2007年12月30日日曜日

Seed for thought2 : Volatility

Volatility という言葉ほど色々な意味がごちゃ混ぜになって使用されている言葉もあまり無いのかもしれません。実際に色々な概念が全てこのVolatilityという言葉で表現されるので受け手のほうで判断する必要があります。

オプション市場で建値されるImplied Volatilityは将来の予想変動, 既に実現している過去の値動きの大きさを数値化したものが Realised Volatility, Historical Volatilityと言われるものです。
 当然ですが過去の値動きは歴史であって書き換えることは出来ませんので計算間違いをしない限りにおいて同じ答えが出るわけですが、将来を予想するImplied Volatilityは予想の数だけ違う水準がある筈で、市場に出ている他人の予想が甘いと思えばオプションを買い、大きな変動を予想しすぎていると思えばオプションを売るという行為が日々行われています。これはプットやコールという上がるか下がるかの方向(Direction)の勝負ではなく、どのくらい変動するかと言う予想Volatility の水準を取引するものでVolatilityトレード等といわれますが銀行のオプションデスクや世間のデリバティブハウスなどはこうして顧客向けにオプションの値付けをしながら他人の作るプライスを値踏みしては叩き合っているわけです。

ところで・・・・これらの数値の最大の欠点は、Volatilityという名前であるにも関わらずそれらが市場がどのくらいVolatileかという状態を必ずしも表していないと言うことです。
 例えば、毎日市場が上下に値幅を拡大しながら乱高下を繰り返しながらも終値だけは同水準で推移したとすればHistorical Volatilityはどんどん低下しますし、Implied Volatilityも現状維持がいいところでしょう。或いは短期ゾーンが上昇して長期ゾーンは下落すると言う痛み分けとなる可能性も高いです。

以上のことはオプションをある程度以上専門にやっている人達には常識でも金融市場参加者一般には認知されていない事実です。例えば実際にドル円が円安ドル高方向に3円位足早に上昇したとしてもオプション市場のVolatilityは上昇しませんが、市場参加者の過半数はVolatilityが上がっていると錯覚します。実際にはSmileカーブという非対称性の呪縛によりオプション市場のImplied Volatilityは、円高ドル安方向に1円動いた方が円安ドル高方向に3円動いた時よりも断然上昇するのですが、ここでは深入りせずに再度Volalityは市場のVolatile度合いを表していないと言う事実を強調しておきます。

そこで一部のCTAやファンド勢が「そんなの関係ね~」というノリで重要視しているのが、ATRと言うものです。これは当初は"Average Trading Range"の事だった筈ですが、最近では"Average True Range" という表記も目にするようになりました。Volatilityよりも真実を表していると言う含みでもあるのでしょうか。
 これは基本的には日々の値幅(最高値ー最安値)を記録して直近の一定期間分の平均値幅を計算したものです。期間設定や平均の種類(単純平均か直近データにウェイトを付けるかなど)で流派がありますがこちらのデータを重視する勢力も増えてきていることは間違いありません。

そして・・・このデータを見ると明らかな傾向として8月以降はATRが上昇傾向を維持しており、水準も年度前半比ほぼ倍増している事が分かるのですが、これはVolatilityの推移からは読み取れないトレンドであるといえます。
2007年度は金融市場の振幅幅の拡大傾向を維持しながら2008年度にバトンを渡そうとしているのです。

我々が乗り出そうとしている海は結構波が高く流れも速いようですね。