2008年12月28日日曜日

What we should appreciate most..........


日本では何故かクリスマスイブが盛り上がるようなのですが、海外では飽くまでもイブはイブでしかなく、クリスマス本番の25日こそが最重要イベントとなります。正月は元旦しか休まない欧米の多くの地域ではこのクリスマスこそが家族が集うとても重要なイベントと言う事になります。

私は思うのですが、今年は家族や親戚が集まった時に景気後退の影響を強く受けてしまっている人が少なからず含まれていて周囲がしっかりサポートしていこうと当人たちをEncourageすると言うようなシーンがかなり多かったのではないでしょうか。

どうしても米国が目立つのですが、不景気の波は世界中を席巻しており、日本でも多くの企業が競うように特に非正規雇用者の方々をLay-offしていると言うニュースが取り上げられています。企業サイドも生き残りに必死な訳ですが、最早そこには"家族的経営"、"終身雇用"、"年功序列"など日本独特の人事・雇用慣行と言うものは影も形も消えうせているかのような印象すらあります。まだこれから3月までに契約解除が見込まれる非正規雇用者が8万数千人という報道を見ると尋常ではない事が分ります。

日本を代表する世界に誇る優良大企業トヨタ自動車ですら2007年度の史上最高益から2008年度が赤字決算という異常な急降下ですので雇用側も異常事態に必死で対処していると言う事なのでしょうが・・・・・・

このクリスマスのコンセプトは、LoveGiveな訳ですが、これを世界中が再確認してもう一度足元を見直すきっかけとならないかと思ってしまいます。

サンタクロ-スの起源には、諸説ありますが、どれか一つが真実という事ではなくそれらの伝説の集合体がサンタクロ-スを生んだという話なのかもしれませんが、そんな中でも有力な説の一つが、聖ニコラスという司教の逸話です。

彼が布教していたある村で、貧しさのあまり娘を売りに出さなくてはならなくなった家庭を人知れず助ける為に、その家の煙突から金貨を投げ入れたところ、そこに吊るしてあった(=干してあった?)娘の靴下に金貨が入り、そのお陰で娘は身売りをしないですんだというお話があります。

この「聖ニコラス」というのがどういう訳かオランダ語読みで「ジンタクロ-ズ」となるらしく、マンハッタンを含む米国のオランダ人入植地でサンタクロ-ス伝説が広まって世界中に拡散していったというシナリオなのですが、英国などでももともとは、サンタクロ-スではなく、ファ-ザ-・クリスマスという呼び方が一般的だったようですが、こんなところにも米国流が世界標準となっていったようです。

この聖ニコラスを崇めるギリシャ正教の教会である、”聖ニコラス堂”というこじんまりとした教会がかつてはワ-ルドトレ-ドセンタ-の御向い(バッテリ-パ-ク側)にありました。駐車場の管理人小屋くらいにしか見えない教会だったのですが由緒ある聖ニコラスにまつわる貴重な品々も置かれていたようです。この建物は2001年の9/11テロで破壊されてしまいましたが、このLove&Giveというコンセプトは今こそ力強く復活して欲しいと強く思います。

煙突は家族を暖め、サンタを迎え入れる愛の導管から、経済を拡大させる一方で二酸化炭素やスモッグをばら撒く機関へと主な役割を変換してしまった産業優先主義に調整と見直しが求められる中で我々一人一人が考えるべき事も多いように思います。

個人的な話ですが、図らずも12月に入り私の周辺で立て続けに生命のはかなさを思い知らされる事象が続き、何事も当たり前ではなく在り続けてくれる事を感謝するべきものなのだと言う思いが強まりました。

これを読んで頂いている皆様とご家族に神の愛と御加護が在ります事を心からお祈りいたします。
Be it ever so humble, there is no place like home and nobody like you.

2008年12月21日日曜日

When Deserts Have Snow of Vanity...

先週後半は、実に30年振りにあの常夏の街ラスベガスに降雪があったという異常気象でしたが、結局東海岸でも大雪となりNY辺りも大変な事になっていると言う連絡がありました。雪嵐が来るということで学校などは朝から休校となったようですが出勤しなければならなかった人々は大変だったのではないでしょうか。

そう言えば今年はイラクのバグダットにも降雪があった筈ですが、あちらは確か100年振りだったようです。なんという年なのでしょうか2008年というのは・・・

2008年は年初直後から3月までが大荒れ、4月~6月の調整過程を経て7月以降が再び大相場となりました。ファンド業界の壊滅的凋落、株式市場、商品市場の崩壊的下落、新興国経済の後退、中国、アジアの失速、Wall街のビジネスモデル(投資銀行というやつですね)の崩壊と消滅(全て破綻か普通銀行へ転身してしまいました)、そして大部分の市場参加者の予想に反する米ドル急上昇などの波乱に次ぐ波乱という年だった訳ですが、天候の方も数十年振りというレベルの事象が頻発していると言うことでしょうか。

やはり全ては包括的な天のシナリオの時間軸の中で起きている事なのでしょうか? 個人的にはそのような感慨が強まるばかりです。そしてその枠組みの中で今年に入ってから自分自身や自分の身の回りで起きた事を見直してみると時空を超えたメッセージが読み取れる・・・・? なんて事もあるのかも知れませんね。


さて、先週の金融市場ですが、週初からいきなりFOMCがやってくれました。1%まで引き下げてきたFF金利(Fed Fund Rate)を大方50bp、一部が75bpという予想利下げ幅を飛び越えて誘導目標金利を0%0.25%に設定すると言う事実上のゼロ金利政策への転換を宣言し、住宅市場のサポートとして大量のエージェンシー債やMBSを購入する旨も明記してバランスシート拡大という米国型の量的緩和政策を明確にしました。


ややこしいので補足すると、これはかつて日本が行った「量」を目標とする量的緩和とは異なるアプローチであり、FRBのバランスシートの拡大は市場機能の目詰まり現象により機能停止状態となったアセットに直接息吹を吹き込んで機能回復を働きかけると言う手法です。

これで追い込まれたのが週末に政策決定会合を控えていた日銀サイドでした。世界中が手本のように考えているかつての日本のゼロ金利政策と量的緩和と言うアプローチについては、政治サイドやMOFサイドが国際舞台で日本の経験をアピールするのとは対照的に日銀サイドではどうも悪夢の記憶として位置付けられているかのように見えます。


FOMCの大胆な踏み込みに加えて、大幅に悪化した日銀短観という材料を抱えながらも日銀内部にはゼロ金利や量的緩和はおろか今回既に0.3%しかない政策金利を更に引き下げると言うことにすら大いなる抵抗があったようです。


かつてのゼロ金利や量的緩和は飽くまでも異常な状態であって、その後の正常化プロセスには多大な時間とコストが掛かったというトラウマからイデオロギー的に拒否反応があるというところでしょうか。


JGB市場は完全に利下げを織込んでいたのですが、二日間の日程の初日を消化した時点でどうも雲行きが怪しいという話が出た為に二日目に入り市場の織込みは60%くらいに後退するという動きとなりましたが、結果として政治サイドと日銀サイドの妥協点だったかのような0.2%の利下げ(0.1%だけ残しました)と予想通りのCP買取および輪番オペの拡大と言う結果となりました。


記者会見では「ゼロ金利とは違うし、量的緩和でもない」、「長期債の購入はするが長期金利を低下させる意図は無い」等と相変わらずイデオロギー論を展開していたのですが、円債市場からも言動不一致が指摘されるなど評価はお世辞にも高いものではなかったようです。


大きな注目を集めた上で結婚式と披露宴までやっておいて、記者会見で実はこの人が好きな訳ではないとでも言ってしまったかのような印象を私も抱きました。


さて・・・・・

世の中で起きた事は、なんと言っても①米国債バブル、②ユーロバブルの二つでしょう。



①の米国債バブルですが、かつてGreenspan議長が短期金利(FF金利)をいくら引き上げても長期債が買われて長期金利が低下してしまうジレンマをConundrum(難問)という言葉で表現した事に対するウルトラC的な対応としてBernenke議長はバランスシート拡大の中で長期債の購入等にも道を開いて長短金利差のイールドカーブその物を金融政策の操作対象としてしまいました。これを受けて一部でマイナス金利なども話題となった米国債市場のバブル的な上昇は継続中です。


 


 この角度はバブル・・・ですね。

②のユーロの上昇ですが、正式には乱高下と言うべきでしょうか・・・


週初のFOMCの決定後に加速したユーロ上昇は凄まじい勢いでした。



今年のユーロの動きをおさらいすると最高値が1.6038715日)、最安値が1.23291028日)で、そこから徐々に切り返してきた相場が今週加速したわけです。


1210日⇒1.30回復。1215日⇒1.35回復。1216日⇒1.40回復。1218日⇒1.4720まで上昇。1219日⇒1.3819まで下落。


上昇も凄いのですが、最後は一日で900ポイント以上の反落をしています。


米債といい、ユーロといい・・・どうですかこれ?


砂漠に雪が降る時にはこういう事が起こるのでしょうか。英語では滅多に起こらない事の例えで、When hell freezes over(灼熱の地獄が凍る時に・・)という表現を使う事がありますが、今後は、When deserts have snow等と言ってみようかという気になる一週間でした。

この雪はちょっと虚しいのですが・・・

2008年12月15日月曜日

Take A Closer Look 3

今日はもうすぐ寝ますが、最後に馬鹿な話を一つ。

Take a closer look にかけた話です。

私はメタボリック症候群の予備軍であり、BMI値とかいう体重(kg)÷身長(メートル単位)の二乗を計算してもほぼボーダーラインである25近辺を彷徨う数字が出てきます。

そこで普段は出来るだけ早く退社をして一つ二つ手前の駅で電車を降りて家まで歩くようにしているのですが、週末も子供を帰国子女向けの英語教室に送っていった後に隣町の図書館まで歩いてそこで時間をつぶす事が多いです。

実は、その道すがら・・・・のことなのですが・・・

初めてこれが目に入ったときは、思わず目を惹かれました。オオ~!と言う感じです。


男と言うのはま~その程度の生き物ですね。







これで足早に近寄って正体を確認すると・・・・・・・







な~んだ・・・

男と言うのは、ま~その程度の生き物ですね。

Take A Closer Lookシリーズは一旦終了です。

2008年12月14日日曜日

Take A Closer Look 2

何事も本当の当事者やインサイダーで無い限り、物事の全体像を把握することは不可能であり、我々は与えられた、或いは必死に集めた部分像を元に全体像を類推して動くと言うことを繰り返しています。

ただ、時には中途半端にパズルのピースを持っているが為にかえって全体像を誤ってしまうとか、真実から遠ざかってしまうと言うこともあります。

前回書いた雇用統計と株式市場の関係等はその好例ですが、今回はもう少し裾野を広げて別の角度から少し意外な事実をお話します。

先ずは、如何に今年の金融市場のVolatilityが高いかと言う点です。

歴史の浅い通貨オプションの世界では、これまでは97年、98年のアジア通貨危機、ロシア危機、そしてLTCM崩壊時のImplied Volatilityが最高値だったのですが、今年は遂に多くの通貨ペアで当時の水準を上回る水準での取引が確認されており、オプションの建値としてのVolatilityが最高値を更新した年と言うことになりました。

一方で歴史の古い株式市場ですが、こちらもご多分に漏れず今年は歴史的なVolatilityを記録しているのですが、特に一日の値幅が5%を越える取引日が年間でどの位あったかというデータを見ると如何に凄いかがわかります。

あるデータベースによると、そもそも一日のレンジが5%というのは為替に直せばドル円で約5円ですので滅多にあることではなく、米株市場においても過去データでは10年単位で数回という頻度でしか記録されない動きだと言うことがわかります。

一日の値幅が5%以上を記録した取引日の数は、以下のようになっています。

1930年代・・・95回 
1940年代・・・3回
1950、60、70年代・・・各1回。(この30年で3回)
1980年代・・・6回
1990年代・・・2回
2000年代(2007年まで)・・・4回

今年は既に10回を大幅に越えており、しかも9月以降に集中しています。30年代の95回と言うのは凄い回数ですが、大恐慌の余韻の残る時代ですし当時は分母がかなり小さいので変動幅の%表示が大きくなりがちだったと言う背景もあるでしょう。1950年からの50年間で11回しか観測されていないのに今年は過去数ヶ月でそれ以上の回数を記録していると言うのは凄いことだと思います。

更に・・・・こちらの方がより意外感があるかもしれませんが、過去の%ベースでの一日の上昇幅ベスト10というのを見てみるとこのようになります。

1位・・・1933年3月15日⇒15.34%
2位・・・1931年10月6日⇒14.87%
3位・・・1929年10月30日⇒12.34%
4位・・・1931年6月22日⇒11.90%
5位・・・1932年9月21日⇒11.36%
6位・・・2008年10月13日⇒11.08%
7位・・・2008年10月28日⇒10.88%
8位・・・1987年10月21日⇒10.15%
9位・・・1932年8月3日⇒9.52%
10位・・・1939年9月5日⇒9.52%

太字で示したとおり、今年の10月の乱高下相場の上昇幅が2つベスト10にめでたく(?)ランクインしています。

ベアマーケットラリーでしかなかった10月13日と28日の上昇が良くぞ上昇幅ベスト10に入ったものだと思っていたのですが、実はこれ・・・・今年の2つを含む上昇幅ベスト10の全てがベアマーケットラリーであることがわかりました。上昇幅のベスト10はいずれもベアマーケットの中の反発局面での上昇だったわけです。

我々は為替で言えばドル円のように、アセット価格と言うものは上昇時は緩やかで、崩れる時は急激であると言う印象を持っていますが、実は激しい上昇と言うのも弱気相場の中でこそ起こる傾向があると言うことは頭に入れておきたいものです。

そうすると最近反発傾向を強めていてトレンド反転という可能性を考え始めている人も多い・・・あれ・・・とか・・これも・・・ う~ん・・・・!? という事になりますね。

If History Repeats Itself, Take A Closer Look.

最近は日本でも大企業による非正規雇用者のLayoffがメディアを賑わしていますが、実際にトヨタにしろソニーにしろかなりエグい事をやっていると感じてしまいます。

多くの企業では既に終身雇用や年功序列というものは有名無実化していると思いますが、一方で正規雇用(企業にもよりますが一般に基幹職、総合職、特定職、一般職などと呼ばれるようです)と非正規雇用の間に立ちはだかる壁は、かつての年功序列が持っていた年齢や入社年度による壁、また男女間の間の性別の壁等よりもより深刻な、抜本的な部分での身分の差とでも言うような高さと厚みを持っているように感じます。

実は私自身が現在所属している組織においても職種間にある見えないけれどとても分厚い壁の存在が組織の活力を削ぎ落としているという強い問題意識を持っているのですが、世間一般における非正規雇用者の立場の弱さと5年、10年と彼らを戦力としてきたはずの企業側のあまりにも非情な態度は、世界景気が未曾有の不景気に突入し始めているという事実を租借しても尚強い疑問を感じさせるものです。

政府が景気対策、特に雇用対策を最優先するというのは当然であり、いつものような口先だけではない実効性のある施策と政策の実施を強く望むものです。

この雇用問題は、世界的に共通する課題ですので各国がどれだけ真剣にこれに取り組み、どこが先に実効性のある成果を出せるかというテーマに非常に注目しています。

さて、今月初に発表された11月の雇用統計の話に戻りますが、おさらいすると11月の非農業部門就業者数の減少が533千人、年初来累計が1.8百万人を突破して12月を含めた年間ベースでの2百万人突破が確実となり、失業率も0.2%上昇して6.7%でした。これは実に1974年以来34年振りの不景気振りであり、統計史上でも1939年以降で4番目の悪さです。

では過去の同様の事例では金融市場はどのように反応したのかという事になると、実は少し意外な結果が出ます。前回が34年前と言うことで、それより前に遡ってもあまりにも時代背景が違うと思うので、その34年前となる1974年12月、非農業部門就業者数(NFP)が602千人の減少となった後の米国株式市場を追いかけてみると・・・・・・・・・・・・

なんと・・・・・・・・翌年(1975年)の6月までの約半年の間に株式市場は実に42%もの急騰を記録しています。年換算ベースでは84%という物凄い反発ですね。

特に米国の場合は雇用統計の衝撃的な悪化は金融市場においては負のクライマックスとなることがあると言うことです。株のチャートに関して言えば、そこが陰の極となると言うことです。

If history repeats itself, you must act now.

そんなアジテーションが実際に随分と出回っているのですが、確かに最近の株式市場は数々の悪材料にあまりにも鈍感というか、耐久力をつけているように感じられます。

世の中にはよ~く確認しないと、感覚と事実の間に驚くような乖離が存在することがありますが、金融市場ほどそういう経験をさせられる空間も他に無い様な気がします。

Let's take a closer look. If your eyes are not too aged yet. (あなたが既に老眼なら別ですが)

Between Confusion and Pain

金融市場は先週も盛り沢山でした。

2008年の金融市場は以下のように総括される事になるのではないでしょうか。

1. 1月~3月までの第一四半期が大荒れ。


2. 4月~6月の第二四半期は急速な沈静化を見せて大相場後遺症に陥った多くの市場参加者を翻弄。             


3. 7月~9月の第三四半期から再びVolatilityが上昇。


4. 第四四半期は大きなBOX圏で乱高下。


今我々は、この大きなBOX圏で乱高下という過程にいると思っているのですが、テクニカルな表現を使えば第4波の調整期間という事になり、今後流動性の低下などの年末要因との兼ね合い次第では予想外の値幅が出易いというリスクの上昇を見込んでおくべきでしょう。

実際の所、不透明感は増すばかりです。先週起きた事の幾つかを見ても、前例のない事や予想外且つ今後の見通しも立ち難いと言う事ばかりです。

 ・株式市場は乱高下を消化しつつ結果として底固い動きをしています。今の株式市場は私なりに表現するとこうなります。

Fundamentally Bearish, Technically Bullish and Seasonally Dangerous.


 ・米国債の短期ゾーンがゼロ金利となり、一部でマイナス金利を記録しました。 


先ずは4週間物の入札が初めてゼロ金利となり、次に3ヶ月物が-0.01%で取引されたのですが、投資家が社債はおろか銀行預金のリスクにも尻込みし、金融機関同士が再び疑心暗鬼となってお互いに資金を融通せずに政府債を購入すると言う動きをしているためです。米国債と投資適格社債の金利差は危険領域まで再拡大しています。


 

・米国自動車業界のBIG3救済法案が予想外の否決という事態となり、可決を織り込んでいた金融市場は大混乱となり、株式市場が下落、円高が進行すると共に米ドルは一旦円以外の通貨には上昇した後に再度後退と言う激しい値動きの中でドル円は8810銭と今年の最安値を更新し、95年以来の80円台を示現しました。


ドルは少なくとも短期的に下値を試す段階に入ったようです。円とドルが他の通貨やコモディティに対して上昇する動きは一旦Decouplingし始めており、ドルインデックスで見てもこれまでの大幅上昇に対するテクニカルな調整だけでも年内にあと数百ポイントの下げが必然とすら感じます。当面はドルインデックスで80の攻防を見込むべきでしょうか。


   


今週はFOMCがあります。私は50bpの利下げを見込んでいますが市場の一部には75bpや一気に100bp下げてゼロ金利とするという予想もありますが、注目は利下げ幅以上にFEDが量的緩和政策に舵を切るというメッセージを明確にするかどうか、その場合はどのような内容になるのかというIF&HOWにあると思います。

それにしても世の中の変化は急速です。

2008年12月7日日曜日

Cut&Blood vs Hope&Resilience

先週の山場は木曜日の英国、欧州の金融政策決定会議と金曜日の米国雇用統計でした。その他の国々の結果もあわせて整理してみると以下のようになります。

Australia      ⇒dropped 100 basis points.
New Zealand   ⇒dropped 150 basis points.
Sweden dropped ⇒dropped 150 basis points.
U.K.         ⇒dropped 100 basis points.
Eurozone      ⇒dropped 75 basis points.

どの利下幅も事前予想以上の規模であり、昨年度前半までは圧倒的な影響力を持ち続けてきた金利差という物が急速にその影響度どころか存在そのものを消し去ろうと言う動きになっています。

そうは言っても依然として金利差は残っていると思われる方もいるかもしれませんが、金融市場の動きは現存の金利差ではなく、金融政策のベクトルに敏感です。つまりある二つの通貨間の金利差が縮小する方向のベクトルが明確であれば最早金利差を理由に金利の高いほうの通貨を買う動きは継続せず、むしろそれまで積み上がった持高の解消フローを背景に低金利通貨の方に上昇圧力が掛かります。

また金利差の存在そのものが無くなろうとしているという意味は世界中がゼロ金利に向けた動きを明確にしており、例えゼロ金利までは行かなくとも実質的な量的緩和が世界共通の事象となる動きの中で金利差という物が事実上意味を持たなくなる(あるいは実際に無くなる)という事です。

一方、金曜日のメインイベントである米国11月の雇用統計ですが、これは驚くべき悪化振りでした。

非農業部門雇用者数は前月比で▲533千人。実に34年振りの大幅な落ち込みでした。第一次石油危機の1974年12月の▲602千人以来という事になります。Bloombergに予想を掲載した73名のエコノミストの予想の上限(下限と言うべきでしょうか)をExceedする悪化振りでした。
 改定値も目を疑う程の下方修正となり、9月が▲284千人⇒▲403千人、10月も▲240千人⇒320千人となり、雇用者数の減少は年初来11ヶ月連続で合計1,910千人と2008年度は2百万人以上が職を失うことが確実となりました。失業率も10月から0.2%悪化して6.7%まで上昇しています。

雇用の悪化も米国のみではなく世界的な現象であり、例えば英国のデータでも第三四半期の雇用の減少が164千人と過去17年で最悪のペースとなっており、10月以降の加速傾向を考慮しても第四四半期はより厳しい状況となっていることが確実です。今年の特徴はこの規模感だけではなく、数十年という歴史の中で創業以来始めてのLayoffを断行せざるを得ない優良企業が非常に多いという事で、それだけ深刻な状況であることが浮き彫りになっています。

Rate cut, Job cut、Pay cut......と世界中がCutだらけなのですが、金曜日の雇用統計を受けて尚米株市場が上昇して取引を終えているように金融市場が悪材料に対する抵抗力をつけたかのような反応をしている事が目を引きます。市場にとって悪材料は織込み済みだったと言うのは簡単なことですが、それでも市場の事前予想の平均どころか下限をも下回るような予想外の悪化を示すデータが出ても株式市場が上昇すると言うのは通常は無いことです。
 実際に金曜日はダウ平均で約$260の上昇で、同様に欧州株もアジア株、日経平均を見ても最近の下値抵抗力は驚くほどです。PKO(当局或いは半公的な勢力による株価維持活動)臭い動きも散見されますが明らかにそれだけではありません。所謂Value投資家と言われる勢力が相当活発に割安銘柄に資金を入れ始めており、これらの動きによる株価の上昇に反応したPassiveな運用モデルの一部も確実に買い圧力を後押しし始めています。

金融当局間の国際協調姿勢や迅速且つ大胆な対応、それ以上に優良企業のLong term productivity、そして Intrinsic Valueと言うものを評価すると言うよりは信じる事を選択するという前向きなセンチメントが市場を支えていると言っても過言ではないと思うのですが、金融市場の混乱が実体経済に波及してきた中で、この混乱は同じように金融市場から修復される可能性が高いので株式市場などに見られる前向きな姿勢には大いなる期待を込めて注視していく価値があると思われます。

実体経済の底打ちは明らかにまだまだ先でしょうが、一足先に金融市場に前向きな姿勢が戻り始めた可能性に注目しましょう。

水曜日には毎年恒例のマンハッタンのロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯されました。私はこれを見るのが本当に好きでした。Wall街の痛みを少し離れたミッドタウンから暖かい福音の灯りで癒してくれるような、そんなイメージを今年は頭に描いてしまいます。

今年も、これまでに起きたことの全てを受け入れ、現状をGivenのものとして、ここから前向きに頑張って行くのだという気持ちを新たにする季節が到来しました。

Rejoice and keep faith.

Dramatic Rise and Fall.

Dramatic rise and fall………

やはり広範な世の中の仕組みが根本から変革の時期を迎えているのでしょうか。

未曾有の金融危機が引き金を引いた未曾有の世界経済の混乱と収縮により、発表される経済指標が世界中で数十年振り低水準という事態が続き、財政政策や金融政策の手法を抜本的に見直して、これまでとは違う方向に急速に舵を切る国々や金融当局、中央銀行が後を絶たない中でこの週末にはボクシング界でも未曾有の偉業”が達成されました。


プロモーターの一角、HBOスポーツのGreensburg社長が自身の31年間のキャリアの中で見て来た一流ボクサー達による偉業達成の中でも出色のものだったと言い切る奇跡的勝利を勝ち取ったのはフィリピンの英雄、Manny Pacquiao選手でした。


土曜日のラスベガスで行われたこの試合は、実現自体が大いなる驚きでした。Pacquiao選手は最初に獲得したのがフライ級という軽量選手であり、バンタム、フェザー、そしてライト級を制覇した偉大な王者。一方、そのライト級より一つ軽いジュニアライト級で最初の世界タイトルを獲得したOscar DelaHoya選手はライト、ウエルター、ジュニアミドル、ミドル級までを制覇した偉大な王者であり、今回の試合はDelaHoya選手が体重を落とし、Pacquiao選手は2階級分体重を増やして実現したという常識では考えられない試合でした。


自国の希望であり、英雄であるPacquiao選手が壊されてしまうことを恐れたフィリピンの国会議員や有力者たちがあらゆる手立てを駆使して実現を阻止しようとしたほどの危険な試合は、流石にDeaHoya選手が体力で圧倒するものと予想されていましたが、Pacquiao選手がまさかの奇跡を起こして8回終了時点でのTKO勝利をもぎ取りました。


今、世界経済が必要としているのは、ボクシング界におけるPacquiao選手のような救世主であり、彼の今回の奇跡の勝利のような偉業なのかもしれません。敗れたDeLaHoya選手もEast LAのメキシコ移民の地区から米国のスターダムを駆け上がったアメリカンドリームの具現者であり、フィリピン出身のPacquia選手のAchievementはそれを上回る軌跡と言えましょう。今でも英語が流暢ではない彼の成功はまさにこれもアメリカンドリームそのものです。


2009年を展望するときに、国、地域、経済圏、商品、プロダクツ、通貨、銘柄...などにおいて誰が(何が)DelaHoya選手であり、Pacquiao選手になるのか......そんな視点も持ち続けて行きたいと思います。

2008年11月30日日曜日

Black Friday brought a "black" ending of the week.

先週は、木曜日がThanksgiving休暇(感謝祭)で北米市場が休場だったこともあり各市場とも週を通して比較的小刻みな値動きが続きました。

そんな中で幾つか目立った動きをピックアップすると、週を通して株式市場が底固い展開を維持した事、投資家のConfidence改善を示唆する動きを背景に週前半はドル売り、円売り圧力が先行した事、特に米国の金利低下基調が鮮明化した事、週の後半には欧州経済の失速も鮮明となり対ドル、円で上昇していた欧州通貨が大きく落ち込む格好で週を終えている事、等が目を引きます。

このうちの幾つかを詳しく見てみましょう。

1 底固さを見せた株式市場

先週の米株市場は感謝祭休日の木曜日以外は全営業日でプラスとなり、先々週の金曜日から先週の金曜日まで5営業日連続のプラス。且つ21日(金)~26日(水)までの4営業日の上昇幅の合計は連続する4営業日合算ベースでの上昇幅で記録更新となりました。Black Fridayと呼ばれる感謝祭明けの金曜日も文字通りの「黒字」を記録して終了です。

2 米国金利の低下 : 資本流入が止まらない米債市場

これも重要な動きです。金融業界、自動車業界と米政府によるBail-Outの対象は拡大を続け、流動性供給スキームを拡充する連銀のバランシートも受け入れ対象資産を学資ローン、自動車ローンを担保とするABSにまで拡大する事になりました。


今後湯水の如く米ドルが金融システムに供給されるという環境整備が行われている訳ですが、そのうち誰も米国債を買わなくなるという恐怖シナリオが跋扈する中で実際のマネーフローは米国債市場に津波のように流入すると言う皮肉な動きが鮮明化しています。

以下のグラフからも明らかなように米国の長期金利は低下傾向を鮮明にしています。



一方で、実際に金融機関同士が市場で短期、中期で資金を融通し合うLIBOR金利はG20当局の思惑ほどの低下は実現していません。

FRBFF金利を下げて、信用市場が一定の改善を示してもある時点からは実際の調達コストは下げ渋っています。次のチャートはFF金利と3ヶ月、6ヶ月のLIBORの動きを示しています。
















週明けから12月に入りますが、年末越えの資金繰り懸念が再燃して銀行間の取引レートが急上昇する展開にでもなれば、市場実勢金利とT-BONDイールドの乖離幅の拡大や資金調達圧力による短期金利の上昇と米債購入による長期金利の低下によるイールドカーブの歪みが新たな市場混乱をもたらすリスクも否定出来ません。

3 欧州通貨の失速

週前半であれだけ堅調だった欧州通貨ですが、米国の感謝祭明けの金曜日に発表された欧州圏のインフレが急低下していた事で週末に大幅反落と言う展開となりました。

11月の欧州圏のインフレ指標が10月の3.2%から2.1%まで急低下しており、この低下幅は1991年以来最大の下落になります。これを受けて週前半を1.30半ばで折り返したユーロの対ドル相場は1.27割れまで下落していますが、来週のECBによる値下げの注目度が急上昇と言う流れとなりました。

4 円の気迷い

気迷い的なSWING相場に入った感のある円ですが、欧米要因で円高圧力、国内主要企業の業績の急ブレーキや政治の迷走は円安要因、機関投資家の外国投資の引き上げ圧力の上昇は円高圧力、M&A戦略による生き残りをかけた国内企業の外国企業買収は意外と根強い円安圧力となっており、12月はこれらの奇妙なバランスが崩れればちょっとしたVolatilityの上昇局面があるかもしれません。

どんな年末になるのか、興味深いところです。

2008年11月24日月曜日

Great American Mind ...lost?

それにしても公的資金による救済を要請している米国自動車業界のBig3(GM,Ford,Chrysler)のCEO達が議会との公聴会で行った言動の評判がよくありません。

自分たちが、Too big to fail であり、自分たちが破綻するとどれだけの雇用が失われるのかと言うことを強調してあたかも議会を脅すかのような内容が目立つことに加えて、3名のCEO達が全員専用JET機でワシントン入りした事も物議を醸しました。

議員の一人から、今後は民間機で移動することにしてCEO専用JET機の売却によるコスト削減をする気があるCEOは挙手をしてくれと言う質問が出ても手が挙がらず、失望した議員が議事録の速記係に対して、「誰も手を挙げなかったことを間違いなく記録して置くように」という指示をするシーンがメディアでも報道されていました。

後ほど3社のうちの2社はセキュリティ上の理由から自社のCEOに専用機での移動を義務付ける規則を設けていたことが明らかになっていますが、公的資金での救済を求める企業のありようとしてはいささかの違和感を禁じ得ません。

さらにかつてリー・アイアコッカ氏がクライスラー社の社長として自らの年棒を$1.00として公的援助も取り付けて背水の陣で業績を立て直した事例を引いて、CEOの年棒を$1.00として建て直しに当たる気はあるかと言うやや意地悪な(?)質問に対しても、自分達はすでに減給を受け入れてきた等と回答し、依然として数千万ドル(=数十億円)規模の年収に固執する回答をするなど、公聴会の内容は総じて議会と国民の理解を得るには程遠い内容でした。(流石にクライスラー社のCEOだけは$1.00を受け入れる用意があると回答していますが)

これは既に公的資金の注入を受けているWall街の金融機関のほぼ全てが例年並のボーナスバジェットを用意して世間の批判を浴びている事等にも通じる話なのですが、危機感の欠如に加えて何かアメリカ魂というような気概までもが風化してしまっているような寂しさを覚えます。

Big3にしても組合が強いのはわかりますが、社員の平均年収が約7万ドルと米国内で事業展開をする外国籍の自動車企業(勿論含む日本企業)の社員の平均年収の約4万ドルを大きく上回っており、役員クラスの高給やCEOの専用JET等も考えれば、救済するに値する企業なのかと言う声が出ても当然のような気もします。

Great American Spirit has been lost.

日本の武士道精神も然りですので偉そうな事は言えませんが、非常に寂しい話です。

Struggle for Existence

先週の金融市場も色々見せてくれました。


  * 実体経済減速を裏付ける経済指標


        ↓

* 自動車業界Big3GM,Ford,ChryslerCEOによる議会への公聴会の不評


        ↓

* 株価下落、金利低下、円、米ドルへ資本還流


        ↓

* オバマ政権の閣僚人事への期待で株価反発


        ↓

* 週末にオバマ次期大統領による追加の景気刺激策と雇用創造計画の発表


        ↓

* 今週の市場による評価に注目

大体イメージとしてはこんな感じでしょうか。


1 実体経済減速を裏付ける経済指標

世界中どんぐりの背比べ状態ですが、先週の米国の主だった物のみ拾ってみましょう。

10CPIが前月比▲1%(予想は▲0.3%)、1947年の同指標の計測開始以来最大の下落。

・コアCPI も▲0.1%でコアの前月比マイナスは1982年以来。

10PPIも ▲2.8%1947年の計測開始以来最大の下落。

11Empire State 製造業指数が史上最低の▲25.4に下落。(ただし予想よりはよかった)

11Philly Fed index 1990年以来最悪となる▲39.3 まで下落。

11NAHB builder confidence10月の最安値14から新最安値となる9まで下落。

10月住宅着工 が4.5%減の年換算791千件となり1959年の計測開始以来最低を更新。

・建設許可件数も12%減少の708千件で、少なくとも1960年以来最低。

・新規失業保険申請件数は1992年以来最大の542千件に上昇。

・継続申請件数は1982年以来初となる4百万件を超過。


欧州も似たような物であり、英国も116日に150bpの利下げを行い政策金利を1955年以来最低となる3.00%まで引き下げていますが、その後の議事録では200bpの利下げまで議論されていたことが判明して史上を驚かせています。スイスも100bpの緊急利下げを行うなど欧州経済も米国経済と歩調をあわせるように縮小の一途を辿っています。

2 自動車業界のBig3GM,Ford,ChryslerCEOによる議会への公聴会の不評

先週行われた米国自動車業界の所謂Big3GM,FORD,CHRYSLERCEOを召集して行われた米議会によるヒアリングは大きな注目を集めましたが、公的資金による救済を求める3社に対する大きな疑問と反感を残して終了した格好となり、一歩も二歩も後退してしまった印象があります。

3 株価下落、金利低下、円、米ドルへ資本還流

このような寂しい状況を受けて先週はS&P500$752.4411年振り最安値まで下落。Dow$8,000のサポートを割り込んで$7450台まで急落しました。原油価格も1バレル$50のサポートを割り込んで再び資産市場のImplosionが進行しました。為替市場では“Money back to centers”の潮流が復活して米ドルと日本円が上昇してドルインデックスが88.46の高値を取り、今回も円の強さが米ドルのそれを上回ったためにドル円は9355銭まで上昇しました。

19日の原油の$50割れというのも印象的です。1バレル当たり$150突破寸前から折り返して短期間で$50割れですからある意味ではこれが最もこの1年数ヶ月の出来事を象徴している市場の一つなのでしょう。この日にガソリン先物も200510月に指標が現在の計算方法に改定されて以来の最安値を更新しています。

4 オバマ政権の閣僚人事への期待で株価反発

金曜日の終わり方次第では世紀末的な雰囲気が一気に拡大した可能性があり、実際に日中は非常に危ない局面も多々ありましたが、オバマ次期大統領の下で注目される閣僚人事においてNY連銀総裁のガイトナー氏の財務長官就任が濃厚との報道を好感した株式市場が大規模な反発を見せて終了しました。ダウが$500弱の反発を見せて鬼門の$8,000も回復し$8,046.02で終了しています。

ガイトナー氏は40台でオバマ氏と同世代であり、これまでもNY連銀総裁としてWall Streetの事情にも詳しく、ベアスターンズやリーマンブラザーズの処理にも辣腕を振るった人物であるところが好感されていると思います。オバマ陣営の経済顧問チームの首領的な存在である元FRB議長ボルカー氏の就任が有力視された時期もありましたが新しい米国を印象付ける意味でもガイトナー氏の就任は個人的にも期待したいところです。

 週末にオバマ次期大統領による追加の景気刺激策と雇用創造計画の発表

因みにアジア外交におけるスタンスも気になるオバマ政権ですが、ガイトナー氏はアジア通であり、中国語は不自由なく、日本語もほぼ問題なしと言う事ですので大いに興味ありですね。他にもどうやらヒラリー・クリントン女史が国務長官を受けそうな流れですし、オバマ政権は実力のあるスタッフを集めることが出来そうな期待が高まっており、希望を紡ぐ事により米国の士気を高め、維持することが出来るかもしれません。(多分に期待込みですが・・)

さて、オバマ政権は週末の間に追加の財政出動による需要の創造を発表しています。公共事業的な社会インフラ整備を基本に教育改革などにもお金を注ぎ込み、住宅オーナー支援、大規模な雇用創造、そして先週株価急落による危機に見舞われたCitiグループへの200億ドルの追加の資本注入も合わせて発表しており、週明けの金融市場でこれらがどれだけ好感されるかに大きな注目が集まります。

6 今週の市場による評価に注目

現状は世界経済も金融市場も土俵際まで追い詰められた状態と考えられます。


20日の木曜日には、S&P 500 の構成銘柄のうちの実に101銘柄が$10を割り込むという1980年以来となる寂しい状況となりました。馴染みの深いところでもCitiグループ、スターバックス、モトローラなどのかつてのスター銘柄が$10未満のグループに含まれています。特にCitiグループは木曜日に$5割れ、金曜日に$4割れとなっています。

金曜日と週末の材料により今週は前半に市場は一息付きそうな気がしますが、金融市場の主要な潮流は資産市場の縮小と投資資本の逆流(還流)による円高、ドル高の断続的な加速にあると考えています。

米国の自動車、金融のみならず世界中で各国の繁栄を象徴し代表するような産業や企業までをも巻き込んだ生き残りをかけた生存競争が始まりました。

2008年11月17日月曜日

A Battle for a New Order.

ビジネスの世界では一般に仕組みを作ったものが勝利者となります。確かそのような題名の書物も複数出ていたと思います。


今の金融市場主導の経済モデルという仕組みは米国で誕生したと言い切っても異論は出ないでしょう。米国はその仕組みをWall街で実験し、その成功を国内そして世界に普及させて行くことで金融主導の経済発展という繁栄モデルを作り上げたと言う事になります。


エンジニアリングの世界で、Unit Operation(単位操作)という小さな概念を実験室⇒工場⇒大型プラントという順番でスケールアップさせて行く過程と全く同じです。


米国の繁栄を見た事で主要な欧州系金融機関の多くは経営コンセプトを米国型に切り替えて、今では名前を見れば欧州系だと分りますが中身は米銀と変わらないところも多く、実際に幾つかは実質的にWall街の投資銀行と言っても過言ではない印象すらあります。


ネット証券をどこにしようか、或いは外為証拠金取引の口座をどこに作ろうかと言う時に画面(Platform)の使い易さや分り易さが重視されると思いますが、まさに取引や決済の仕組みを我々はPlatformと表現する事が少なくありません。


その意味で私は米ドルをPlatform通貨、英語をPlatform言語と呼んでいるのですが、米国はこの二つを手に入れた事で地球上における絶対優位を確立したと言ってよいのではないでしょうか。世界中どこへ行っても自国語が共通言語であり、国際間取引では自国通貨が決済通貨であればどれだけ楽でしょうか。


私はグローバリゼーションと言うのは、米国から世界中へのPlatformの輸出だったと思っており、この普遍的Platformを通じて米国から世界中に積極投資が行われたことで経済繁栄という福音が広がっていったと考えています。このPlatform上で米国は世界中から物を買い、対価として世界の決済通貨である米ドルが世界中に供給されて行きました。マクロ経済学で見た時に大きな問題であり続けた米国の莫大な経常赤字が米ドル暴落に繫がらなかったのは米ドルがPlatform通貨として世界中に需要且つ受容され続けたからです。原油や小麦などを購入するのに必要なのも米ドル、米国以外の国々の間での貿易の決済も殆どが米ドルという事実があった訳です。


ここまでは実に美しい絵だったと思うのですが、この鉄壁のPlatform上に新たな空間次元を付与し始めていた金融工学というエンジンの故障により資金の流れが逆流しており、Platformを通して世界中に需要され、供給されて来た米ドルが本国の資本不足とDe-leveragingと言う業容縮小の為に本国回帰しているのです。


米国発の金融混乱による米ドル上昇と言う図式は今でも各方面で消化不良を起こしていると思います。



この米ドルの本国回帰によるドル高は上のグラフの通り10月中旬から失速し、高値も安値も収斂していく三角保合いの状態を保っていましたが、ドルインデックスは先週遂にこの三角形を上に抜け始めた様に見えます。


Platformの話に戻りますが、今回の米国の急減速を好機と捉えたライバル国からはこのPlatformを崩して自国に有利な新たな世界秩序や経済の仕組みを再構築しようと言う動きが出ています。今回のG20緊急サミットでも英国のブラウン首相が第二のブレトンウッズ的な枠組み構築を持ち出し、フランスのサルコジ首相は米ドルは最早唯一の基軸通貨ではないと断言し、ロシアからも足並みを揃えるような提言も出て米国に揺さ振りを掛けています。


そんな中で米ドル以上に上昇している日本円の更なる復権に動くことも可能だった日本ですが、麻生首相は米ドルを基軸通貨とする体制の維持を主張して混乱の収拾が最優先であるという大人の対応を呼びかけています。また機能強化が急務であるIMF改革に対しても既に米国に次いで2番目となる3200億ドルを出資している日本として今回更に1000億ドルの追加出資を表明した事と合わせて日本は今回のG20 で一定の存在感を示す事が出来たのではないかと思っています。


就任後の総合評価ではやや期待外れの麻生政権ですが、今回はよくやったというのが正当な評価だと思います。


日本は将来の新たなPlatformにおいてもその一角を担う十分な資格と資質があると思われるので将来は意外な形での武士道の復権があり得ると期待したいですね。

2008年11月16日日曜日

Walking on a thin ice...

出張や体調不良などで間が空いてしまいましたが、その間に発表された世界中の経済指標や金融市場の乱高下を見ながら、世界経済は待ったなしの状態まで追い詰められていると言う思いを強くしていました。


新興国市場は再び大きな資本流出の波に洗われており、複数の金融当局が市場介入で自国通貨の下落を必死に食い止めています。アイスランドを筆頭に複数の国がIMFに緊急援助を要請していますが、現在のIMFの資金量には限界があるのは明白である為、投機筋も手を緩めていない感じです。


一方でIMFを支える筈の先進国にも全く余裕は無い状況です。先週も木曜日には欧州の中心であるドイツの第3四半期GDPが予想外の縮小となり少なくとも過去12年で最悪のRecession入りとなり、欧州全体も15年振りのRecessionに突入しました。


 米国もこれまで経済を支えてきた個人消費と不動産市況の急速な減速が一層明らかになっています。過去の景気減速時には全くと言ってよいほど影響を受けていなかった別天地であるNY市の減速も目を引くのですが、特にQueens地区の不動産の下落が加速していると言うデータがあります。NY市は15個のZip Code(郵便番号)を持ちますが、同地区は実にそのうちの12個を占める地区であり、いよいよ本丸のManhattan島の攻防が開始されそうな気配です。雇用の悪化に関しても木曜日の失業保険申請件数では1週間以上継続して就職活動をしている人の数が1983年以来と言う高水準になっています。


このような状況を受けて既に多くの国々が①預金の全額保護、②金融緩和、③金融機関への資本注入、④その他財政出動を打ち出していますが、既にボーダーレス化の進んだ国際経済を立て直す鍵は国際協調が握っていると言っても過言ではなく、その意味で間もなく始まる今週の市場動向は、この週末にワシントンで行われたG20緊急サミットの成果に対する金融市場の審判が注目されます。


1010日にLiborが最高値を付け、Dow8千ドルを割り込んでから暫く市場は調整的な回復過程にありましたが、先週は再び株価が下落傾向を強めて、投資資本の中央回帰圧力により日本円と米ドルが押し上げられるパターンが復活しています。



G20ですが、全体と部分でかなり見え方が違うと言う印象を持っています。


結論からすると20もの参加国の間にある危機認識の温度差を詰めきるのは難しかったかなと言う印象ですが、総論では国際協調姿勢を打ち出しながらも各論部分では今後のIMFや世銀の役割強化、金融市場の監視・規制強化の部分では足並みの乱れが目立ちますし、これを絶好の機会とばかりに米国と米ドルを中心とした世界経済及び金融市場のあり方に揺さ振りをかけようと言う動きも随分目立ちました。


最低ラインというか、一応の及第点は確保したかに見えるG20金融サミットですが、週明けの動きから注目していきましょう。

2008年11月5日水曜日

Presidential Election

いよいよ米国の大統領選挙が始まりました。

今回も長い戦いの過程では色々なドラマがありましたが、いよいよクライマックスです。

民主党はヒラリーが出てくると思いましたが、オバマ候補が凌ぎ切り、その勢いで共和党のマケイン候補との戦いもリードを守ったまま投票日を迎えた格好ですね。

感慨深いという表現が適切かどうか分りませんが、1つ象徴的だと思うことがあります。

今の欧米型の金融ビジネスの土台を築き、その大部分を支配していたのがロスチャイルド家という一族なのですが、実は共和党のマケイン候補はその末裔に当たるようです。所謂本家と言うものではなく分家のようではありますが、その金融危機に端を発した実体経済の混乱はマケイン候補に逆風となり、オバマ陣営には追い風になったことは明らかでしょう。

ロスチャイルド家末裔のマケイン候補が遂に掴んだ大勝負の機会に、先祖が作った金融の混乱が主因となって一敗地にまみえるとしたらまさに象徴的な出来事ですね。

一方で黒人初の大統領となることが有力視されるオバマ候補ですが、実はこちらも"庶民"と言うわけでもないようで、実はあの故ダイアナ妃とも遠縁となる高貴な血筋なのだそうです。

そんな切り口で見てみる事もちょっと面白いですね。

2008年11月3日月曜日

The Last Samurai ?

これだけ個人投資家も無視出来ない勢力となっているので、今後は変わって行くのかも知れませんが、外国為替市場はある種無法地帯だと言えます。

投資家保護の概念が薄く、風説の流布でも何でもありなのがこの市場と言えるでしょう。

先日は、何故か為替市場だけにあのトムクルーズが映画の撮影中に事故死したという金融市場と直接関係の無いデマまで流れるなど、殆ど遊ばれていると言う感じすらしてきました(笑)
とんだTRICK OR TREATだと思っていたら、ハロウィーンパーティで見つけました!

トムクルーズではありませんが、ラストサムライ(?)です。

日本でも徐々にハロウィーンは浸透してきている感じがしますが、あのランタン用のカボチャは一個3千円と言う事でしたので購入を断念しました。もう一段の円高を期待したいところ(?)ですね。









Trick or Treat ?

ゲ、ゲ、ゲ……マジですか?


と言う感じなのですが、早くも11月ですね。

よく米国発の金融混乱が世界中に拡大したという事が言われますが、より大きな枠組みで見れば、金融市場の混乱が実体経済や政治を含めた従来の世の中の仕組みそのものを揺さぶり始めたというのが2008年の潮流だったような気がします。


10月も非常に密度の濃い月だったと思いますが、世界中の金融当局が一応の協調姿勢を見せた事、預金の全額保護、金融緩和(協調利下げもありましたね)、国有化も含む金融機関への資本注入に動いた事で足元には一定の安定がもたらされた様に思います。


先々週末と先週末の各市場の終値を比較すると嫌になるほどの乱高下を消化しながら金融市場全体に正常化(少なくとも沈静化)のバイアスがかかって来ている事が分ります。特にLIBOR(銀行間Cash取引レート)やクレジット市場の沈静化は金融経済の動脈硬化が改善してきている事の証左ですね。


株式市場も活況でした。世界株式市場全体の通信簿とも言えるモルガンスタンレーの
MSCI World index9.8%の回復。週を通して共に10%以上の回復を見せた米国のDOWS&P
5001974年以来の上昇幅で両者とも先々週の2003年以来の最安値から立ち上がってきました。Europe's Stoxx 6002001年以来となる12%の上昇。MSCI Asia Pacific Indexは日経平均と一緒に6.9%の回復となりました。


FRBBOJの利下げもあって日本円と米ドルの暴力的否上昇に調整が入った為替市場ではCommodity通貨が反発を見せており、先頭ランナーとなったAUD円が11%弱、CAD円、NZD円も9%弱の上昇を見せています。



上記はDXY(ドルインデックス)のチャートですが、8月初めから上昇したドルは9月中旬に折り返して半値弱の戻しをした後に再度上昇に転じて一気に走り抜け、先々週末には対CAD4年振り、対GBP6年振りの高値に到達しましたが、日本円がその米ドルに対して実に13年振り高値となる9087銭まで上昇していた事も特筆に価することです。


GlobalAsset市場の崩壊、信用の傷付いた投資家や信用創造体力の後退した金融機関の業容縮小(De-leveraging)による米ドルと日本円の急上昇は、如何にそれ以前の世界資産バブルの中で両者の果たしていたリスクマネーの供給源としての役割が大きかったかと言う事の証左以外の何物でもないでしょう。


原油価格の上昇は投機ではなく実需だと言う主張も、金融危機の回避に莫大な公的資金を含む流動性が供給される以上将来のハイパーインフレーションは不可避だと言う主張もこのDe-leveragingという現象の前に木っ端微塵に砕け散ってしまいました。特に後者のシナリオでドル売りとGoldSilverの買いに動いた勢力は断崖絶壁から突き落とされたような展開となっているのですが、最近では1929年当時の世界大恐慌(Great Depression)に対してGreat
De-leveraging
という表現が使われ始めている事にも大いに注目したいところです。


バブルが何時弾けるかは弾けるまで分らないというのが定説であるように、逆バブルとも言えるこのDe-leveragingという現象が何時まで続いて、どういう形で終了するのかも現時点では誰にも分らないのだと思います。1つだけ言える事は、国際協調を含む当局の懸命の努力によって足元には一旦沈静化の兆しがあるということでしょう。


今週も主要国の金融政策に注目が集まります。豪州RBA、欧州ECB、英国BOE50bp0.5%)の利下げが有力視されていますが、どの程度株式市場を持ち上げる事が出来るでしょうか? また何と言っても米国の大統領選挙、そして雇用統計も控えています。


抜本的な万能薬が見つからない未曾有の世界経済危機の中で、当局が矢継ぎ早に繰り出す大きな対症療法(Band-Aid)と奥深い所にある病巣との鬩ぎ合いの時間帯に入っています。


丁度Holloweenが終わったところではありますが、金融の世界ではまさにTRICK OR TREATが継続していると言う訳です。何が仮装で何が実態なのかの見極めが肝要ですね。

2008年10月27日月曜日

Volatility in uncharted zone !!

狂乱の一週間。

オプション市場のVolatilityは軒並み98年のロシア危機とそれに続くLTCM崩壊時の水準を越えて上昇しており、事実上史上最高値を更新したと言ってよいでしょう。

世界中の資産価格が暴落し、リスクキャピタルの中央回帰による米ドルと日本円の上昇が続いています。説明の必要は無いかと思いますが、米国や日本が買われているわけではなく両国の投資家による敗戦処理的なRepatriationも加わり、両国の株式市場が世界の株式市場の下落を先導している状況です。

大相場の予感はありましたが、最早金融の枠組みを超えた世界秩序の破壊と再構築と言う歴史の転換点に差し掛かっているのだという思いが確信に変わってきています。


歴史を見て気が付くのは、気の遠くなるような時間を要するダーウィンの進化論に代表される生物学とは違い、人類の文化、文明の転換は実に短期間で寧ろ唐突に起きているということでしょう。


 ・大きな変化は極めて短期間に起こる。

 ・大文明の終焉は時として滑稽ですらある

この2点を頭に入れて行きましょう。

さて、Volatilityの代表選手と言えば米株市場のVIX指数です。これは過去に50という数値を超えた事は18回ありましたが、毎回一ヵ月後には大幅に下落をしていました。


 それが今回は10月初旬に57台の史上最高値を更新してから50台を割り込むことは無く、遂に80台まで上昇してしまいました。


通貨オプションでもドル円の一ヶ月物が45%で取引されて98年当時の40%を越えてきていますし、最も動きの激しい通貨の1つである豪ドルの短期物は3桁のVolatilityで取引されるようになりました。これは大変な事です。


商品市場も大混乱で、先週直近の最安値を更新した銘柄は、copper, aluminum, nickel, zinc, tin, gold, silver, platinum, palladium, crude oil, propane, lumber, sugar, coffee, cocoa, oats, canola, and live cattle・・・・となっており、商品市場全体のインデックスとドルインデックスのクロスレートのWeeklyチャートは断崖絶壁状態です。

目先の注目点は各国の金融当局の行動であり、特に世界レベルでどういう協調行動が取れるのかに注目が集まります。

最早アイスランドは破綻し、東欧は壊滅状態。資源価格高騰を背景に大国復帰かと思われたロシアですら最早見る影は無く、同国の債務のCDSCredit Default Swap)の水準はアイスランドがIMFに支援を要請する前の水準を遥かに上回るレベルです。

年末に向けて相当数のヘッジファンドの破綻も不可避と思われる中、勝ち逃げ組やダメージの浅いファンドの中には全て現金化した上で年内は休業するという連中も出始めています。

金融市場は一時的な安定や調整的な反発を消化しながら相当期間の混乱が続く事を覚悟する必要があるでしょう。

ここからは我々も現金比率を高める事で機動力の確保を優先するべきです。そして次には勇気ある戦略的な決断をする時を待ちましょう。

この未曾有の混乱の後には未曾有の投資機会が待っていると確信しています。


グローバル化の頓挫の後に来る新しい世界秩序をどう読むかですね。

2008年10月20日月曜日

The invisible continent is sinking.

よく日本のMusicianなどが海外公演を成功させたとか、海外でもCDを出すなどという話があります。アジア域内では実際に日本人の活躍は目覚しいものがあるし、同時に国内でも韓流ブームが起きるほどアジアの音楽、映画などが受け入れられていますが、欧米では一部あるいは一時的な例外を除けば実態は今ひとつという感じではないでしょうか。

活動の場をNYやLAに移したなどと言われながら実は時折寿司屋や蕎麦屋で目撃される意外は現地のメディアに取り上げられることも無い人達や世界のXXと言われ、CDが世界同時発売等と宣伝されながら実際には相当大きな音楽店ですらそのCDとやらを一度も見たことも無い”大御所”も居ます。

ま~この辺りはプロモーションの関係で必ずしも当人たちには責任は無いケースも多いのでしょうしファンの人達にしてみれば実質その程度のことは百も承知で応援しているので大きなお世話と言ったところでしょう。

逆に日本で思われている以上に世界で名前が知られていると言う芸能人や文化人も居るわけですが、その代表的な人物の一人に大前研一氏が居ます。私は、この人が元々外資系の経営コンサルタントだったことや一時平成維新の会なるものを作って政治活動をしていたという程度の知識しかありませんでしたが米国に居る間にこの人の”世界度”を知るようになりとても驚きました。

この人は最初から世界に向けて英語で論文や著書を発表することが多く、日本で出版されている彼の書籍はその翻訳本だったりする位なのですが、私も彼の洞察力には何度も目から鱗が落ちる思いをしてきました。

米国の巨額の赤字は米ドルを暴落させるという通説があります。ほとんど宗教のようにこれを信じる人々が多い中で、過去数十年それが実現していないと言う事実はかつて相当長期間大いに私を困惑させ続けていました。①巨額の赤字だけでは米ドルは暴落しない(必要条件だが十分条件ではない)、②何か米ドルを支える別の要因が存在する、③その両方、④そのどれでもない・・・・・という自問自答が私の脳味噌を激しく循環し続けていました。

この何故米ドルは暴落しないのかという疑問と、そもそもグローバリゼーションと言われる過程の本質は何なのかという二つの命題に明確な回答と深い洞察力を提示してくれたのは大前スパゲティ、いや大前研一氏でした。ともに分厚いのですが、彼の新資本論や新経済原論は自信を持ってお勧め出来ます。

彼はグローバル化により出現する新たな経済空間というか世界的な経済連合体を The Invisible Continent (見えない大陸)と名付けて分析していますが、結局は世界の金融当局者たちはこの見えない大陸への対処に苦労し、有効な処方箋を見出せないまま新興経済圏ではPlainな経済バブル、先進経済圏ではややExoticな金融バブルを発生させて、それらを弾けさせてしまいました。

先進国経済には成熟した安定を、新興国経済には貧困の除去と生活水準の抜本的な引き上げを同時にもたらす導管体(Conduit)として機能するはずだったこの”見えない大陸”と言う架け橋(あるいは新世界秩序)は今荒海の果てに沈没しようとしているかのように感じます。

米国経済が混乱しても世界経済は大丈夫と言うDe-coupling論は既に影を潜めており、その反対のRe-coupling論をベースにDe-leverageやRe-patriationという否定や逆流の接頭辞を付されたキーワードが溢れるようになりました。

要するにGlobalization の頓挫なのだと言うことで、私はずっとDis-globalizationという造語で一連の混乱を説明しようとしているのですが、このような単語を使用するたびに私の頭の中では、ますます見えにくくなる”見えない大陸”が霧の彼方に遠ざかっていくようなイメージが浮かびます。

このLighthouseから、この大陸を照らし出して行きたいと思うのですが、この遍く福音をもたらすことが期待出来た見えない大陸の可視化は少なくとも年単位での時間軸の修正を余儀なくされてしまったようです。

まだまだ混乱は続きそうですね。

金融市場の混乱はトレーディングで乗り切る事が出来ますが、実体経済の大規模な衰退は治安の悪化や歴史的にはテロ行為、社会動乱から最悪のケースとして国際紛争につながることがあるのでとても心配しています。

Please protect yourselves at all time. May you all be protected by God.

2008年10月14日火曜日

This coin also has two sides.

本邦証券業界最大手の野村証券が破綻したリーマンブラザーズ証券のアジア、中東、欧州部門を買収し、最大手のメガバンクである東京三菱UFJがモルガンスタンレー証券に大口の出資をして同社の筆頭株主となるという大きな勝負に打って出ました。同社はその後のモルスタ株の急落にも姿勢を変えず、出資金の払い込みを前倒しして行った旨を公表してG7後でもある週明けの北米株式市場をサポートする姿勢を見せています。


何故壊れたビジネスモデルを買うのか?


市場にはそのような懐疑的な声も上がっているのですが、私は個人的に本邦の証券、銀行の最大手の両社の決断は数年後には喝采を浴びている可能性があると思っています。


ただ、業界関係者にもそのような懐疑論や悲観論が蔓延する位、金融界はまさに激震に襲われたことは間違いありません。


まさかと思うような企業がまさかと思うような事態になっているのですが、Wall街の一角のベアスターンズ証券の行き詰まり以降も風雲急を告げる世の中の変わりようです。




一体何があったのか?


業界のインサイダー的な話になりますが、そこには複雑な背景があります。


Complianceは、法令遵守と訳されますが、特に金融業界に関していえば遵守の対象は法令だけではありません。そこには様々な国際規約のようなものもあるのですが、その中のひとつにBaselⅡと言われる自己資本ルールがあります。これは簡単に言えば、保有する資産の質に従って追加資本を積み増すというルールです。


米国は突出した消費国家ですが、欧州やアジアの大部分は高い貯蓄性向を持っており、金融機関は必ずしも貸出余剰(預金残高<貸出残高)では無く、何か割りのよい運用方法を探しています。


 そこにサブプライム等の高金利ローンも組み込んだ利回りのよい証券化商品がありました。国内企業に貸出をするよりも余程高金利です。問題はBaselⅡ規約による追加資本金ですが、ここに一つの抜け穴がありました。CDS(Credit Default Swap)と呼ばれるものです。


このデリバティブ商品の説明は省略しますが、CDSの購入=売り手の保障がつくという事であり、この売り手がAAA格の金融機関であれば購入する証券化商品は事実上の安全資産となり、BaselⅡ規約の資本金の積増し義務が大幅に緩和される(時として無くなる)事になりますので、この運用手法は爆発的に世界中に広がりました。

  1. 高利回りの証券化商品を買う。

  2. CDS市場で保障を買う。

という事なのですが、世界中の金融機関がこの“②CDS市場で保障を買う”という時に最も安価な保障を提供し続けて来たのがAAA格の世界最大の保険会社でした。そうです、AIGだったのです。


前回の投稿で述べたとおり、2007年度から急激にサブプライムローンの延滞が増加しますが、多くの金融機関はAIGから購入したCDSのお陰で資産の劣化を防ぐ事が出来ましたが、一方でAIGは世界中の金融機関から損失を輸入した格好となり、バランスシートが急速に劣化していきます、


雪崩が起きたのは先月、9月の中旬でした。


格付け会社が一斉にAIGを格下げしたのです。同社が大きな困難に直面したことは直ぐに分ることですが、世間が見落としているのがBaselⅡ規約です。


 CDSの売り手であるAIGAAA格を失った瞬間に、世界中の金融機関の資産査定が劣化してBaselⅡにより資本金の大幅な積み増しの必要性に迫られたのです。


CDSというクレジットデリバティブ取引を通してAIGが世界中から損失を輸入し、逆にこのスワップ取引を通してAIGの格下げは世界中に資本増強の必要性(そしてBaselⅡによる義務)を輸出することになりました。


これで世界中の金融機関による狂乱のファンディング圧力の高まりが銀行間の資金取引を枯渇させ、銀行間取引レートであるLiborLondon Interbank Offered Rateが急上昇します。金利市場でドル資金が取れなくなった市場参加者が為替先物や通貨スワップ市場で足元のドル需要を調達する動きが活発化したことからこれらの市場にも異様な歪みが生じてしまい国際金融市場がパンク寸前となり、それがさらに体力の無い金融機関の経営を圧迫するという悪循環が生まれた訳です。


実はここで衝撃的な事実が表面化しました。一つの謎が解けたという表現がなされてもいますが、大きく経営が傾いたAIGのポートフォリオの中でこのCDS取引の最大のカウンターパーティは名うての海外金融機関勢を抑えて国内はWall街の本丸と目されるX社であったというのです。


同社の独り勝ちの構図は業界の中では長年の謎でしたが、同社が他社のような大規模なWrite-offや資本増強の必要性に迫られなかった背景の一端が明らかになり、米国金融当局はAIGLehmanのように破綻させる訳には行かなくなりました。世界中の主要金融機関と国内最大の投資銀行に引導を渡すという選択肢はあり得ないからです。


こうしてAIGは事実上の国有化となり、X社Warren Buffet氏から大規模な出資を受ける事となりました。


ここでも事実は小説よりも奇なりです。BaselⅡのような規制の無い事実上の無法地帯だったCredit
Derivative
市場にメスを入れた時に、副産物として(?)Wall街の長年の謎が解けたという訳です。


誤解と批判を恐れずに私見を述べれば、主要メディアを含む世間が完全に見落としている事の一つに、「米国発の混乱」という表現は正しいとしても、それ以前にあった世界経済や世界的な資産市場のバブル的な繁栄自体が、そもそも「米国発」のものだったという事実があるのではないでしょうか。


Let us always make sure that we are looking at both sides of the coin.


いずれにしてもこうして9月にルビンコン河を渡った以上、第4四半期も大きな時代の潮流がうねる事になりそうです。

2008年10月13日月曜日

A HOUSE OF CARDS...

立派に見えても壊れる時は脆い物の例えに「カードの家」という言葉があります。


トランプのカードを上手くバランスさせて積み上げて建物のような形にしたものを思い浮かべればよいでしょう。昨年の夏に表面化した米国のサブプライム問題に端を発した米国経済の急速な冷え込みを表現するのに、以下のような表現が頻繁に使用されていました。


House of cards is finally falling apart.


これで2007年秋から20083月までは米ドル売りと言う津波が金融市場を席巻しましたが、その後数ヶ月の猶予を経て、遂には世界経済全体もがA big house of cards だったと言う事が判明し、一旦は米国から欧州、オセアニア、新興国に逃避していた投資資金が一斉に米国に還流する形で米ドルが一大復活を遂げる展開となりました。


House of cards というのは言いえて妙で、まさに米国経済の土台を支えてきたのはHousing
Marketだった事は周知の事実です。


今や全世界に飛び火した経済の混乱を考察する時に、その引き金を引いた米国のサブプライムローンの延滞が何故2007年度に入って急上昇したのかを再確認する事が必要だと思います。


日本にも、親子二世代ローンや将来の収入増を当てにしたステップ返済型の住宅ローンがありますが(住宅金融公庫ですらありますね)、要するにサブプライムローンというのは殆どが5年後位から急激に返済予定額が上昇すると言うスタイルのローンだった事と、その多くがFRB2001年度の同時多発テロによる景気後退を受けて継続的に金融緩和をしていた2002年度に契約したものであった為に、2007年に入り急上昇した返済額を払えなくなった債務者が急増したと言う事実があります。


以下はこのステップ返済型(Adjustable Rate Mortgage=ARM)の返済額上昇時期の到来予定のチャートですが、明らかに今後の期限到来=延滞予備軍が長期に渡って展望される為にこれらを束ねて証券化した債権に対する値段が付かずに市場が麻痺してしまっているわけです。


週末のG7会合の評価は現時点では微妙ですが、危機感を募らせる欧州当局が週明けの欧州市場オープニングに先駆けて抽象的との批判も大きかったG7合意の具体化を発表した事で市場は好意的な反応を示していますが、火曜日以降の東京市場や北米市場の動向こそが大きな鍵を握ると言う事になりそうです。


House of cards is tearing apart ?

窮地に立つHousing市場のテコ入れ先に次のCardは切れるのでしょうか?

住宅市場同様に景気回復の鍵を握るのが個人消費と雇用問題ですが、実は不安なデータがあります。


所謂NFPNon-Farm Payroll:非農業部門新規就業者数)ですが、2001年度以降の新規雇用創造の実に43.15%が住宅・建設・不動産分野での雇用増でした。


最早公的部門による前例の無いようなカードが切られない限り、世界景気の早期回復は望むべくも無いという状況のようです。


ここは当局者の英知と英断に期待したいところですね。躊躇せずにカードを切って欲しいものです。