比させた切れる英語だったと思います。

そもそも経済に勢いが無ければ、このような見出しも躍らないわけですが、やはり中国もインドも勢いがあると言うことなのでしょう。

アジアの時代は暫く継続するようですね。

2007年6月3日日曜日

お化けと幽霊 : 似て非なるもの

週末の朝のラジオ番組を何気なく聞き流していたら子供たちから電話で質問を受けてゲストチームがこれに回答すると言う番組をやっていました。
 以前”子供電話相談室"と言う番組があったと思いますが、あれと同じ番組だったのか別の番組だったのかは今一つわかりません。

ちょっと面白かったのは、子供の視点の鋭さと、番組自体が真剣勝負の生放送だったようである子供から 「お化けと幽霊の違いを教えてください」 という質問が出た時に、回答者達に動揺が走り、誰が回答するかをあからさまに譲り合うという瞬間があった事です。ラジオを通してですがはっきりと分かりました。

恐らく厳密に言えば、”お化け”とは狐や狸のようなものが何かに化けたもので、”幽霊”と言うのは既に生存していないものが出てきたものと言う事になるのでしょうが、二つの単語の実際の使われ方はかなり境界線が曖昧だと思うので子供が質問したくなるのも良く分かります。胆試しなどで夜の墓場を通るときにも「お化けが出たらどうしよう」等と言いますし、誰かを恨んで絶命する時に「化けて出てやる」等と言うセリフもよくあると思います。

以上が導入部 (長い・・・)

先日米国から来日した友人を囲む会があり、この友人以外にも久しぶりに会う多くの方々と色々な話をする機会がありました。
 実はこの友人は、一度些細な行き違いから刑事告発されて身柄を拘束され、裁判途中で告発元との和解成立によりケースそのものが消滅したと言う体験をしています。当時は皆が非常に心配したものですがそのお陰で(?)当人も我々も、jail  と Prison の違いを学ぶことが出来ました。それが役に立つかどうかは知りませんが・・・・

書店で幾つかの英和辞典を見る限り、この違いを明確に区別出来ている物は無いようですが、この友人によると実際にはこういう区別となるそうです。

Jail ・・・ 禁固刑で行くところ
Prison ・・・ 懲役刑で行くとところ

そして、逮捕されてこれから裁判というような容疑者が一時的に身柄を拘束されるのが前者のJailであり、この友人も5日ほどそこで過ごしたのですが、容疑者となった時点でアウトの日本と違いそこは人権社会の米国ですから扱いは極めて丁重と言ってよく、食事の時間が妙に早い(朝食が午前6時くらいで夕食が午後4時くらい)と言う問題はありますが、Pantryでコ-ヒ-などは飲み放題だったそうです。また、人種、宗教、過去の自殺未遂の有無等を質問されて、適切なグル-プや部屋などが決まり、懲役刑の人が行くPrisonと違って基本的には自由時間、自由行動(と言っても外には出られませんが)だったそうです。

彼が自由の身となって安堵していますが、随分と失った物もあります。前しか見ない男と言う表現がピッタリなこの友人の新たな挑戦に協力を惜しむつもりはありません。今後そんな話を書くこともあると思います。

話を戻すと、同義語くらいにしか認識していなかったJailとPrisonの違いに関して、お化けと幽霊の違いを質問してきた冒頭の子供のような疑問を持てなかった自分がちょっと寂しいです。

やっぱり子供の感性は素晴らしいですね。

2007年6月2日土曜日

結局”そのまんま”?

何かと注目を浴び続ける東国原宮崎県知事が、知事給与の明細をメディアに公開していました。記憶が間違っていなければ、最後の手取額が70数万円という数字でした。

「ガックリ来た」、「悲しくなった」、「土日も返上で働いている自分の時給は一体いくらなのか」 ・・・
自虐的な笑みを浮かべて話をする知事の言葉をメディアもそのまま報じていましたが、たけし軍団時代から彼が嫌いではない私はちょっとドキっとしてしまいました。

公務員の給与計算は普通の勤め人とさほど変わらないと考えてよいと思いますが、そうすると諸項目が差し引かれたあとに最後に銀行口座に振り込まれる金額(手取り額)で70数万円という所得であれば支給総額では100万円を超えている筈なので、知事の給与は年二回の賞与も合わせれば年収ベースで15百万円を超えることになると思います。また、この数字は県の下部組織で裏金の存在が発覚したことを受けて知事や幹部の給与が20%程度減額されている月の数字ですから実質年収で2千万円を超える処遇と言うことかもしれません。

そんな処遇に対して給与明細を公表しながら上記のようなコメントをつける知事の庶民感覚はどうなのでしょうか?
 一般論として15百万円と言うのは日本の一部上場企業の経営階層になって初めて手が届く水準であり、今週公表されたデータで日本の一世帯あたりの平均年収が5百万円台後半であったことを考えると、対立する県議会あたりから庶民離れした金銭感覚であると指摘でもされたら謝るしかないのではないでしょうか?

芸能界という億単位の収入も珍しくない世界の感覚を引きずって知事になっているとすれば、これまで大した功績も残せずに去っていった多くのタレント政治家達と何も変わらないのかもしれません。

結局彼は、芸能界時代と何も変わらない、”そのまんま”東 なのでしょうか?

個人的には期待しています。