何年も前にドイツがパキスタンへの技術支援でデリバティブ取引の基礎を伝授する事にしてセミナーを開きました。オプション取引に焦点を当てた非常に重要なプロジェクトでしたので、双方の国家元首自らが音頭を取って積極的な参加を呼びかけていました。以上、まさにコールとブットのお話でした。
今後はこんなくだらない駄洒落は、あまりにも不謹慎で使えなくなってしまいました。
パキスタンの反政府民主運動のシンボル的な存在であったブット元首相が自爆テロにより暗殺されてしまいました。情報が交錯していますが、現時点ではアルカイーダの関与も濃厚と言う事らしく、いずれにしてもイスラム過激派の犯行と思われますが、ムシャラフ政権もそのようなリスクを承知で十分な警備を敷かずに事実上彼女を見殺しにした可能性が高いという事のようです。
パキスタン辺境地には事実上の無法治地帯があり、アルカイーダなどの活動拠点になっているという指摘がありますが、一応は米国の同胞として彼らと対立関係にあるムシャラフ現政権と民主化を求める反政府対立勢力とこのイスラム過激派は利害と言う意味で複雑な三角関係にあったようです。イスラム過激派としてもかの国が民主化の道を歩んでインドのような経済成長でも始めてしまう事は大きなリスクだったということかもしれません。
多くのメディアが今後の展開について潜在的なリスクの大きさを指摘する専門家の意見を伝えていますが、辺境地にテロ組織の巣食うパキスタンが核保有国である事、国境を接する同じく核保有国のインドと根深い対立関係にある事などを考えれば全く正しい指摘だと思います。
胡散臭いと思いながらもムシャラフ政権を米国が支援し続けている背景もかの国周辺にまさに世界平和や人類の存亡そのものを危機に晒しかねないくらいの脆弱性があることを認識しているからなのでしょう。
この国周辺がおかしくなるようだと中国と共に世界経済を牽引するインド経済への投資も鈍る可能性がありますし、世界経済、そもそも世界平和に対する影響は大でしょう。
オプションのプットがダウンサイドリスクをヘッジするものであるように、ブット女史暗殺後の世界のダウンサイドリスクは増大していると言えましょう。
世の中は我々が思う(望む)ほどには平和では無いということも重要なポイントになりそうですね。
それにしてもブット女史は、何故こうなるリスクを承知で帰国したのか・・・・かつてほぼ確実に暗殺されると言われながらフィリピンに戻ったアキノ氏などとも共通する何かがあるような気がします。
志し半ばで亡命生活という隠遁状態にあった人間が不名誉な安定よりも名誉ある終結を求めると言うのは真田信繁(幸村)あたりにも通じるのですが、運命というものにも思いを馳せてしまうような悲劇だったと思っています。
Her destiny may have run its course. 彼女は運命を全うし、前向きな動きが続いていくものと信じたいものです。