今週は結局大変な相場となりました。
この狂乱の大相場は世界金融市場の潮流を大きく転換させる動きの始まりを告げるものである可能性もあり、別稿で自分なりの分析もしてみたいと思います。
ここでは今週ずっと感じてきた事を書きます。
今週、特に懸念どおりXデーとなった水曜日以降に最も多く受けた質問や照会は以下のようなものでした。
①日本人はここからどうするか
②日本人はどうなっているのか
③日本の為替証拠金取引の人達はどこで損切りするのか(したのか)
Fear and Greed
元々恐怖と欲望に支配される金融市場ですが、今週のような緊急事態的な暴風雨の中では普段は理性的な人々までが完全に恐怖と欲望をむき出しにした状態となります。
"臨戦態勢"と言っても良いのでしょうが、むしろHunam Natureの負の部分を丸出しにしたような印象を受ける事が殆どで今週の金融市場はまさに戦場と化していました。
米国のSubprime問題が表面化したあたりから主な関心は最後に傷付くのは誰かという議論だったように思いますが、世界中の投資家が非常事態を察して手元に資金を取り戻すべく出口に殺到し始めてからはこの怪我人探し一色になったように感じます。
しかもそれは怪我人を探して救助しようと言うものではなく、怪我人を探してとどめを刺そうというくらいの後ろ向きなものであり、自分も傷付いている怪我人たちがより深手を負った人達を探して石を投げようとするというような、まさに阿鼻叫喚ともいえる状況となりました。
ここで私には1つのジレンマが生じました。
短期的な視野と利益のみを考えれば、一番楽なのは私も狂気に参加してしまえばよい事は明白でした。例えば実際に多くの海外ヘッジファンドからコンタクトがありました。日本人がどれだけ困っているか、泣き叫んでいるかを聞く為にです。彼らの殆どは血の匂いを嗅ぎながら日本の輸出企業、機関投資家、個人証拠金取引の投資家達などが今回の円の急騰でどれだけ大変な事になっているかと言う話を聞きたかったわけですが、そんな状態の彼らに私が話を合わせて、彼らが茫然自失で声も出ない状態だとか、Margincallに追いまくられて夜逃げが続出しているとか、直ぐ下に彼らの巨額の損切りオーダーがリーブされているというような囁きでもかませておけば、彼らは勇気百倍となって私は好かれ、またより多くのビジネスも取れた事は確実でしょう。
賢い選択だったかどうかは"神のみぞ知る"ですが、私はここでライフワークであるLighthouseに徹する事にしました。確かに輸出企業の多くは心配はしていましたがパニックはしていませんでしたし、機関投資家だってこれだけの円高は予想して居なかったにしても全くノーヘッジであったわけではないのです。そして一部の常識外のレバレッジ(100倍とか)の話が強調されて独り歩きしている個人の証拠金取引にしても、それは微視的な例外の話であり、多くは外貨預金の代替として身の丈に応じたサイズで外貨を保有していると言うのが実態であり、かつMarginCallもあるでしょうが運営会社による強制損切りルールなどでかなり早いうちに脱出しているケースも多いはずなのです。親しい友人がいる大手の一角を占める証拠金業者のモットーも"投機ではなく投資のサポートをする"と言う事であり、預かり資産評価額の減少が一定規模を超えると契約者の依頼がなくとも強制的に損切りをしてしまうという制度で運営されているのです。
"We report, you decide" これはFOXNews、"You give your time and we give you the world"というのはCNNだったと思いますが、私も冷徹にこれに徹する事で、海外からの照会に対しては血気にはやる先方の頭を冷やすような話をする事が殆どでした。
これで怒り出す人も、呆れる人も、電話を切ってしまう人も居ましたが、そこは男芸者ではなくLighthouseである事を選択した時点で想定した事の範囲内ですから来週以降も方針は変えずに行きたいと思っています。
Lighthouseとして一言だけ言っておきたいのです。
金曜日のFRBの緊急利下げで足元は収束に向かう可能性もありますが、この暴風雨はまだまだ続き、且つどこかでより勢いを増す可能性すらあります。
阿鼻叫喚の拡大に向けたリスクを取るのも良し、事態の収束と相場の反転に掛けるのも良しです。ただお互いにそれは自分の考え、判断、そしてリスクで行いましょう。正々堂々と世界金融市場という強い相手に挑戦しようではありませんか。
痛手を負った勢力を追いかけてとどめを刺して武具や金品を奪い取るような落ち武者狩り的な視点でのみ動くのは申し訳ないけど見苦しいです。歴史的にもそんな連中は短期的な利益は得ても天下は取っていないはずです。
What do you really want?
こういう時ほど、冷静に大志と大儀を持ち続けましょう。
今日は久しぶりに見たラストサムライの最後のシーンでの明治天皇とトムクルーズの会話が心に刺さりました。
天皇 " Were yo with him at the end?"
トム "Yes"
天皇 " Please tell me how he died"
トム " I will tell you how he lived"
In times of trouble, here is your LIGHTHOUSE.
Robert Henry.