2007年9月30日日曜日

At Major Cross Roads 2

ヘッジファンドという物は、よく名前の知られた大手且つ老舗でもせいぜい1980年代後半に誕生したものです。

90年代初頭のデータで確認されていたのが3百社ほどでしたが、これが2000年を超えた辺りで1万社を超えるという増え方をしており、当然ながら運用資産量や体力、何よりもレベル差には相当なバラつきがありますので、今後1年間くらいの期間に数千という単位で清算されるファンドが出てくるのではないかと思っています。

数千と言う数のヘッジファンドが消滅しても結局はリスクマネーやスタッフの多くは別の存続するファンドやリスク資産などに移動して経済活動を続ける事になると思われますので、特別な感傷を抱く必要は無く、ある意味では・・・・丁度、"千の風になって"と言う歌の歌詞のようなものだと思ってよいでしょう。

清算・消滅した組織の人材や資金は形を変えて生き続け、次なる経済活動を直接構成する、或いは間接的にサポートする要素となって生き続けるのだと思います。

実は・・・・知っている人が組織から独立して作ったヘッジファンドが、9月末をもってファンドを清算し、組織も解散する事になりました。
 金曜日の夜以降に、当地の複数の人々から会社清算の連絡を貰い、週末の間に色々と考えさせられました。

上記のとおり、一般論としてはこう言う話が数百、数千と言う数で出てくるのだと思ってはいたものの、まさか自分自身の身近なところからこんなに早くそんな話が出てくるとは正直思っても居ませんでした。

そして、やはりそこには、色々な人間模様がありました。

数年前に、ある投資銀行の腕利きのProprietaryチームが独立する形でこのファンドは誕生しました。
これはヘッジファンドの誕生としてはよくある話です。そして業界での知名度も評価も高かったお陰で当初から同業者をも含む多くの投資家から多額の運用資金が集まると言う理想的なスタートを切ったこのヘッジファンドは、初年度には快調な実績を残して順風満帆に思えましたが、スポーツの世界で初年度に大活躍したルーキーが2年目以降スランプに陥るジンクスがあるように、ここのパフォーマンスにも徐々に失速感が出始めて、徐々に運用委託契約を解約して資金を引き上げる投資家も増え始め、ここ数ヶ月はかなり窮屈そうな運営となっていました。
 ここはサブプライムエリア等には投資していないファンドですが、世間はそんな区別はしないでしょうし、組織の建て直しには少し時間がかかりそうだと言う判断で思い切って組織を清算する事にしたのでしょう。

今回の事には、最後まで残っていたスタッフ同士の愛情を感じる部分があり、皆とてもよい人々だったので、彼らの次のステップを心から応援したいと思っています。

あるシニアな方が居ました。彼はずっと組織の状況を知る立場にいた訳ですが、ある時点で組織存続の為にはリストラが必要であると判断し、その時に出来るだけ若い世代が組織に残れるようにと自ら退職願を出されました。
 今年の初めの頃の話でしたが、当時まだ米国にいた私の所までわざわざ事情を説明しに来てくれた彼の話を聞きながら、彼の自分達に付いて来た後進の人々に対する深い愛情に触れてとても複雑な思いを抱いた事を昨日の事のように思い出すことが出来ます。会社の下の地下鉄の駅に繫がる場所にあるスターバックスのコヒーはいつもよりも苦い味がするようでした。

若い連中は、苦しい時代を乗り切って組織を立て直そうという気持ちを持って頑張っていました。そして、その事がここの親分をして今回の決断をさせたのではないかと私は考えています。

組織を解散でもしなければ、この連中は自分の元を去らずに頑張り続ける可能性が高いが、諸般の状況から組織の建て直しには時間が掛かると判断せざるを得ず、給与などの処遇面で充分に報いてあげられないという気持ちに加えて、今後同様の判断をする同業者が増えれば再就職先を求める人々の競争が激しくなるので、早い段階で決断するべきではないかと言う判断があったのではないかと思うのです。

この組織は、上も下もそういう人達でした。

Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.
I am in a thousand winds that blow,
I am the softly falling snow.
I am the gentle showers of rain,
I am the fields of ripening grain.
I am in the morning hush,
I am in the graceful rush
Of beautiful birds in circling flight,
I am the starshine of the night.
I am in the flowers that bloom,
I am in a quiet room.
I am in the birds that sing,
I am in each lovely thing.
Do not stand at my grave and cry,
I am not there. I do not die.

これが確認されている"千の風になって"という歌の原型です。一部で2001年9月の同時多発テロに関係する歌だと勘違いされていますが、これはとても古い歌で、Mary Fryeという米国女性が1932年に母親の他界を偲んで作ったものだと言う説が有力だそうです。
 今回の彼らの挑戦と撤退もこの歌の通りだと私は思います。

私は、この場を借りて、心から彼らの挑戦に敬意と賞賛と拍手を送ります。そして今回の組織の解散を彼らが、或いは彼らの試みが失敗した結果なのだとは必ずしも思いません。少なくとも彼らもそこから多くの物を得たと思うし、我々も彼らから多くを学ぶ事が出来たわけです。

我々もそういう気持ちで大きな挑戦をしたいものです。