5月29日(土)の日経夕刊一面に「世界の市場5月大荒れ」という記事が出ていました。28日(金)がアジアの主要市場の休日で、31日(月)がロンドン、NY市場が休場である事を考えれば実質先週までで5月は終了したようなものでしょうから5月を総括するタイミングとしても悪くなかったと思います。
記事の要点は、以下のように纏める事が出来るでしょう。
1 引き金はギリシャの債務危機。
2 リスク懸念が投資マネーの広範囲なリスク回避となり影響は世界中に拡大。
3 投資マネーの逃避先は安全資産とされる債券市場の他には金など。
4 ダウは5月に871ドル(7.9%)の下落。
5 日経平均も5月はリーマンショック直後以来の高い下落率となりそう。
6 日米の株価下落は震源地の欧州以上。
7 為替市場では5月は対円で主要通貨が下落。
事実とデータの羅列と言う感じですがよく整理された記事だったと思います。私は個人的にも金などに興味を持っていますが、私が得ている話しで補足しておくと、欧州の金貨、銀貨の販売は爆発的に伸びているようで欧州におけるコイン販売の中心であるオーストリアの金貨・銀貨販売業界のデータによると4月26日から5月初旬にかけてのほんの1週間程度の間の金貨の売り上げは今年の第一四半期(1月~3月)の販売高を上回ってしまったそうです。
しかも注文の99%以上は欧州域内からのものでアジアや米国などからの注文は1%にも満たないとの事ですので欧州の富裕層などが債券や株式から一斉に金貨などに流れた事が判ります。
またこれは先週のニュースですがギリシャ国内のい金貨市場では金貨の価格が急騰中で、なんとオンス換算にすればユニット価格が$1700レベルになるほどに高騰してしまっているようです。これは供給が枯渇している事に他なりませんが、とにかく今は市場で1オンスあたり$1200程度で購入しておいてギリシャ国内で販売すれば実に$500もの裁定利益が生じる事になります。流通ルートなどを持っているならまさに濡れ手に粟の収益が得られそうですね。
元々欧州ではコイン販売や収集が盛んでドイツなどでも金貨・銀貨は一部では自動販売機で購入できるほどです。希少価値のある製造年度や製造元のものであれば所謂コレクターズ・バリューというプレミアムも付くので金価格が下がっても金貨の価格は下がらない事すらあるので財産の一部をこういう形で保有するのは当たり前と言う風潮もあるようです。
また日米の株価下落が震源地の欧州株の下落率を上回った事については、やはり欧州への投資を損切りして資金を引き上げたことをカバーする益出しと言われる行為によるところが大きいと思います。所謂損失補てんといっても良いでしょう。特に日本株は為替の円高との併せ技で海外投資家にとっては自国通貨換算ベースで結構利が乗っていたはずなので損失補てん、ダメージコントロールの為の益出し行為の格好のターゲットとなった事は確かでしょう。
またもう少し長期的な目線では、今後のギリシャを含めた各国の財政再建努力による債務リストラなどの動きが結果的には企業や家計のバランスシート悪化に直結することに市場が気付き始めた為ではないかと言う鋭い指摘もあります。このあたりは引き続き掘り下げていくべきテーマなのではないでしょうか。ソブリンリスクというポテンシャルなリスクがあるという認識は共有されていましたが、こんなに早く、このような形で現実のものとなって我々に対峙する事になるとは誰も思っていなかったのではないでしょうか。そしてそれが短期的、中長期的に齎すであろう影響なども我々は知っている積りであったほどには知らなかったと言うことなのではないでしょうか。