2010年4月25日日曜日

The last man standing?

今年のテーマの一つと考えられているのがソブリンリスクという物ですが、ほんの少し前までは世界中の政府の負債(Sovereign Debtを集めたグローバルソブリンという種類の投資信託は飛ぶように売れていました。

そうして世界中で多くの個人投資家までがSovereign Debtを保有するようになったところで意外にも欧州圏のギリシャを含むPIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)から政府の借金である財政赤字の問題が噴出した訳で、ここまでの流れはサブプライム証券を個人レベルまで含む世界中の投資家が購入したところで金融危機が発生した流れと酷似していないでしょうか?

となると、今現在圧倒的に売れている投資信託も数年後には危なくなっているのでしょうか? ブラジルをスターとした新興国の株や債券を組み込んだ投信が今の売れ筋ということになりますが・・・

さて、ギリシャ問題で浮き彫りになったソブリンリスクですが、この議論の都度圧倒的な頻度で引き合いに出され続け、そのせいか随分と弱気な相場観が世界中に幅広く共有されるに至ったものと言えば?

そう、日本円ですね。

例えば、我々はほぼ毎日こういう資料をどこかで見かけるわけです。

日本の貿易収支

2008年の金融危機以降大幅に悪化。対中国などが好調で足元は改善しているがピークアウトは間違いなし?

日本の財政収支

どうするのあなた・・・・と言う状況。

それでも頑張る日本円・・・という相場が続いていましたが、やはりドル円で言えば95円超え→次は100円回復という相場観は海外勢を中心に非常に根強いものがあります。

USDJPY Weekly : 右下がりの抵抗線を突破?

と言う事なのですが、この今週もドル円の上昇を見込む向きが圧倒的な中でその正反対のViewを提示している老舗の集団があって個人的にも気になっています。

ここは、業界の老舗の一つなのですが元はチャートやサイクル理論で通貨の動向を予想する会社だったのですが、国際的に事業を展開する際の為替ヘッジの参考に同社の情報を利用していた企業の中から同社に為替ヘッジそのものを丸投げするところが出てきたことから今で言うところのカレンシーオバーレイというビジネスの草分けとなったという歴史を持つ会社です。その後通貨というものがヘッジツールではなく独立した一つのアセットであるという認識に昇格した流れの中で同社の本業であった市場予測は事業規模からすると副業となってしまい、顧客から集めた資産運用の方が本業のようになってしまっているのですが、自分達の原点や初心を忘れないこと、予想を公表することで真剣度が維持されるというトップの方針で市場予想業務も継続しているという話には感心した覚えがあります。

今この会社は、滅多に一致しないものの一致した場合はかなりの精度と強さを示すと言う同社独自のドル円とあらゆるクロス円のサイクルのトップアウトのタイミングの一致を理由に今週から円高への反転が始まると言う予想を出しています。

ちょっと気になっているので紹介しておきます。

Stay tuned.

Taking all in good part.

先週も金融市場はギリシャネタに振り回されました。かつて文明の中心であったギリシャが今では金融市場混乱の中心となっていると言うのは物凄いことですね。  

先週は遂にそのギリシャが、財政赤字の下方修正→格付け機関による格下げ→債券下落、金利急騰というプロセスを経て遂にEU及びIMFに対して正式に支援を要請しました。既に国家がサブプライム状態とみなされていたギリシャに対して市場(投資家)は莫大な利払いを要求し始めていましたが流石に2年ゾーンでも10%水準という金利を要求されるにいたり、同国政府も腹をくくったと言うところでしょうか。とにかく最後の膿でも噴出すのかと言うイメージでしたがEurostatの発表でギリシャの2009年の財政赤字/GDP比率はこれまでの12.9%から2008年度からほぼ倍増となる13.6%に修正され、格付機関Moodysが同国の信用格付けをA3に引き下げるという動きがありました。このA3はジャンクボンドのたった4段階上という厳しい評価と言うことになります。

金融市場は金曜日のアジア市場で欧州売りのClimaxが訪れて、ここEURは対ドルでほぼ1年振りの安値となる1.32割れ刻寸前まで売り込まれ、対AUDでは史上最安値を更新する程の売られ方をしますが、ギリシャの正式な支援要請の後は材料出尽くしの一服感から豪快な巻き戻しにあって1.34水準まで急騰して終了しましています。

EUR Daily

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この日次チャートでもわかる通り、EURは先々週後半から大きく下落しており最後の一本(=先週金曜日)で下方に長い下ヒゲを出して大きな陽線引けを実現しています。この下ヒゲがSelling Climaxを示唆しているのは明らかですし、週末に行われたG7+G20でも世界経済の回復振りは予想以上に早く、力強いという声明が採択されているので今週の前半は更なる反発が見込まれるのではないでしょうか。

EURAUD Daily : (こちらは史上最安値を更新した後に陽線引け)

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同様に欧州の一服感とG7+G20の結果を好感しそうなのが株式市場などのリスクアセット(景気敏感資産)ですが、特に株式市場に関しては高所恐怖症との戦いという様相すら呈し始めています。


好決算に沸く米株市場ではダウ平均が過去12営業日で11日陽線、過去11週間では10週間陽線という賑わいになっています。これは凄いですね。

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こうなると為替市場ではお約束の資源国通貨買いとクロス円の集団上昇という現象が起こりますが、資源国通貨に死角無しという印象が強まりますね。

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ドル円は週末に94円台まで上昇し、引けでは93円台となっていますが週明けには94円台を回復し来週は95円に再挑戦する展開となる可能性があります。

USDJPY Daily

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ドル円も先週5営業日のうちで4営業日で上昇ですね。

市場はギリシャ問題、GS訴追問題などの諸展開を全て強気に(好意的に?)解釈、消化してきていると言うことです。個人的には違和感を感じてしまいますが、とにかくこれは凄いことですね。

2010年4月19日月曜日

Even Gold fails to shine.


さて・・・今回のSECの動きについてですが、週末時点では憶測も含めて評価が二分している状態だと思います。今後の展開次第でより大きな材料となる可能性もあるので注意が必要である事は間違いないでしょう。


複雑な話ですが、現時点で伝えられている事を要約すると以下のようになると思います。


  • SECGoldman Sachs(以下GSPaulson&Co(HF)を提訴した。

  • GSの容疑は自社が組成して販売した(サブプライム)証券に関する重大な事実の説明を投資家に対して行わなかった事。

  • Paulson&Co販売する商品の組合せの選択過程で関与していたが、自身が選択してGS経由で投資家に売り付けていた証券を自身は売り持ちにしていた。

  • GSも自社が世界中の投資家に販売していた商品を売り持ちにしていた。

ここで「売り持ちにしていた」というのはショートポジションを取っていたと言う事です。市場に詳しい人ならそのような仕組み債や組成商品には独立した市場やプライスメーカーがいる訳ではないのにどのようにショートポジションが取れるのかという疑問もあるでしょうが、これは要するに自社が推奨し、販売していた組成商品に関するCDSを購入していたと言うことでしょう。GSなどにCDSを一番大量に売却していたのはAIGであり、この世界最大の保険会社を身代わりにすることで米4大証券の中でGSだけが生き延びたと言う批判を思い出せば話がつながると思います。


被害を蒙った投資家は世界中の年金基金なども含まれる訳ですから事態を重く見た複数の国の政府が独自に調査を命じたと言う情報もあります。

さて、一方のPaulson&Coですが、モーゲージ債のショートで大きな収益を計上したという事以上に実は大変なGoldブルで、名を馳せている存在であり金貨市場でも買占めに近いような動きを取る事もあります。今回の話では同社が一部でもポジションの清算や縮小を迫られる(投資家の解約などで)可能性を嫌気して貴金属市場が売り込まれています。

Gold Daily

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Goldmanの株価は14%下落して株式市場全体を道連れにしていますが、株式市場は高値圏で調整待ちだったこともあってここから暫く下落する展開となる可能性があり、更に金の下落が商品市場全体の足を引っ張ると、資源国市場や新興国市場への投資も縮小されて投資資本の本国還流から米ドル、円が上昇すると言う流れが出始めています。

今週の市場がこの新たな材料をどのように消化していくのかに注目です。

金曜日に、Goldmanの話で、金が大幅に下落したと言うのは韻を踏んでいると言うのでしょうか??

2010年4月18日日曜日

Filled !!

先週は前週末に欧州内でギリシャ救済案の詳細が固まったことを受けて週明け直後のウェリントン/シドニー市場からユーロが急騰し、結果として前週北米市場の終値と週初の寄付き水準(取引開始値)が大きく乖離する展開となりました。前項でこの状況について書いていますが、このユーロのJump Startは週央に失速し、週末前の金曜日の北米市場の取引で遂に大きく反落して週初のGapを埋めて終了しました。

野球に例えるならユーロは初回にいきなり大量得点をして試合をリードしながら徐々に点差を縮められた挙句に9階の裏にまさかの同点に追いつかれたと言ったところでしょうか。

EURUSD Daily

先週の5本のロウソクのうちの3本が陰線となっている事、最後の2本つまり木曜日と金曜日の陰線が長い事などを考えれば明らかにこのチャートはブル相場のそれではないでしょう。

EURUSD Weekly

週足で見ても陰線が続いた後に実体部分が短い陽線状態のトンボが2匹登場し、先週開始時点では反転上昇の気配が濃厚だった訳ですが、Gapを明けて始まったものが最後にそれを埋めて終わっているために先週部分が前週よりも高い部分で陰線になると言うかなり珍しいチャートになっています。

実はこの動き・・・・ギリシャ問題の再燃というようなシナリオでこうなっている訳ではありません。寧ろ移り気な市場参加者はギリシャネタには食傷気味の連中も多く、むしろ堅調な株価などリスクアセットの上昇に勇気付けられた資源国や新興国への投資を活発化する動きに押されて欧州通貨にもしっかり買いが入り始めていました。

 まさに昨年のGreen Shoots相場再来の入り口まで来たところで一気に株式市場市場や商品市場の調整を引き起こしたのがSEC(米証券取引委員会)によるGoldman Sachs社とPaulson&Co(ヘッジファンド)の提訴という報道でした。サブプライムに絡む詐欺容疑ということなのですが、一部でギリシャネタには新鮮味がなくなったなどと言う声が聞かれ始めた途端にギリシャ懸念どころかサブプライムネタが復活して市場を動かすという予想外の展開となった訳です。

Green ShootsRisk-Onという動きの再燃を告げるようなチャートの窓明けの動きは、サブプライムの亡霊の足音に後退し、チャートの窓もしっかり閉まった(埋まった)というのが先週のドタバタでした。

2010年4月13日火曜日

Gapped !!

週初の東京オープン前にウェリントン/シドニー時間からユーロが急騰し、金曜日の終値の1.3497水準からGAPを開けて高値圏で取引が行われています。

相場は一気に1.37越え寸前までやってから欧州・北米時間には少しずつ下落してきました。次の下落ではこのGapを埋める事が1つのメドとなりますが、場合によっては今から一気に埋めてしまうと言う事もありうるかもしれません。

原因はギリシャ救済の詳細が発表された事ですが、EUIMF合計で450億ユーロ規模の融資を用意し、当初のペナルティ的なハイコストではなく、市場金利よりも低利での融資を行うと言う内容にした事が功を奏しています。週越えで残存していたユーロショートに暴力的なスクィーズが入った格好ですね。

ユーロ反発でドル安かと言うと世の中複雑で、以下はAUDのチャートですが、AUDは対ドルで急落しています。

欧州売り/資源国買い というクロス取引が一気に解消されているということでしょう。

EUR/AUDのクロスです。見事なGap-Upです。

日本語では「窓を開けた」と言うやつですね。市場の風通しが良くなると言いのですが、これで人民元の切り上げでもあれば吹くのは突風となりそうですね。

2010年4月11日日曜日

Can Geitner give an inch and take a mile ?

リーマンショック後の金融危機を上手く乗り切ったと言うことで一時は少なくとも一部で高い評価を受けていたFRBバーナンキ議長とガイトナー財務長官ですが、やがて彼らが救済したWall Streetの金融機関の高額報酬体質が問題となり、そもそもベアスターンズは救済したのにリーマンブラザースは破綻させた彼らの一貫性のない対応こそが危機の一因でもあったと言う批判に晒されるようになってしまいました。
 ワシントンDCには米国中から観光客が集まりますが、観光バスがFRB本部につけると乗客から建物に向かってブーイングが起こると言う光景も見られるようになりました。オバマ政権本体も支持率低下という問題に直面し、事態の打開を図りたいオバマ大統領はバーナンキ議長を再任するかどうかは相当悩んだようです。ホワイトハウス内部では一時脇に追いやられていた感のあるボルカー氏が再び重用されるようになるという変化も見えていますが、それだけにガイトナー財務長官も必死に名誉挽回を図りたいところです。

元々アジア通を自認し、中国語、日本語も話せるガイトナー長官は人民元問題を抱える対中関係を名誉挽回のフィールドと定めて様々な手を打ってきていると思います。中国を初めて為替操作国に認定する可能性が高かった議会宛の為替報告書の発表を3ヵ月延期すると言う決断をして議会から弱腰と批判されていますが、これも先に中国に配慮して貸しを作り、より大きな譲歩を人民元切り上げと言う形で引き出そうと言うガイトナー財務長官として必死の駆け引きの一部なのでしょう。

譲歩してもかえって付け上がるだけだと言う相手のことを、 If you given an inch, he will take a mile(yard). などと言う事がありますが、主語を統一して使用する場合は、小さな譲歩をして大きな成果を得るということになるので日本語で言う「肉を切らせて骨を絶つ」というイメージで使えると思います。

Can Geitner give an inch and take a mile ??

甘いマスクのGeitner氏の起死回生の一発が見られるかどうかに大いに注目です。

因みに彼に近い筋によると、Geitner氏は中国語は交渉レベルにはやや苦しいレベルだそうですが日本語は中国語よりもかなり堪能だと聞きました。日本で活躍する外人タレントの平均ははるかに凌駕しているとの事です。一度聞いてみたいですね。

China Card.

週末の新聞で、中国の貿易統計が単月データとは言え貿易赤字になったという記事を読みながら中国のしたたかさに思わず唸ってしまいました。誤解と批判を恐れずに言えば、中国の経済統計は多少の操作は間違いなく入っているでしょう。中国経済の勢いや潜在力は本物だと思っていますが、発表される数字の”危うさ”や”胡散臭さ”は時として辻褄の合わない状況を招いてしまい、Jim Chanosのような目利きにとってはかつて見破ったEnronの粉飾決算を髣髴とさせるところがあり所謂China Bearと呼ばれる中国経済懐疑派をも生み出しています。
 
確かに中国で自動車販売数が記録を更新し続けている横でガソリン消費量が落ちているなどのデータはおかしいと思うのが普通ですが、それを言ってしまうとインドなども時価会計ではないし、海外投資家に人気の高いベトナムやカンボジアの企業経営者の過半数は時価会計がどういうものかすら知らないと言うレポートも読んだことがあります。(欧米人の書いたものなのでこれもアジアに対する大いなる誤解かもしれませんが・・)

何はともあれ・・・話を戻せば、世界不均衡の根源が過剰消費と過剰貯蓄の発生であり、後者となる黒字国には関税の引き下げや通貨の切り上げ圧力が掛かり続ける訳です。中国に対する人民元の切り上げ圧力が加速度的に高まっている状況下で、単月だろうと貿易赤字じゃないかというカードは結構な効力を持つことでしょう。

先週は英国Financial Times紙や米のWall Street Journal紙なども度々人民元の切り上げ観測をぶち上げてあたかも近い将来の切り上げを既成事実化しようとするかのような動きを見せていましたが、米ガイトナー財務長官もインド訪問の帰路で予定になかった中国訪問もしており、どうやら米中間で何らかの政治的な握りが行われたと言う観測が急上昇しています。

先週後半の急速なポジション調整も今週行われる正式な米中二国間協議で何かが起こると言う思惑に加えて下手したら週末の間にも何かが発表されるのではないかと言う危惧があった事と無関係ではないと思います。会談前に中国が米国への手土産に小幅な人民元の切り上げでも行うと言う可能性は確かにゼロではないと思います。

欧米から5%程度の切り上げを求められている中で、2%~3%の切り上げに留めて置いて、ついでに貿易赤字のデータを添えておけば追加切り上げの圧力は緩和されることになります。
 中国の交渉カードの使い方は実に巧妙で日本の政治家たちも心して学ぶべき点が多々あります。そもそも最近の米国長期金利上昇の大きな要因の一つが中国が米債入札に参加していなかったことなのですが、これで肝を冷やしたガイトナー長官が中国を為替操作国と認定するよう議員団から圧力が掛かっていた為替報告書の発表時期を3ヶ月延期するという判断をしたことも間違いなく、ガイトナー長官はこの件でも米国内では強い批判を浴びています。

最大の米国債保有国として米国を手玉に取る中国のしたたかさ。今週以降の人民元の動向にも目が離せません。

Reversal or Prelude....

海外勢も本邦勢も仕切り直しとなる4月ですが、ここのところ2週連続で金曜日がKey Dateとなっています。第一週はいきなり米雇用統計の発表で振り回されましたが、第二週となる先週は色々な材料や思惑が渦を巻くように相場を翻弄し、金曜日にはポジション調整でちょとした反転相場となりました。まさにFriday Reversalとでも呼ぶべき現象ではないでしょうか。

1 米長期金利

注目の米長期金利ですが、こちらは週央でReversalがありました。個人的には長期金利はまだ上がるんじゃないかと思っていますが、相場の方は少なくとも短期的には反落していると言わざるを得ないでしょう。指標となる10年債利回りは4%に到達した後に好調な入札結果などを背景に3.84%水準まで低下しています。特に10年債の入札はBid-to-Cover ratio3.72の記録的高値となり、ここ数週間は入札不調から価格下落・利回り上昇と言う動きとなっていた米債市場はちょっとしたどんでん返しを演じた格好です。

2 欧州通貨

EURUSD DAILY

先々週の金曜日から先週の水曜日までギリシャ不安の再燃等から4連続陰線となっていたのですが、木曜日に眺めの下ヒゲを出して金曜日には主に海外時間に急騰しました。よく見れば金曜日の高値引けとなる終値が先々週の終値とほぼ横並びとなっており、先週は前半の下落を殆ど金曜日だけで取り返した格好になっています。

 ギリシャ政府が既に決まっていた救済案の内容の変更を求めたり、格付機関のFitchがギリシャを2段階も格下げしたりと言うイベントもあったのですが、やはりそれまでに相当市場にショートポジションが積み上がっていたのでしょうか、金曜日の反発は非常にImpressiveだったと思います。

3 ドル円

 ドル円Weekly

ドル円は週次のチャートです。ご覧の通り、先週はちょっとした陰線ですが、その前の2週間は大きな陽線が連続していました。そしてこの2本の陽線はまさに期末・期初の動きであったと言うことになります。EURのショートポジションと同様に円のショートポジションも相当積み上がっていたと思われるので、先週は円の買い戻しも激しかったと言う事になるのでしょう。

このように先週はあちこちでちょっとした反転現象が見られたのですが、一方で米株市場などのように反転か、少なくとも調整局面に入りそうで中々入らないと言う市場もいくつかあります。大雑把に言うと、投資家の動きが中心となる市場にこういう傾向があり、トレーダーの動きの方が優勢と考えられる市場では機動的なポジション縮小の動きから所謂「行って来い」的な値動きが出易かったと言う事になるのではないでしょうか。

一般にこういう動きが出やすい時にはリーマンショック直後のような一寸先は闇と言う状況の時や、ある事が起きることが予測されているものの市場の反応が全く読めないという状況の時があります。今回は明らかに後者であろうと思いますが、その発生が予期される出来事とは人民元関連でしょう。中国の通貨政策に関する何らかの動きが間も無く発表されると言う思惑は金融市場で急上昇しているところです。

2010年4月4日日曜日

Are we at it again?

それにしても足元のGreen Shoots相場の再来を思わせるようなアセット市場の上昇は実際にどれほどの定着力、持続力があるのでしょうか?

2009年の4月から12月あたりまでの元祖Green Shoots相場に関してはそもそも発射台となるアセット価格が3月まで続いたLehmanショック相場のために極端に売り込まれていたと言う前段がありました。株価にしてもValue投資家と言われる人達が目をつぶってでも大規模に参入する水準まで圧縮されていたと言うことです。

 

一方で現状の株価は極めて堅調ですが、価格水準的には1年前と比較して全く割安感はなく、Value投資家が買い仕込んでいると言う動きもなければ出来高も奇妙に少なく、むしろ価格上昇時に出来高は減少し、価格下落時に出来高が上昇するという傾向すらあります。

米国のオルタナティブとなるはずだった欧州は大きく転落した一方で成長の担い手としての期待は新興国が一手に引き受ける格好になっています。

以下はCAD(カナダドル)AUD(豪ドル)、NZD(ニュージーランドドル)、BRL(ブラジルレアル)のチャートですが、物凄い高相関です。

NZDと株価を重ねてみても、極めて相関が高いことが明白です。

やっぱりいつか来た道にしか見えませんね・・・

High Correlation  Low Volatility 

Investors Paradise  Traders Agony

そんな図式が再現しつつあるのでしょうか。

そんなシナリオの視角となるのは以下の点などではないかと思います。

中国の人民元の大幅切り上げ。

欧州混乱拡大による世界景気の失速。

米金利の持続的上昇。

中東戦争やアフガンの泥沼化。

株式市場の大幅調整。

実際に何らかのリスクシナリオが台頭する時には現時点では予想もつかなかったというような新たな材料が市場を蹂躙することになる可能性が高いのですが、強いて現時点で考察するならばこのようなリスクが考えられると思います。

個人的には今の市場参加者の過半数が共有し始めているであろうユーフォリア的なセンチメントには少々疑問を感じているものの足元の市場の動きはしっかりと捕捉したいというところです。オプションなども絡めて下値リスクをある程度限定しながら新興国や中国、アジア、そして商品市場を注意深くロング回転していくイメージで臨む感じですね。

このシナリオはダラダラ続くか、どこかで大コケにコケる事になるかだと思いますが、後者の時にはアセット間の相関が崩れてVolatilityが急上昇するはずなので楽観ムードがあまりにも膨張した時にはしっかりとオプションを買っておくのがよさそうです。

今年も夏から秋にそういう展開もありかと想定していますが、春先のユーフォリアにはそれなりに参戦しようと思う今日この頃です。

A spring ghost of JPY carry trade.

先週は2010年の第一四半期から第二四半期への移行に加えて本邦勢は2009会計年度から2010会計年度への移行と言う大きな節目が入る週でした。また週末には毎月初のお祭りとも言える米雇用統計(3月分)の発表もありましたのでかなりの重要週であったと言えます。

 

先ずは四半期や本邦会計年度の節目の影響に関してですが、正直な実感としては思ったほど(期待したほどと言ってもいいのですが・・)特別なフローは出なかったような気がします。利益確定売りが警戒された株式市場は極めて足腰の強い動きを見せましたし、特に本邦勢によるRepatriation(本国送金)による円高の可能性も指摘されていた為替市場でも寧ろ目立つのは円売りのフローだったような気がします。

また金曜日に発表された3月の米雇用統計は、失業率が9.7%で横這い、雇用者数が前月比162,000人増となりました。国勢調査(Census 2010)実施に伴う臨時雇用や記録的大雪の影響を受けた前月データの反動といった要素が影響していることは留意しておく必要がありますが市場は素直に強い内容と受け止めた格好になっています。

今週からの動きに影響を与えるのに十分なモメンタムが感じられる動きが随所に出ていますが、特に円安の動きには注目していく必要があるでしょう。依然として一部に根強い円高論を振り切る格好で円は最弱通貨の趣を醸し出し始めていますが、チャートで見ればいつか来た道、つまりは2007年以前の円安トレンドの復活前夜を思わせる勢いすら感じます。

ドル円Daily

ドル円の日次チャートはご覧の通り。先週は5営業日全てで陽線で、過去2週間でも82敗です。

ドル円Weekly

ドル円の週次チャートで見ても過去2週間で見事なBOX圏の上抜けを達成しており、丁度その前の2週間がInside barという以前このBLOGでも述べた実体部分の短いトンボの形状となっておりドル円上昇のセットアップ期間だった事がわかります。

二つほどクロス円のチャートも覗いてみましょう。

GBPDaily

AUDDaily

GBP円、AUD円ともにこの2週間の10営業日で9勝1敗という安定度で、レベル的にも上に抜けていてます。

ところである統計によれば、戦後米国の月別雇用者数データが今回のようにマイナスからプラスに転じたケースが7回あるそうで、その7回全てでその後株式市場の強気トレンドが続いたそうです。規模も中々のもので、ブル相場の平均期間が3年、平均のリターンが30%という統計データがあるそうです。

 

株式市場も既に極めて堅調な推移をしている訳ですが、今回の雇用統計が触媒となって更なるブルトレンドを形成すると言う事になるのでしょうか? そうなれば投資家のリスク意欲の高まりから低金利の円で調達した資金を高金利資産で運用する所謂円キャリートレードと呼ばれてきた手法が大きく息を吹き返す可能性もありそうです。

金融市場における円の立ち居地が大きく変わる可能性が出てきたと言う事は要注意ですね。