2009年11月29日日曜日

Dubai Shock.

サンクスギビング休暇を挟んで金融市場はDubaiショックに見舞われました。


世界中の中央銀行から金融システムに供給されてきた潤沢な流動性は本来緊急の異例措置であったはずが実体経済の不調の長期化から恒常的な措置となり、実体経済内に投資先を見出せない流動性は金融経済の中で一大潮流となって新興国に雪崩れ込む結果となりましたが、やはり少なくともその一部はバブルを形成してしまっていたと言わざるを得ないのでしょうか。


過剰流動性の潮流が向かった先は、新興国と商品市場がメインということになるでしょう。

新興国中にはブラジル、ロシア、インド、中国(所謂BRICsですね)やオイルマネーで潤う中東経済圏、南東アジアなどがあり、商品市場は貴金属市場、特に金の購入が顕著になっていました。


その中東経済圏の中でも最もこの外国資本の受け入れに積極的であった場所の一つがDubaiであり、ここで人財産作ったと言う人達も沢山いたはずです。Dubaiで一番有名なのはThe Palm Jumeriahと言われる開発で,文字通り手の平の形に開発したPalm islandという地域の開発でした。


こういう感じです。

殆どかつて話題となったミステリーサークルのような形状ですが、ここの不動産市場は短期間でバブル化し、それが弾けてしまいました。今では不動産価格はピーク時の半値を割っていると言う情報もあります。


実はDubaiのこの手の開発はDubai政府が保有する運用機関を中心に数多くの組織が関わっているのですが政府筋から既に主力運用機関だったDubai-WorldNakheelという組織のRestructuringの意向が発表されており、最悪のシナリオとして破綻処理というようなクレジットイベントとなれば世界中の投資家が甚大なダメージを負う事になります。


Dubai政府はAbuDhabiの政府系金融機関から融資を受けていますが、その資金を今回のDubai Worldなどの救済には使わない意向が示されており、Dubaiも含むアラブ首長国連邦の首長国且つDubaiのタニマチ状態であるAbu Dhabi政府は苦境に陥ったDubaiの投資運用機関の中で本来のオイルマネー主体ではなく外国資本の借り入れというレバレッジ度の高い組織の救済には熱心でない可能性が高そうなのです。


金融的な視点で見れば地域柄中東地区への融資規模は欧州、英国が米日を圧倒する規模となっており、ポテンシャルな焦げ付きの規模感の違いから欧州、英国の市場から米日の市場に資金が移動しています。この流れを背景に為替市場でもユーロやGBPが売られて米ドルや日本円が買われているのですが北米市場のサンクスギビング休暇明けとなる週明けの動きでもこの流れが継続するようなら今後クリスマスや年末年始にむけたリスク資本の里帰り相場が続く可能性もありそうです。


Dubai Shockという言葉が踊りますが、その他通貨に対する反発を強める米ドルに対してさえ95年以来となる円高水準となる84円台(84.79)まで上昇した円の潜在力にも大いに注目して行きましょう。


The big palm is still open but its fingers are sinking now.


週末から一旦沈静化する方向の話も出ていますが引き続き予断は許しません。それにしてもPalm Islandというのは今更ながら物凄いプロジェクトでしたね。