先週は横綱級の経済指標こそ無かったものの、発表された関脇・大関クラスの経済指標が大きく景気減速を示す内容だった事を嫌気してリスク資産から安全資産への資金移動が加速しました。この資金は主に究極の安全資産と言う位置付けの米国債に雪崩れ込んだ為に米国市場内では米債が上昇(利回り低下)、米株は下落、米ドルは上昇となっています。以下は米国30年債の価格チャートですがこれはもう債券バブルと言うしかない状況になってきました。
米国の失速は素直にドル売りになる時と先週のようにドル買いになるケースがありますが、前者は世界経済は好調で米国は失速という環境下で起こり易く、後者は米国以外の地域も悪いと言うケースで起こります。先週は後者のパターンになっていますが、これはストレステスト消化後に強味を見せていた欧州経済に息切れが目立ってきた事やECBの中でもタカ派として知られているWeber理事から かなり弱気な発言が相次ぎ、ECBが緩和措置を長期間継続せざるを得ないという見通しが示された事が大きいでしょう。この人は実際にTrichet総裁の後任となるECB総裁レースの筆頭候補ですので影響も大きかったという事でしょう。
全体的には、欧州のストレステストの消化を境に一時は楽観ムードが先行していた金融市場において、徐々に楽観ムードが後退し先週辺りから明確な悲観ムードも再台頭してきている状況です。
ストレステスト後は急速に縮小していた欧州内の周辺国とドイツ国債のスプレッドも最近は再び拡大傾向が鮮明になってきました。 先週は特に木曜日の北米時間に発表された先週の米失業保険新規申請者数 が久し振りに500千人を越え、フィラデルフィア連銀景況感指数も2009年7月以来となるー7.7%という予想外の悪化となりました。これで米株市場は急落、米国への資金還流から米ドルは上昇と言う流れになっています。
また資源国は堅調かと言うとカナダのCPIが予想外に弱かった事が影響してしまい、米国や欧州から資源国に資金が移動する所謂Risk-onというような潮流を作る事は出来ませんでした。為替市場でもユーロとカナダドルが最弱通貨を競い合う展開の中でドルと円が上昇すると言う流れが定着していきました。
1.1875から1.3336まで急反発した後は反落傾向だったユーロはテクニカル的にもサポートを割り込んでおり、今後は下げ足を早める可能性が高そうです。
15年振りの水準を達成している円高については別項で考察しましょう。