2008年1月19日土曜日

Global Asset Implosion.

The Alchemy of Financeという著書もあるGeorge Sorosは自身を投資家というよりは錬金術師(Alchemist)であると語っているのですが、その彼の言う錬金術が世の中を震撼させたのが1992年9月16日の英国ポンド危機でした。
 彼はここで100億ドル以上のポンドの空売りをして推定20億ドルの収益を上げたとされていますが、この"英国銀行を潰した男"のグローバルマクロテーマのベースにはいつも"Boom and Bust"の見極めと言う判断があるようです。

言葉的には、個人的にはBoom and Burstのほうが分かりやすいような気もしますが、好況・不況の循環を表す時には Boom and Bust の方が用いられます。Bustはご承知のとおり胸部という意味もありますが、まーその方が山あり谷ありという感じは出ますかね。

Oopsこの路線に深入りは禁物・・・

投資家としては困難な話ですが、世界的な資産上昇過程(Global Asset Boom)は、2007年度で終了し、今年は世界的な資産価値縮小過程(Global Asset Bust)の段階に入っていると考えざるを得ません。

Low Volatility, High Correlation などが注目された何に投資しても儲かると言う世界的な資産価値上昇の時代は終了。2007年8月に表面化したサブプライム問題を契機に一旦リスク縮小の自衛策に走った市場参加者の多くは、2008年度入りしてからは安易な分散投資から"選択と集中"と言う方向に舵を切って荒波に立ち向かいましたが、ここへ来て再びリスクを縮小する動きが目立ちます。

"選択と集中"というテーマの中で、選択されたのはやはりアジア、コモディティ、そしてエマージングの市場だったのですが、更にアジアであれば中国、インドに、コモディティなら原油、金、食物という 具合に更なる集中現象が起こったものの、遂にそれらにもBust過程入りの兆候が顕著になってきたことで市場参加者は戦略の再考を迫られています。

最後の砦だった中国、インド、商品市場・・・これらが今後も持続的な調整を続けるとすれば、どんな形でもAssetを持ってしまうと価値が減ると言う環境が継続するのですが、この"市場不調時"に最優先される戦略は、"Capital Preservation"(運用資本の防衛・温存)であり、これが今後のテーマのひとつとなってくる可能性が大きく上昇しています。

昨年度には中国株が一年間で倍になると言うように、これまではまさに資産価値が爆発的に上昇する
バブル過程だったと言えるのですが、これはまさしく価値の"Ex-plosion"でした。
 英単語の接頭辞の勉強のようになりますが、今既に始まってしまったかに思えるのはこれの反対の"Im-plosion"です。

資産価格が内向きに倒れていく過程・・・・・・外向きに拡大していた資産価格が内向きに縮小していくと言うこの過程では、資本の流れも逆流します。

局地的に見れば・・・・投資家は資産を売却してポートフォリオのCash比率を上昇させる動きに出ます。
当然ですが、海外資産の処分については資本のRepatriation(本国還流)、為替では自国通貨買いという動きに繫がります。

全体の絵を見れば・・・・・各国、各経済圏が上記の動きを行うという"流れ"がぶつかり合うと言うのが金融市場の鳥瞰図となるでしょう。

年初からの世界同時株安の動きは、最後の拠り所であった中国、インドなどをも例外とはせず、遂に原油価格や金価格も明確な調整過程に引きずり込んだかに見えます。

このGlobal Asset Implosionが、世界的な資本逆流・還流(Global Repatriation)の引き金を引いた結果、世界的な調達通貨の役割を果たしてきた日本円、スイスフランが最強通貨となり、RiskMoneyの故郷である米国ドルがこの二通貨以外に対してはこれまた上昇していると言うのも当然の話です。

ドル円以上にクロス円(特にGBP円でしょうね・・・)が落ちるというのはまだまだ中長期的に乗ってよい戦略でしょう。

業界としては、"Investment から Trading へ",消費者行動も "投資 から 貯蓄へ" と言う具合に一旦従来の潮流が逆流しそうな雰囲気です。