2007年9月16日日曜日

He was not "The last samurai" but was "a samurai at last" :安倍首相とBernanke議長

水曜日の安倍首相の突然の辞任には本当に驚きました。

辞任の理由、背景、周囲は知っていたのかどうか、内閣総辞職なのか、議会解散、衆議院選挙はあるのか・・・などなど首相が辞任すると言うこと意外は全くわからない中で金融市場も乱高下しました。

一番動いたのは株式市場だったと思うのですが、それまで前日比少しマイナス圏と言う程度で推移していた日経平均は、程なく前日比100円以上の上昇と言う水準まで吹き上がり、やがて上げ幅以上に反落してマイナス100円以上の水準まで落ちた後結局はそこから小幅に戻したマイナス圏で取引を終了しました。

気の毒ですが、安倍首相の辞任はプラス材料とする声も多く聞かれましたが、それ以上に足元の不透明感増大や数週間の事実上の政治空白期間が不可避であることなどは最終的には投資家心理にはマイナスであるということでしょうか。

世論のほうですが、こうなると配下や取り巻きに足を引っ張られ続けた安倍氏への同情論が多いように感じますが、私も武士の子孫であり、全く同じように感じています。

彼が官房長官として国民の絶大な評価を得て、小泉首相にも抜擢される形で後任首相の座まで上り詰めたのは、特に拉致問題解決に向けた対北朝鮮外交における軸のぶれない交渉姿勢にあったと思います。

 ただ残念ながら、首相になってからは相次ぐ側近の不祥事において国民や国政よりも側近のほうをかばってしまうかのような印象を残し続けたのは全くの致命傷でした。

松岡農相を切れなかった事1つとっても彼の人事上の甘さが浮き彫りになるのではないでしょうか。所謂"泣いて馬しょくを切る"という行為が出来なかったのは、松岡氏が安部政権誕生過程で九州ブロックの党員の票固めに奔走してくれた事とも関係があったのではないかと思うのですが、このように自分についてきてくれた人や自分を持ち上げてくれた人に報いたい、少々の事なら守ってあげたいという気持ちは痛い程理解できます。

勿論国政の、ましてや内閣と言う頂上にあってこれをやられたら国民はたまったものではないわけですからやはりこの辺りのけじめがつけられなかった事が安倍さんの限界だったと言う事でしょうか。

政党間でもメディアも何だかあら捜し的なバイアスを強めている事には強い危惧を禁じえませんが、それにしても次から次に閣僚レベルで続出する不適切な会計処理などはどうしたものでしょう。

殆どの政治家はクリーンにやっている中で何故か問題のある人達ばかりが選ばれてしまったと言う確率は逆天文学的に低く、大丈夫そうな人を選んでこの有様だと言うのは実は政治家たちはみな私腹を肥やす事にもご熱心であると言う事が明らかになったといわざるを得ないでしょう。

悪役に徹する事も必要と割り切って走っては来たものの、もう流石に嫌になったというような"切れ方"を安部さんがしてしまったとしても無理もない部分もあるかもしれないですね。あの上杉謙信だって全てを投げ出して高野山に奔走してしまった事があったように。そのカリスマ性は比べるべくもないにしても・・・・

ところで、安部首相とBernanke議長には大きな共通点があると思ってきました。前任者が長期政権であること、絶大な人気とカリスマ性のあるリーダーであったことという部分において両者は全く同じ立場に置かれてきたと思います。

今週のFOMCは、一部ではBernankeのワンマンショーと目されています。火曜日のFOMCでBernenke議長率いるFedがどのような金融政策を発表・実行し、そして声明文ではどのようなメッセージを市場に対して送るのか・・・・・これで目先の金融市場の動向は完全に決するでしょう。そして奇しくもその前週に、同じような立場にあった安部首相が突然辞意を表明したと言うのは何を示唆するのでしょうか・・・・非常に興味深い状況になってきました。

Abe was not a last samurai but he was a samurai at last.

安倍さんは、ラストサムライのような格好よさは無かったけれど、最後は潔かった。海外向けのレポートにはそのように書いて送ったところ、意外と好評でした。

Bernankeさんは、何を見せてくれるでしょうか・・・・彼が切るのはお腹じゃなくて政策金利のはずですけどね。Stay tuned.