2008年1月31日木曜日

Too little,too late

携帯電話というのは便利なものです。9月から子供達にも携帯を持たせていますが、"位置ナビ"機能で居場所まで分かるので妻は子供の帰りが遅い時などに非常に重宝しています。そんな時は大抵近所の川原で野球をやっているようですが・・・

携帯メールにはアドレスを登録した先からのメールしかFilterを通過しないようにして、その他のメールは一旦迷惑フォルダに入るように設定しました。

妻が時々このフォルダをチェックするのですが、"出会い系"サイトの宣伝のようなものが入ったりして困ったものだと思っていました。メーカーに照会しても受信を弾く機能は無い(と言うか受信するまで不適切なメールかどうかの区別はつかない⇒そりゃそうか・・・)と言う事だったので、子供たちには迷惑フォルダは覗かないように言っておく程度で済ませていました。

ところが・・・もっと気持ち悪い事が起こりました。 世の中どうなっているのでしょうか・・・・

今更こんな事を言うと笑われるかもしれませんが、子供たちの携帯に同時着信したメールを見て驚くと共に恐怖、そして怒りがこみ上げてきました。

検索してみると全く同名のちゃんとした企業もあるようですので、社名と電話番号以外をカバーしてPasteします。

(株)日本AAAAの藤田と申します。この度、現在ご使用中のお客様の携帯端末機(携帯電話)を、許可ネットワーク認証センターを介し、発信者端末信号名義を認証し、確認したうえでご連絡しております。 以前ご登録いただきました『総合情報サイト』の無料期間中に退会手続きがなされていない為に、利用料金が発生し現在も継続されており、現状未払いのまま長期間にわたり放置状態となっております。本通達より再度これ以上の放置が続きますと 利用規約に基づき、回収機関に債権譲渡され、携帯端末機新規申込み時の住所調査・住民票取得・身辺調査・等をし、終了後即時に調査費・回収経費・延滞金・損害補償金を含めて、ご自宅、お勤め先、第三者への満額請求となります。 現在の調査保留中の額面にての処理をご希望であれば、早急にご連絡いただき、精算 退会処理 デ-タ抹消手続きをお勧めします。 尚、連絡なき場合は、調査・回収の手続き開始をご了承されたものとします。平成20年01月30日 (株)日本AAAA 03-XXXX-XXXX 担当,藤田受付;平日 08:45~17:30迄

明らかな架空請求詐欺のメールであり、同時多数発信で不特定多数に送信し、コンタクトしてきた生真面目且つナイーブな人間からお金を騙し取るという手口だと思われます。

社名で検索すると多数のヒット数がありましたが、電話番号で検索すると所謂"振込み詐欺”や"おれおれ詐欺”等の注意を喚起すると共に架空請求業者をデータベース化したサイトが出てきました。もう間違いありません。

契約している携帯電話業者のサービスデスクに電話をしてこういう情報を届け出るところは無いかと質問したら同社としては全くそういうことはしていないとの事でした。全くおかしな話だと思った私は妻から会社に転送されたメールをプリントアウトして、帰宅時に地域の警察署に寄って本件を報告してきました。

警察署に入ったのは午後8時半位だったでしょうか、スタッフ数は三分の一くらいでしたが、私が入っていっても誰一人顔も上げない状態・・・・・一番近くにいた人に話しかけてやっと対応してもらえると言う状態でした。事情を話して、こういう情報を届け出るにはどうしたらよいかと質問すると、やや困惑したような表情で生活安全課なるところに行けとの事でした。

生活安全課は3階にありましたが、開いているドアをノックしても振り向く人もなく、再度こちらから一番手前にいた人に話しかけてやっと話が聞いてもらえる状態でした。

年配のスタッフ(刑事さん?)が別室で話を聞いてくれましたが、彼はこの程度の話で私が出向いてきた
事に驚いているようで、私の方はそんな対応をされる事に驚いていました。

・一応話は聞いておく。
・被害に遭っていなければ警察も動けない。
・どうせ電話もプリペイドで実態も所在も掴めないだろう。
・取り合わないのが一番。

そんな話をされた後で、もしもしつこく付きまとわれるようならまた来るように、ただしその時は昼間にしてくれと言われて帰ってきました。

何だこの国の警察??
世間で色々言われてはいても私の心に残っていた警察への畏怖と尊敬の念は崩壊しました。国民を守る気が無いとは言いませんが、犯罪を未然に防ごうと言う姿勢は皆無ではないですか・・・・

金融当局の金融政策が経済実態との比較において、先回りして予防的な動きをする場合を " Ahead of the curve", 実態認識が遅く、対応も後手に回るという状態を " behind the curve" と表現するのですが、今のままでは日本の警察機能、特に犯罪防止・国民保護機能は恒常的な behind the curve 状態にあるような気がしてなりません。

Too little, too late ・・・・ そうそう、これもまさに behind the curve の事で、かつては優秀だと信じられていた本邦の警察機能にも残念ながら当てはまってしまう表現でしょう。

やはり東京在住の友人と食事をする約束をドタキャンして警察に行ったのですが、本日その友人に事の顛末を知らせると、こういう返信がありました。

Unfortunately that seems to be the way of the police over here though doesn’t it? I remember some years ago I lived in front of a small neighbourhood park where one night a bunch of teenagers were drinking and making all sorts of noise until past 2 in the morning. I finally got fed up and rang the local koban. The phone rang and rang until finally someone picked it up and slammed it back down without saying anything. I then called the larger area police station and told them about the situation in the park. They asked if the kids had "done anything" to me or my property. When I said not as such they replied that there wasn’t anything they could (would?) do! From that day onwards I realized the kind of system that I was dealing with. Of course trouble in Japan is a lot more rare than in NY for example but I don’t think that excuses the attitude at all.

根の深い問題ですが、とても失望しています。

Everyone, protect yourselves and your family members all the time. We cannot count on THEM.

2008年1月30日水曜日

Too little,too late : Too much,too fast

あと数時間でFOMCの結果が出ます。

今更今日の指標は特別な意味は持たない訳ですが、市場の予想比強かったADP(雇用データ)と弱かったGDPが今この瞬間のFRBの苦悩を象徴的に表しているようにも思えます。

先週の火曜日に75bpの緊急利下げをした際に、FRBは多くの批判に晒されました。"Too little,too late" という批判をどれほど見た事でしょうか。そしてほぼ1週間後の今日は、市場が50bpの追加利下げ断行を織り込む(=要求する)中で、実際に市場追随的に追加利下げを行えば、"Too much,too fast"であるという批判的懸念が急上昇しています。

株式市場急落を受けた緊急利下げ直後に、その原因だったSocGenスキャンダルが発表されるという究極の巡り合わせの悪さのせいもあってか、利下げ直後に"Too little,too late"と言っていた人達と、今日も50bp切ったら"Too much,too fast"だといっている人達の一部が重なっているという凄い状態です。(単なるクレイマーかよ?)

こんなに注目されたFOMCっていつ以来でしょう? そして、ここまで追い込まれたのって・・?

机上の選択肢は、①据え置き、②25bp利下げ、③50bp利下げ でしょう。

株式市場だけで考えても①で急落、②で失望、③で保合い という可能性が高く、必死に議論するのも虚しいような状況でしょう。

こうなったら理事達はグレてしまえばよいでしょう。やってられませんと言ってしまうのです・・・やる気の無さを見せて、二人ほどは会合に遅刻してしまう等の細かい演出もいいですね。
"Too little,too late" or "Too much,too fast" という市場から突きつけれた厳しい命題に対して開き直ったFRBが示した回答は・・・・・" Do little, two late" なんていうのは・・・・あまり受けませんかね。

冗談はさておき、The big moment is just around the corner. 一大評決はもう直ぐそこですね。

2008年1月28日月曜日

Stay fleet of foot.

今週は29日火曜日から30日水曜日に行われるFOMCに大きな注目が集まっています。

既に書いた通り、先週の火曜日(22日)にFRBが株式市場の大幅急落を受けて75bpの緊急利下げを行いましたが、その時にはSocGenによる不正取引による持高処分の売りが出ている事を知らなかった事が明らかになっています。現在身柄を拘束されて取調べを受けている容疑者は市場を混乱させただけではなく、ナント米国の中央銀行に前代未聞の規模での緊急利下げを断行させてしまった可能性が高いわけです。

このような事情を背景に、今週のFOMCでは追加利下げの有無の予想が非常に困難であり、市場の予想が完全に割れた状態となっています。主要なアナリストの予想も今回は据え置きから50bpの利下げまで本当に色々ですので、どのような結果になったとしても必ずBetが外れる人々が出てくるので市場の値動きは不規則なものになると思います。

また、SocGenに話を戻すと、同社は内部不正発覚から外部への発表までに一週間弱を費やしている事や、取り調べを受けている容疑者が同業他社の友人達に以前から色々相談していたと言う供述をしているようなので今後本件に絡むインサイダー取引疑惑が出てくる可能性がありますので追加のスキャンダルにも注意が必要です。

週初から随分と株式市場が下落しており、アジアでは日経が約4%、香港が約6%、上海が約7%も下落しました。世界中の投資家の最後の砦とも言える上海株式指数は実に2年振りに200日移動平均線を割り込むなど失速感が日に日に強まっており警戒が必要です。

リスク回避バイアスの上昇は基本的に円に上昇圧力を掛け続けており投機勢の多くがドル円の105円割れを目指した円買いポジションを積み上げ始めています。

そうそう、金曜日には雇用統計があることも忘れてはいけませんね・・・・

今週は、特にフットワークの軽い、足早なポジション運営を強くお勧めしたいと思います。

Stay fleet of foot !!! 英語ではよくこういう表現を使用します。

Invisible God's Hand....visible ?


年末年始に出回った神の手(?)の映像です。
沖縄と聞いていますが、何年に一度かと言う感じで現れるそうです。
神の見えざる手が、一瞬見えてしまったかのような不思議な気持ちになりませんか?
縁起が良いらしいので、ここにShareしましょう。
May peace prevail on earth. May God be always with you.
Best of luck.
Regards.
Robert Henry.

2008年1月27日日曜日

Wall Street may be shaken by "Whistle of Middle East"

アジアのハンドボール業界を揺るがす"中東の笛"ですが、アジア予選のやり直しが間近となったものの参加国は日本と韓国のみ。

国際ハンドボール連盟は、中東国に有利な不適当なレフェリングが連発されたとする日韓の抗議を認めて予選のやり直しを命じましたが、クェート王族が支配するアジアハンドボール連盟はこれを拒否して再予選に参加した国には除名を含む処分を下すと言う声明まで発表して徹底抗戦の姿勢を示しているそうです。

元々石油の採掘権などの交渉でも中東諸国はかなりの難敵であり、信じられないような条件を吹っかけてくると言う事もしばしばだった訳ですが、そんな石油ビジネスの世界では良く知られていたエゲツなさが今後は中東諸国の存在感の増大に伴い様々な分野で我々を悩ませるようになる可能性がありそうです。

サブプライム問題などで体力の落ちている欧米、特に米国の金融機関はアジアや中東の政府系運用機関(SWF)からの出資を必要としており、事実1月14日にも書いたとおりADIA(アブダビのSWF)からCitiグループへの$7.8billion出資の決定のお陰でCitiグループのみならず金融セクター、そして株式市場全体が大いに息を吹き返したほどの影響力です。

しかし、今週は実は少しきな臭い動きがありました。

様々な理由から株式市場が下げ幅を拡大していた22日の火曜日でしたが、ADIAがCitiグループへの出資を取り止めるとの噂が市場を駆け巡り、東京市場でも金融銘柄に広範な売りが出回ったのです。

一部では22日は実際に投資資金の送金日だったという怪情報もあり、真偽の程は良く分かりませんが少なくとも今後金融の世界でも中東勢の存在が一層大きなものになっていく事と、その中で中東のやり方に振り回されていくリスクも大きいと言う事を充分に示唆する出来事だったと思っています。

実は、ADIAによるCitiグループへの出資が決まった時、米国の友人が、
「これは歴史的な出来事だと思う。イスラムがユダヤを助けているのだから」と興奮気味に話していたのを聞いて政治が苦労している中東和平が金融の世界で一足先に実現したのかと私も感心していたのですが、突然梯子を外すことなく今後も中東諸国には出来るだけ国際ルールに従って欲しいと個人的にも希望します。

中東の笛・・・・・・ ハンドボールの世界で起きている事は、例外的であると信じたいですね。
そうすれば・・・・"ハンドボール"だけに"手玉"に取られた・・・・という駄洒落を言って笑えますから。

What a fine kettle of fish. ECB

週初の出来事でもう1つ気になったのはECB(欧州中銀)のTrichet総裁の妙に強気な発言でした。

22日のFRBによる75bpもの緊急利下げを受けた23日にBrusselsのEuropean Parliament での議会証言に出向いた総裁は、米国は米国、欧州は欧州という相違を明確にする発言を行って金融市場が強く期待する米Fedとの協調利下げの可能性を一蹴しました。

米国の動向は関係ないし、その影響を受ける事も無い。欧州以外の経済や欧州を含む株式市場が混乱していようともインフレ懸念にしっかり立ち向かう事こそが欧州中央銀行の責務であるという内容の発言を繰り返していた彼の横で、小島義男でも躍らせていたらきっとはまったことでしょう。

頑固なフランス人紳士の気骨。欧州経済や金融機関は米英のそれよりは規律と秩序に守られていると言う自負。ある意味でそんな風格すら感じさせるTrichet総裁でした。

金融緩和方向の動きを期待していた金融市場は、やや梯子を外された格好となり、株式市場にも売りが強まりましたが、この欧州Decoupling を宣言したような発言に溜飲を下げた人々も多かったと思います。

ところが・・・どっこい大作・・・やっちゃいました・・・・

まさにその翌日の24日木曜日に・・・SocGen首脳が記者会見で、サブプライム関連の追加評価損及び従業員の不正取引による前代未聞規模の追加損失の発表を行ってしまったのです。

European Union は馬鹿でかいので、これがスペインやせめてドイツ辺りの話であればまだ同情の余地はありますが、仏銀最大手・・・つまりはTrichet議長のまさに庭先と言うか裏庭にあった巨額のサブプライム関連損失や大規模な不正取引の発覚は、同議長にしてみれば面目丸潰れではないでしょうか。 ここは開き直って今度は本当に小島義男あたりに踊ってもらうしかないように私も思います。
面目丸潰れ音頭・・・・

どうせならBernanke議長とセットで3人で・・・・何なら国民実感から乖離しまくった不思議なデータだけを鵜呑みにして日本経済が6年にも及ぶ持続的な経済成長・拡大を継続していると信じているらしい日銀の福井総裁にも参加してもらったら面白いのではないでしょうか? 小島義男も世界舞台へ飛躍できますしね。

That would really be a fine kettle of fish, though.....

もう少しまともな人達にやってもらいたいな~・・・・・

What a fine kettle of fish !! FRB

殆ど続編と言う感じですが、視点をFRBに向けた時に背筋が凍るような感覚を覚えます。

金融市場は金曜日からきな臭い動きをしていましたが、月曜日は"キング牧師の日"で北米市場は休場だった事もあり、アジア時間はよくある"マッタリ"相場で、流石に海外市場も静かだろうと思われましたが欧州時間から株式市場がおかしくなって様相が一変してしまいました。

株式市場は火曜日のアジア市場でも下げ足を早めて遂に"最後の砦"というか、ここだけは別格と思われていた中国の上海市場やインドのムンバイ市場にも反落開始の兆候が強まり、為替市場では日本円、米ドルが上昇するというまさにRisk Aversionセンチメントが加速度的に上昇する流れとなりました。
 欧州市場は更に下げ足を早めて週明け市場開始前の米株も先物市場で売りが殺到するような状態で市場全体が浮き足立つような状態となりました。

その火曜日の晩(北米はまだ朝9時位だったのではないかと思います)、電話が鳴ってFRBが75bpの緊急利下げを行ったという連絡を貰いました。

色々な人が色々な事を言ったり書いたりしていますが(私もですが・・)、実はこれは凄い事です。所謂緊急処置つまりはInter-meetingでの75bpもの利下げと言うのは20数年ぶりという規模であり、更にFRBがFedFundレートを金融政策のベースに据えるようになってからは初めての事だそうですので、事実上史上初と言っても良い位のものなのです。

"追い込まれてやった"とか"効果は疑問"等としたり顔で語る愚かな人々が沢山いますが、そんな輩の顔面には躊躇せずに膝を入れましょう。ある意味で自らが種をまいたわけではない苦しい環境の中で今回に関しては現FRBは踏み込んだ対応を断行したと言えると思います。

しかし・・・・・ここからが問題なのです。

信頼出来るソースによれば、今回の緊急利下げの背景は、キング牧師の休日だった月曜日の晩にFRB本部から各理事に火曜日の朝に緊急電話会議を開く旨の通達が飛び、会議では一部慎重論も出たものの大勢は直ぐに決まったと言う事だったそうです。

ところで・・・・

FRBの背中を押したものは明らかに急落していた株式市場なのですが、あの時に欧州株先導で大きく売り込まれていた株式市場の背景が、前回書いたSocGenの不正取引発覚後の巨大な買い持ちロングポジションの処分売りだったとしたら・・・・・・・・

Oh...my god.

Nick Leesonという御仁は、1995年に派遣されていたシンガポールオフィスで不正取引を重ねて$1.4billionの巨額損失を出してBarings証券と言う英国大手金融機関を抹殺しました。

今回の悪役、Jerome Kervielという若者は弱冠31歳にして米国の中央銀行に前代未聞の行動を取らせると言う大技をかましてしまったと言う事なのでしょうか?

This is a fine kettle of fish he's gotten us into.

これで、29日~30日に行われるFOMC会合における議論と結末が更に予測しにくくなっており、株式市場動向にもその兆候が表れているようです。

Buckle up and stay tuned.

What a fine kettle of fish !! SocGen

24日の木曜日にフランスの最大手金融機関であるSocGen(Societe Generale)が、かねてからの噂通りにサブプライム等の証券化商品への投資による20億5千万ユーロ(約3,200億円)の追加評価損の発表を行いましたが、市場が驚いたのは同時に発表された49億ユーロ(約7,600億円)にも及ぶ同行のディーラーによる不正取引による特別追加損失でした。

合計で70億ドルユーロというのは11兆円にも及ぶ規模なのですが、その7割以上が1ディーラーの隠しポジションから発生していたと言うのは前代未聞と言えるでしょう。1995年の英国Barings証券のシガポールで起きたNick Leesonと言う人物による不正取引による損失は1.4billion米ドルですが、今回の49億ユーロというのは米ドル換算で約7.2billion米ドルですので実に5倍以上の規模と言う事になります。

それでも黒字を確保するSocGenのビジネス基盤は大したものだとも言えるわけですが、更に同社が上手かったと思うのは、市場の先手を打つ格好で米系のMorgan Stanley及びJPMorganChaseの出資による55億ユーロ(約8,500億円)の増資を発表した事でした。

金融市場とは実に恐ろしい場所です。

木曜日の記者会見に向けてSocGenは先週から不正取引による隠しポジションであった巨大な株価先物のロングポジションを市場で売りまくっていた筈です。そして、血の匂いを嗅ぎつけた人々は同社に圧力を掛ける意味でもそれ以前から株価を売り下げて同社に不正告白の催促状を突きつけていた事は間違いありません。

SocGenのプレス発表後は株価が上昇に転じた事でも明らかに分かる事です。

英国のFT紙は、SocGenをShockGenと表記して規模と驚きの大きさを表していました。

SocGenの不正を働いた人物は自殺説も出ていましたが現在行方不明だそうです。

What a fine kettle of fish he's gotten us into !!

kettle of fish ⇒ 混乱、厄介な事 という表現に実際に最初にお目にかかったのが確か上述のBarings証券の事件の時でしたが、今回も海外向けのサマリーに使ってみました。Kettle(ヤカン)が魚のようにヌルヌルしていたら扱いにくいからでしょうか??・・・・。

ちょっと現状の市場センチも・・・ヌルヌルしてきているんですよね・・・・

2008年1月22日火曜日

When cash outperforms other assets.

市場の動きが明らかに常軌を逸脱した混乱状態に陥りつつあるようです。

世界的な株式市場の継続的な下落は最早売りが売りを呼ぶ完全な負の連鎖の様相を呈しており、日本株はパニック売り状態。これまで別格かと思われた中国株、インド株まで文字通り崩れ初めてアジアも全滅、欧州市場もこの動きに完全に飲み込まれています。

原油、金も下落幅を拡大し続けており、世界経済が急速に縮小していく様を数値で表示しているようにすら見えます。

米国が失速しても欧州、アジアは独自の成長路線を歩むと言うDecoupling論は大きく後退したと言わざるを得ないでしょう。それを裏付けるように欧州系金融機関によるサブプライム関連損失の償却話や本日は中国の金融機関もサブプライム関連損失処理で赤字決算の可能性もありと言う香港系の新聞報道も出て最早Recoupling論も通り越して、同じ穴の狢論とでも言わざるを得ないような悲観的な市場センチが台頭しているのを感じます。

市場不調期や決算間際に資産を売却してCash比率を高める事はありますが、あくまでも短期的な処置であり、中長期的或いはパニック的な規模でCashが全てのAssetをOutperformする状況は非常事態と言わざるを得ません。

債券が上昇するだろうという反論があるかもしれませんが、実際問題としてCashの置き場が短期債券ですから要するにCashしかもてないと言う状況に変わりは無いと思います。

When cash outperforms other assets. これは金融市場におけるPanicの定義としても良いくらいのものではないでしょうか。

過去数年間の投資家天国時代に忌み嫌われた(言い過ぎ?・・ですね)ものが最近急上昇しているのですが、それが日本円とVolatilityと言う事になります。

各市場を見ているとBigネームは必死にVolatilityを買っていることが分かります。金融の地殻変動はまだまだ続くと言う相場観がベースになっているはずですね。

Derivatives have value only in an environment of volatility. というコンセプトがあります。

実はこのDerivativeの世界でもVolatilityの上昇時では既存のExoticが頭痛の種となることが多いなかで単純なPlain Vannilaが大流行する傾向が強まります。

ExoticからPlainVannilaへの回帰・・・・・Asset選択における"紙からモノへ"を第一章とすれば第二章はDerivativeの世界における"ExoticからPlainVannilaへ"という動きかも知れません。どうも最近の地殻変動は時代の振り子の逆行現象と表現出来るような気がしてなりません。

2008年1月20日日曜日

Roy Jones Jr. beat Felix Titto Trinidad in desision victory

北米3連休の初日となった土曜日、世界の金融市場を揺るがす震源地でもあるWall Streetからも遠くないMadison Square Gardenにおいて90年代にボクシングのpound-for-poundランキング(全階級横断のランキング)で常時首位を争った二人の伝説のボクサー同士の試合が行われました。

会場には12千人以上が詰め掛けて試合を見守ったそうですが、共に4階級を制した元世界王者同士の戦いは最終的にヘビー級まで制したRoy Jones Jr.の体格面での有利さもあって7回と10回にはTrinidadが尻餅をつくダウンを取られてUnianimous DecisionでRoy Jones Jr.が大差の判定勝ちを収めました。

格闘技、特にボクシングファンである私は本当にこの二人が好きでした。全盛時には、本当にこの二人は無敵でしたし、もしかしたらボクシング史の中でも最高の選手なのではないかと思っていました。(実際に One of the best である事には疑いの余地は無いと思います)

両者共に全盛時のパワーもスピードも無く、本人たちもそれを自覚しています(Royが39歳、Tittoが35歳)が、それでもハイレベルな見応えのある戦いを演じ、ファンもそれを大いに評価して喜んでいました。

圧倒的な超越を失っても円熟の技術や深みを提供してむしろ一層の敬愛や支持を集める彼らは素晴らしいと思いました。そしてこれこそが、Wall Streetを始め米国全体が目指すべき方向なのではないかと言う気もするのです。政治的にも金融的にも軍事的にも米国の一極支配体制は終焉に向かっており、それを達成するかに見えたGlobalizationという潮流はむしろ他の国々や経済圏に多くの発展機会をもたらす福音となりました。

現在次期大統領候補の予備選が行われている米国は、政治でも金融面でも世界の中で果たす役割の再定義の段階に入っているのでしょう。

土曜日のMadison Square Gardenに、そのヒントがあったと私は感じています。

2008年1月19日土曜日

Global Asset Implosion.

The Alchemy of Financeという著書もあるGeorge Sorosは自身を投資家というよりは錬金術師(Alchemist)であると語っているのですが、その彼の言う錬金術が世の中を震撼させたのが1992年9月16日の英国ポンド危機でした。
 彼はここで100億ドル以上のポンドの空売りをして推定20億ドルの収益を上げたとされていますが、この"英国銀行を潰した男"のグローバルマクロテーマのベースにはいつも"Boom and Bust"の見極めと言う判断があるようです。

言葉的には、個人的にはBoom and Burstのほうが分かりやすいような気もしますが、好況・不況の循環を表す時には Boom and Bust の方が用いられます。Bustはご承知のとおり胸部という意味もありますが、まーその方が山あり谷ありという感じは出ますかね。

Oopsこの路線に深入りは禁物・・・

投資家としては困難な話ですが、世界的な資産上昇過程(Global Asset Boom)は、2007年度で終了し、今年は世界的な資産価値縮小過程(Global Asset Bust)の段階に入っていると考えざるを得ません。

Low Volatility, High Correlation などが注目された何に投資しても儲かると言う世界的な資産価値上昇の時代は終了。2007年8月に表面化したサブプライム問題を契機に一旦リスク縮小の自衛策に走った市場参加者の多くは、2008年度入りしてからは安易な分散投資から"選択と集中"と言う方向に舵を切って荒波に立ち向かいましたが、ここへ来て再びリスクを縮小する動きが目立ちます。

"選択と集中"というテーマの中で、選択されたのはやはりアジア、コモディティ、そしてエマージングの市場だったのですが、更にアジアであれば中国、インドに、コモディティなら原油、金、食物という 具合に更なる集中現象が起こったものの、遂にそれらにもBust過程入りの兆候が顕著になってきたことで市場参加者は戦略の再考を迫られています。

最後の砦だった中国、インド、商品市場・・・これらが今後も持続的な調整を続けるとすれば、どんな形でもAssetを持ってしまうと価値が減ると言う環境が継続するのですが、この"市場不調時"に最優先される戦略は、"Capital Preservation"(運用資本の防衛・温存)であり、これが今後のテーマのひとつとなってくる可能性が大きく上昇しています。

昨年度には中国株が一年間で倍になると言うように、これまではまさに資産価値が爆発的に上昇する
バブル過程だったと言えるのですが、これはまさしく価値の"Ex-plosion"でした。
 英単語の接頭辞の勉強のようになりますが、今既に始まってしまったかに思えるのはこれの反対の"Im-plosion"です。

資産価格が内向きに倒れていく過程・・・・・・外向きに拡大していた資産価格が内向きに縮小していくと言うこの過程では、資本の流れも逆流します。

局地的に見れば・・・・投資家は資産を売却してポートフォリオのCash比率を上昇させる動きに出ます。
当然ですが、海外資産の処分については資本のRepatriation(本国還流)、為替では自国通貨買いという動きに繫がります。

全体の絵を見れば・・・・・各国、各経済圏が上記の動きを行うという"流れ"がぶつかり合うと言うのが金融市場の鳥瞰図となるでしょう。

年初からの世界同時株安の動きは、最後の拠り所であった中国、インドなどをも例外とはせず、遂に原油価格や金価格も明確な調整過程に引きずり込んだかに見えます。

このGlobal Asset Implosionが、世界的な資本逆流・還流(Global Repatriation)の引き金を引いた結果、世界的な調達通貨の役割を果たしてきた日本円、スイスフランが最強通貨となり、RiskMoneyの故郷である米国ドルがこの二通貨以外に対してはこれまた上昇していると言うのも当然の話です。

ドル円以上にクロス円(特にGBP円でしょうね・・・)が落ちるというのはまだまだ中長期的に乗ってよい戦略でしょう。

業界としては、"Investment から Trading へ",消費者行動も "投資 から 貯蓄へ" と言う具合に一旦従来の潮流が逆流しそうな雰囲気です。

2008年1月14日月曜日

Don't look a gift horse in the mouth.

Look a gift horse in the mouth → "贈られた馬の口の中を調べる"

というのは、折角頂いたものにケチをつけるなという意味で使われるのですが、先週末に米議会が海外の政府系運用機関の実態調査に乗り出すと言う記事が出て株式市場が下落して為替市場では米ドル売り圧力が強まった時は、直ぐにこの言葉が思い浮かびました。

基本的に多くの経常黒字国には潤沢な外貨準備がある訳ですが、各国はこれをファンドとして積極的に運用して増やして行こうというスタンスを強めており、これらはSWF(Sovereign Wealth Fund)と称されています。

昨年後半サブプライム問題に揺れたWall Streetでは、大手米国投資銀行の多くが多額の資本増強の必要性に直面しましたが、不幸中の幸いだったのがアジアや中東各国のSWFが活動を開始する時期だったという事です。

大袈裟に言えば"神の見えざる手"かとも考えたくなるのですが、実際に各国のSWFから米国への投資は、"Sovereign Salvation"と呼ばれており市場の安定に非常に大きな役割を果たしてきました。

・GIC(シンガポールのSWF )⇒UBSへ$9.8billion出資(UBSはスイス系ですが、Wall Streetと同類)
・ADIA(アブダビのSWF)⇒Citiグループへ$7.8billion出資
・CIC(中国のSWF)⇒Morgan Stanleyへ$5.0billion出資
・Temasek(シンガポールのSWF)⇒Merrill Lynchへ$4.4billion出資
・Citic Security(中国の政府系証券会社)⇒Bear Sternsへ$1.0billion出資(相互出資)

これらの報道がなされる度に、株式市場は持ち直してきたのです。(一時的にしても)

まさに、SWFさまさま・・・・というのが米国の立場であり、実際に金融当局はそれを充分理解しているものと思われますが、例によって議会には色々な人がいるものです。Wall Streetを代表する早々たる投資銀行群にあまりにもよそ者の資本が入る事に危機感を持つ人達もいるのでしょう。通貨政策における極端な対中、対日強硬論と言うのも議会の中に存在するもので、それを財務省、FRB,そしてWhite House が抑え込んでいると言うのが実態なのですが、それと類似する構図が浮かび上がったと言うことではないでしょうか。

気持ちは分かるけど、今は有難く黙って感謝しておくのが無難である事は間違いなのですが・・・・

Don't look a gift horse in the mouth. くれぐれも忘れないようにしましょう。

ちなみに、"in the mouth"をチェックするのは、歯並びをチェックする為ではなく、歯を見て年齢を判断するのが目的です。英語でlong tooth(長い歯)は老齢を意味しますが、恐らくこれも馬の年齢判断から来ているものと思われます。

人間でも成人は歯茎が後退して歯が長く見えるそうですから我々も気をつけて歯を磨きましょう。

Emergency Cut?

色々あった週末の動きの中でも注目されているのがMedley Global Advisorsの出したFRBが今月予定されている29日・30日のFOMC会合を待たずに今週中(14日~18日)にも緊急利下げを行う可能性があると言うレポートです。

NYにある同社は、あくまでも私の個人的印象ですが、WashingtonのJohnson&Smickレポートと並ぶ時としてインサイダー的な内容をも含む情報配信の老舗であり、諸事情あって一時情報感度はかなり劣化していた感もありますが、依然として同社が断定的な書き方をする時には一定の注意を払っておく必要があるでしょう。

Greenspan前議長時代の特に後半はFedと同社の関係も随分冷えてしまっていたようですが、議長交代後の新たな体制の中で情報ルートも復活している可能性もありますしね。

所謂緊急利下げ、Inter-meetingでの政策変更というのは過去にも例がありますが、文字通り想定外の事象に対処する目的での緊急措置であり、次回のFOMCまでに時間的な距離があってそれを待っていられないという状況下で行われてきました。(テロの時など)

もし今回、月末のFOMCまでも待てないと言う判断をFRBがするとしたらそれはどういうシナリオになるのかと言う事を考えれば、やはり株式市場の下落が止まらないと言うことへの対処と言う事になるのでしょう。

日本株も含めて先進主要国の株式市場は年初から軒並み5%を超える下落となっているところも多いのですが、Wall Streetの不調はFRBに緊急利下げを強いるところまで行くのか、もしあった場合の利下げ幅は50bpなのか、そして市場はそれにどう反応するのか・・・・

妙な材料が加わったものです・・・

2008年1月5日土曜日

Great Rivalry between Big Men.

週末に貰った知人からのメールによれば金曜日の朝のWall Streetの気温が華氏12度(摂氏で約氷点下11℃)、一方で土曜日の予想気温が華氏55度(摂氏で約+13℃)だったそうです。
 1日で実に25℃という気温差ですが、どうもWall StreetのVolatilityは気温にまで及んだかと言いたくなるような振幅ですね。

この年末年始に日本にも一応の寒波が来ていますが、今年は北米の冬にも相当の気合が入っているようで東海岸は雪かきなども大変みたいですね。こういう時には地球温暖化という事象は本当に進行しているのだろうか等と真剣に思ったりしてしまいます。

地球温暖化と言えば、Bill Clinton政権時代の副大統領で2000年の大統領選でBush現大統領と最高裁の裁定まで仰ぐほどの歴史的僅差の大接戦を演じたGore氏がこのテーマでノーベル賞を受賞して俄然時の人となったことが想起されます。

頭脳も口も高速回転でインテリを具現したようなGore氏にとっては、自分とは正反対のようなBush氏に敗れた事は大きな落胆だった事でしょう。しかしその彼がBush政権のアキレス腱の1つである地球温暖化を中心とした環境問題という分野をまさにPinpointのように衝く格好で大復活した事はこの両者の運命的なRivalryを感じさせるものではないでしょうか。

宿命的なRivalryと言うものを考えてしまう事例としては、2千年規模の汚名返上とまで行くかどうかは別としても新たな福音書の発見により従来の極悪人且つ裏切者の代名詞的な位置付けから開放される可能性も出てきた"イスカリオテのユダ"の例があります。新しい資料では彼はイエスの他の弟子達よりも優れた存在だった事になっており裏切りもイエスの指示だったという事になっているのです。
 また初期キリスト教の研究においては欧州と米国の学者間に主導権争いがあり一旦は後者が圧勝した形になっていたようですが、今回の画期的な新文書が数奇な運命を経て欧州側から発表された事も宿命的なRivalryにおける大逆転劇だったようです。

そして・・・・

年初のWall Street Journal紙が、これだけの原油価格上昇による物価上昇圧力を受けてFRBは利下げが出来ないのではないかと言う観測記事を書く一方で、Financial Times紙はFRBが毅然と利下げを継続すると予想する記事を書いておりこの米英のRival紙が異なる予測を書いている事が注目されています。

80年代初めにカリフォルニア大学のHamilton博士が過去のほぼ全てのRecessionは3~4四半期の時差を持って原油価格の著しい上昇に先導されていることを指摘したのに対して後にFRBの研究班が過去のRecessionの原因は原油価格の上昇そのものではなく、物価上昇に対応して金融政策が過度に引き締められたからだと言うカウンター意見を出した事があり、この時の研究班の中にBernenke現議長がいたと言う事実をFT紙は指摘しているのです。

これはWSJ対FTというRivalryに加えて、Hamilton博士対Bernenke博士というRivalryにも思いを馳せずにはいられないと思いませんか?

Great Rivalry among Big Men..... まさに2008年度は決着の年なのかもしれません。

2008年1月4日金曜日

Is US "down and out" or "down but still in" ?

1994年9月、飛ぶ鳥を落とす勢いだったMike TysonのライバルだったLenox Lweisは、地元ロンドンに凱旋して行ったWBCヘビー級タイトルの4度目の防衛戦において試合開始早々第二ランドに世界ランク一位の氏名挑戦者Oliver McCall選手の右ストレートを不用意に食らって豪快に倒れ込み、直ぐに立ち上がりましたが足元がふらついたためにレフェリーに試合を止められてしまい、初黒星を喫すると同時に虎の子の世界タイトルを失ってしまいました。

試合直後のインタビューで彼は、レフェリーのストップが早すぎたと必死に抗議します。

Yes, I was down but I was not out.

確かに自分はdownだったけどoutでは無かった・・・倒されたけれども、まだ大丈夫だった・・・彼はそう言っていたのです。
 当時は単純に"down"と"out"の使い分けに感心していたのですが、倒されて立ち上がれない位のダメージを受けてしまえば、"down and out"となり、この語群は"落ちぶれた"と言う意味の形容詞句としても使用されるわけですが、やはり英国のホープで先般Floyd Maywether Jr.に初黒星を喫したRicky Hattonが痛烈なKO負けによる初黒星を乗り越えて再起すると言う記事で、"Hatton, down but not out"という記事が出ていたのでLenox Lewisの事を思い出したのです。

七転八起 ⇒ down but not out.
七転八倒 ⇒ down and out.

という対比は如何でしょうか・・・

さて、後半に荒れた2007年、そして年明け早々から荒れる初場所モードで座布団飛び交う2008年の金融市場ですが当然ながら震源地は東の横綱米国経済です。

年明けのデータだけを見てもいよいよサブプライム問題に端を発した金融経済の混乱が実体経済に影響を及ぼし始めている事が経済指標の悪化と言う形で確認され始めました。
 例えば、2日のISM製造業調査の景況指数の悪化と支払価格の上昇の組み合わせからは、景況感の後退と物価上昇の同時進行=Stagflationの足音が聞こえてきますし、4日の金曜日の12月雇用統計における非農業部門新規就業者数が18千人と予想の70千人を大幅に下回り、失業率が4.7%から5.0%に大きく上昇した事も来るものが来たと言う懸念を強める内容でした。

最早予想通り、米国経済の"減速"、"失速"は明白であり、"後退"、"収縮"まで行ってしまうのかどうか、その場合どういう経路でそこに到達するのか・・・・市場参加者の関心事はそこに移ったといえるでしょう。

既に"Down and out"か、まだまだ"Down but still in" か・・・2008年度は米国経済の打たれ強さが試されるという大きなテーマを抱えての船出となりました。

話を戻してLenox Lewisですが、再起後は順調でヘビー級統一世界王者に長期間君臨し、Oliver McCallにはTKOで雪辱、Mike Tysonの挑戦は血祭りKOで退け、Evender Holyfieldの挑戦も2度退けて、あのVitali Klitschko(クリチコ兄弟の兄の方)との打ち合いも負傷TKO で制して王者のまま引退しました。
 強いのですが、凄みが出し切れず、どこか歯がゆい感じの彼が私は好きでした。レスリングでは今は亡きジャンボ鶴田選手にも通じるものがありましたね。

同様にどこか歯がゆい感じの米国ですが、今年は米国経済の懐の深さによって、米国経済の懐の寒さ度合いが決まると言う事でしょう。

2008年1月3日木曜日

A grand prelude to a trembling January 2008.

金曜日から東京市場が始まりますのでいよいよ2008年度の金融市場がFull condition状態になるのですが、それにしても年末年始で海外勢がかなり気合の入った動きをしているように見えます。

原油価格が遂に1バレル100ドル相場へ、金価格はあっという間に900ドル相場目前、そして為替市場では日本円とスイスフランが主要通貨をリードしまくっています。円などはクリスマスに114円前半→正月に108円前半という殆ど年末年始で6円相場です。

金曜日にはいきなり米12月の雇用統計の発表が予定されており、流石にここまではマッタリ相場かとも思ったのですが、年末の本邦インフレデータの上昇、パキスタンのブット首相暗殺など無視出来ない材料があったのと金融市場混乱の年として記録されるであろう2007年度年末越えの資金繰り要因等も各市場の流動性が不完全な状況下で相当の影響を及ぼしていた可能性もあります。

多くのメディアが世界景気の減速懸念の上昇を受けて年初から世界的に株式市場が下落しており、多くの投資家も年初から投資を縮小しファンディング通貨であった低金利通貨(円、スイスフラン)に買戻しが入っていると言う説明をしていますが、では原油価格や金価格の爆発的な上昇は投資でも投機でもなく純粋な需給なのかどうか・・・・

2007年の9月30日に"At Major Cross Roads"というテーマで以下のような事を書きました。

"紙からモノへ"・・・・・資産を紙幣や株券という紙から金などの貴金属や原油などのエネルギーや小麦などの食物と言う形で保有する動きは資本主義経済の根幹を揺るがすものです。

"神から物へ”・・・・群集の信仰の対象が神から富と変化するという物質主義に走り過ぎた資本主義の行き過ぎを是正するような動きが、その富の象徴であるPaper Assetの根源的価値の下落と言う形で始まっているとすれば、それはとても皮肉な話です。

そうです・・・この年始相場の動きも良く見れば、Asset市場全般にExposure の圧縮圧力が掛かっていると言うよりは"紙から物へ"と投資資本が大移動していると言う解釈のほうが的を得ているような気がします。

投資対象の"選択と集中"、保有資産は"分散から集中へ"

2008年度年初相場がそのようなバイアスを強めていくとすれば、多くの資産間におけるこれまでの相関関係(Correlation)が崩れていく事が考えられます。ちょっと最近のカナダドルと原油価格の相関関係が怪しい様に。

奇しくも年末時点のインタビューで、あのJim Rogersが中国以外のアジア株を全て売却したと明言しているのですが、アジアの時代と言われる中でも"選択と集中"を考える必要が出てくると言う事なのかもしれません。

年初の動きが前触れに過ぎないとすれば、とても恐ろしい事です。

2008年1月2日水曜日

In the beginning, there must be ..............

In the beginning, there was the word. 最初に言葉があった。

昨日これに関する考察を書きましたが、私の中には本件とは切っても切り離せないある言葉があり、両者はいつもセットで私の脳裏に焼き付いています。

Genius is one percent inspiration and ninety-nine percent perspiration.

これは言わずと知れた Thomas A. Edisonの言葉であり、通常は"天才とは1%のひらめきと99%の汗である" という意味で知られています。彼の多くの発明などの偉業の裏にあったのは実はひらめきは1%程度であとの99%は挫折や多くの失敗の繰り返しなどの泥臭い作業だったという意味で認識されているのですが、私もそのように認識していました。

ところが、実際にはこの言葉を残したThomas Edisonが言いたかったことは別のところにあり、彼の言葉は、地道な努力を美徳とする解釈を与えられて一人歩きしてしまったというのが真相のようなのです。ある意味では、この名言はAccidentallyに誕生したと言う事が言えます。

晩年のThomas A.Edison本人の述懐するところによれば、彼が言いたかったことは全く反対の事であり、Inspiration(閃き)に基づかないPerspiration(汗、努力)には意味が無いという意味であったそうです。

つまり、後世の我々は彼の言葉の後半である"99%は努力"という部分に焦点を当てて解釈していますが、この名言の生みの親であるEdison博士は、前半の"1%のひらめき"と言う部分を強調する積りであったということです。

大袈裟に思われるかもしれませんが、このエピソードは私の心に突き刺さりました。そして私はそれ以来繰り返し心の中でEdisonの言葉と旧約聖書の言葉を重ね合わせて考えてしまうのです。

聖書は最初に言葉がありきと言い、発明王Edisonは最初に閃きがあるべきだと言っているのです。Wordがあって、Worldが誕生し、InspirationをベースにPerspirationが蓄積・継続されるべきだと言う事なのですが、私は非常に強い感銘を受けてしまいます。

これらを重ねて考えて見ると我々の投資行動でもあれだこれだと汗をかいて時にはのた打ち回る前にそれらの前提となる大局観があるべきだと言えるし、組織であれば現場が汗をかく前提に経営ビジョンがあってトップはそれを明確に語るべきであると言う解釈も出来ます。戦略あっての戦術であるという事にもなりますがこの部分は今後も掘り下げましょう。

大きな潮流を把握する努力を継続し、マスタープランとサブシナリオのバランスを取りながら潮目の転換点では果敢なExposure を取る事を躊躇しない事。このテーマを意識し続けて生きたいと思います。

Inspired word could make a better world and more meaningful perspiration.

Inspired wordを語るのを預言者だとすれば(注意 預言者と予言者の違いはわかりますか?)、預言者⇒英語でprophet⇒発音はprofitと同じ・・・・・というのは偶然でしょうか。

う~む・・・・・マンダム。

2008年1月1日火曜日

In the beginning, there was the Word. 

In the beginning,there was the word.

最初に言葉があった。 という聖書の一説は有名ですが、"明けましておめでとうございます"とか"謹賀新年"という言葉で新しい年が始まることにも通じる部分があるかもしれませんね。

あらためまして。明けましておめでとうございます。今年が皆様にとって素晴らしい一年になることを心からお祈りいたします。

さて・・・・某所で、その新年の最初の言葉に関するディスカッションを興味深く拝見しました。

"A happy new year" or " Happy new year"
冒頭の不定冠詞"A"は付くのか付かないのか・・・・というものです。

学者でも教師でもないので割り引いて頂いた方がよいかもしれませんが、自分の考えとその議論の内容をまとめて見れば以下のようになるのではないかと思います。

①どちらでも間違えでは無い。

②ただし、ネイティブの人々がどちらを使用しているかと言えば圧倒的に"Happy new year"

特に②については今年は特に注意して各種ニューズレターやEメールなどを観察した結果です。自分ではもう少し"A happy new year"というのも見るかとも思ったのですが、"Happy new year"の意外なまでの圧勝と言う印象でした。ただ、"A happy new year"の方が間違えているとまでは言えないと思うのです。

yearというのは可算名詞ですので基本的に冠詞を取ります。更にhappyという形容詞がついているのでなおさら冠詞をとりやすくなります。

 また新年の挨拶を完全な文章で書いたときには" I wish you a happy new year"となり、この場合は不定冠詞の"a"を省略する事は出来ませんので、これの短縮形だと思えば寧ろ"A happy new year"の方が正しくて慣習上"Happy new year"が多用されていると考える事も出来るかもしれません。

"Happy birthday"とか"Good luck"なども全く同じだと思いますが、一方で冠詞をつけると概念が具体化されてしまうので冠詞を付けるのは間違いであると言う踏み込んだ意見もあって興味深く拝見しました。"Happy new year"なら「よいお年を」と言う感じが出るが、"A happy new year"とすると「とある幸福な新年度」のようなニュアンスになるというもので、傾聴に値するとも感じました。

会話では誤魔化しが利きますが、正式な報告書、提案書などの形で文字で残る英文を書くときに冠詞の扱いと言うのは本当に難しく、私は著名な文法書の冠詞の部分は大抵書店で立ち読みをしたし、冠詞のエッセンスに特化した参考書も数冊持っています。(白状しますが、読破はしていません!)

ちょっと意外なことを書くと、不定冠詞で言えば我々は最初に"a"の存在を知り、その特殊形として後続の名詞が母音で始まる場合に"an"となるというイメージを持ちますが(持ちますよね?)、実際は逆のようなのです。

 元々は不定冠詞は"one"という語だったようで、"one day"(ある日)、"at one time"(ある時)などの用法はその名残だと思われます。この"one"が、発音の関係からか"an"と表記されるようになり、それが更に単純化されたものが"a"であるというのが歴史上の事実のようです。母音で始まる名詞の前では"an"という元々の形が残っているわけで、決して"a"の変形ではないのです。

文脈の流れから特定される物の前に着く定冠詞"the"は、明らかに"that"の変形ですが、冠詞と言うものは実に奥が深く、この奥の深い冠詞というもの(定冠詞+不定冠詞)をくっつけて"The One"とすればそれは"神"を意味します。どうやらこの分野を極めるのは神業に等しいと言う事なのかもしれません。

World(世界)の原型が、Word(言葉)だったのではないかと思うのですが、最初に言葉があった → 最初に言葉ありき ・・・だとすればとてつもなく奥の深い話だと思うのです。

殆ど書きなぐりのようですが、以上Robert Henryの年末年始の瞑想でした。正月3連休は頭の体操に持って来いですね。

正月バンザイ。