所与の材料の多くから判断して2008年はとても重要な年となりそうだと確信していますが、複雑に絡み合うグローバルな金融市場の中で各市場がどのように振舞い、影響し合うかを予想することはとても楽しく、且つ困難な作業だと言えるでしょう。
Lighthouseとしては、自分なりに頭の中を整理する作業にあわせて2008年度を展望したいくつかの着眼点から世の中に光を当ててみようと思います。今回は手始めにLiquidity, 流動性というものを考えてみたいと思います。
年度末越えの資金繰り需要とそれに対応する中央銀行の資金供給というのは12月相場の大きな注目材料の一つでした。8月以降クレジット問題に大きく揺さぶられた米国、欧州、英国など主要経済圏では中銀等金融当局が細心の注意を払って潤沢な資金供給を断行して円滑な年越えを演出しています。
日本では文字通りの年度超え(12月→1月)と会計年度越え(3月→4月)という二重構造があり、不便なだけだと思ったこともありますが資金繰り圧力のイベントリスクの分散という意味では中々味のあるシステムなのではないかと再評価してしまいました。
ところで、この年末越えの資金供給の仕組みと規模ですが、諸般の事情から上記の通り殆どの主要経済圏において供給規模が大幅に拡大される一方で、米ドルについてのみ特別な国際協調による流動性供給スキームが発表されて市場を騒がせました。
具体的には12月12日に米国、欧州、スイス、英国、カナダの五カ国による緊急声明で短期資金の入札方式による大量供給スキームが発表されましたがそのうちの米国、欧州、スイスは自国通貨に加えて米ドルを供給すると言う内容だったのです。
米国が400億ドル、欧州が200億ドル×2回、スイスが40億ドル(欧州とスイスは米国からドル調達)、英国が113.5億ポンド、カナダが30億カナダドルという凄い規模でしたが、世界中の経済活動における年度越え資金需要の規模的な大きさと同時に米国外での米ドル需要という物を再認識させられた人々も多かったようです。
実際に12月の為替相場は、大方の予想に反して米ドルが上昇する展開が目立ってきましたが上記のような特別な米ドル供給スキームが無ければより大規模な為替市場での米ドル調達(米ドル上昇)と年度越え先物市場での出し圧力から市場が歪み(フォワードが左にずれて)金利が上昇するという混乱が続いていた事は間違いないでしょう。
白状すれば私自身もその一人なのですが、米国にいた時に何度も聞いていながら半信半疑だった大手マクロファンドの長老による"米国経済が減速する時はドル高"という指摘を思い出しました。
最後の部分は別稿で考察したいと思いますが、2008年もクレジット危機の動向が大きな材料となる事が確実な中で、Liquidity, 流動性と言う切り口からも様々なシナリオが描ける事が分かります。
市場動向はまさに流動的なのです。