Dennis Gartmanと言えば投資業界の古株のご意見番といったところかと思いますが、彼が繰り返し唱えるマントラの一つに以下のような物があります。
- ブル材料が出ても上昇しないのはベアマーケット。
- ベア材料が出ても下落しないのはブルマーケット。
この重要なマントラをベースに今の市場を見るとやはりユーロを筆頭に非常に気になる動きをしているものがあります。
1 ユーロ
これは重い。文句なく重いですね。先週の水曜日(4/28)に対ドルで1.3111まで下落したところで市場のポジションが大幅にユーロショートに傾いた事もあり、その後のギリシャの正式な支援要請やEU内の結束確認コメント、更にはより大口の欧州域内融資の実行計画の詳細まで発表されたことで一旦はショートカバーが入りますが1.34台すらつけられずに反落しています。
ギリシャの負債総額はドル換算で$236billionですが、ポルトガルが$286billionでやや大きいと言う程度ですので市場の投機筋は次のターゲットを負債総額が$1.1triilion規模のスペインに絞っている感じで、市場には同国に関する様々な怪情報なども流布され始めているようです。因みにイタリアの負債総額が$1.4triilionとの事でですのでこちらに飛び火しても話が大きくなりますね。
以下の如くユーロの下落は4週目に入っており、既に1年振り安値圏となる1.30台前半ですので今週は1.30割れにトライする事になりそうです。
ユーロドルWeekly
2 AUD
本日はRBA(オーストラリア中銀)の政策決定会合があり、0.25%の追加利上げがありました。これで過剰流動性吸収路線、所謂出口政策の先頭を走る同国の政策金利は4.25%にまで復活しています。
ところで、今回の利上げ発表後のAUDですが、売り込まれています。確かに利上げ後の声明文では今回の利上げを持って金利水準は適正レベルに近づいたという一旦打ち止めと解釈出来る文言が入っており、これがAUD売りの原因であると言う説明がなされていますが、これまでは金利据え置きでも買われて来た通貨です。曲がりなりにも利上げをした直後に売られると言うのはこれまでとは違っていますね。
AUDUSD Daily( 今日の陰線が大きいですね)
3 GOLD
ユーロや豪ドルは強気の材料にも弱気な反応をしていると言う事例でしたが、その反対がGOLDです。これはここのところ世の中全体が悪いニュースに反応している所謂RISK回避的な動きをしている時にも下落する他の資産や通貨を尻目に独り勝ち状態を続けているのです。今日は小幅に調整していますがヘルシーな調整の域を出ません。
GOLD Daily
今週の多くの投資レポートにはこのGOLDの安定的独り勝ち状態を指摘して貴金属を保有していないならば絶対に買っておけという推奨が載っています。あらゆる押し目を利用して持ち高を増やすべきだという書きっぷりです。
豪州も引き締め一服で、今日はNYベースのコンサルタント会社が欧州の混乱や中国の今年三度目となる預金準備率引き上げによりカナダの利上げもお預けだろうと言う予想を書いているようです。結局世界中で通貨供給量の増加基調が維持されるであれば、GOLDなど貴金属は究極のインフレヘッジとして選好され続けるというシナリオはありですね。
Positiveな材料にNegativeに反応する、Negativeな材料にPositiveに反応するというGartman流の定義によるトレンド判定では金融市場は全体的にSWINGしながらも依然としてConfidenceが後退してVolatilityが上昇しやすいトレンドを維持しているという絵が見えてくるようです。金融市場は2007年にサブプライム問題、2008年にはリーマンショックという衝撃波に洗われましたが2009年にはGreen Shoots相場を実現して資産市場が回復し、その後も基調はRisk-onというConfidenceトレンドを維持してきました。2010年には再びFearがConfidenceを蹂躙する展開があるのでしょうか?