2010年5月17日月曜日

Another Front of Contagion or Spreading.

Contagion(感染)と言う言葉がメディアに踊るようになって大分経ちますが、ギリシャ問題が欧州内で他のPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペイン)諸国に感染・拡大していくリスク以外にももう一つのContagionリスクがあります。

SECの訴追という民事の話から連邦検察の刑事犯罪捜査まで始まって先行きが注目されるGoldmanの事件ですが、驚いた事にMorgan Stanleyにまで拡大しています。この問題に対する動きは結構複雑になってきておりGoldmanに対する捜査自体が英国など他国にも拡大している動きがある中で米国当局のWall Street追求の動きがMorgan Stanleyに拡大してきたと言う動きです。

Goldmanに関しては国策捜査ではないかと思われる節も確かにあり同社を擁護する動きは金融界にも少なくありません。実際にAbacusという一番問題にされているCDOはサブプライム証券の集合体をインデックス化してその値動きを反映させた物で売り手と買い手の両サイドがいないと取引が成立しません。つまり買い手は反対の相場観を持つ売り手の存在を認識しているはずだと言う事になります。
 一方でMorgan Stanleyですが、こちらが問題にされているのは複数のサブプライム証券を束ねて組成して投資家に売却したCDOであり、Goldmanの商品とは微妙に違う内容になっています。判り難いのですがGoldmanの商品がSynthesized CDOで、Morgan Stanleyの商品はTangible CDOと言う事になります。Goldmanはインデックス、Morgan Stanleyは現物のCDOと言うイメージです。そしてある種の分析によれば後者の方が相当悪質ではないかと言う事になるようです。

法的なことはよく判りませんので深入りは避けますが、E-mailなどの内部の書類によって両社とも顧客に売却した自社商品を紙屑だのゴミだのと呼んでいた事は購入した投資家が損失を出す事を想定していたと言われても仕方がない部分はありそうです。またAbacusに関しては同情も多いGoldmanですが最近はTimberwolfという別の商品に関する扱いが取り上げられています。自社が保有する同証券の価格が将来値下がりしてしまうと言う事を予想して自社在庫を投資家に売り付けて逃げようとしたという疑惑が持たれているのです。またMorgan Stanleyは顧客に販売した懸案のCDOに過去の大統領の名前を付していたのですが(james Buchanan, Andrew Jackson),社内ではこれらの商品を"Dead Presidents"と言及していた事が判明しています。繰り返しますが法的な判断は出来ませんが少なくとも道義的な部分で、これでは確かに投資家が怒っても反論は難しいでしょうね。

それにしてもこれらの商品名は面白いですね。Abacusはソロバンという意味でしょうが、後ろ暗いことがあって結果的に当局やメディアにその部分を”暴かす”事になっては洒落になりません。
 またTimberwolfというのは平地ではなく森林地帯に生息するオオカミということですが、米国のシークレットサービスのコードネームでは、Timberwolfとは前大統領のGeorge W.Bush氏のことなのだそうです。不名誉なネーミングもContagionしていたと言うところでしょうか。

今後具体化する金融規制法案の内容にも影響を与える可能性がある話です。