1994年9月、飛ぶ鳥を落とす勢いだったMike TysonのライバルだったLenox Lweisは、地元ロンドンに凱旋して行ったWBCヘビー級タイトルの4度目の防衛戦において試合開始早々第二ランドに世界ランク一位の氏名挑戦者Oliver McCall選手の右ストレートを不用意に食らって豪快に倒れ込み、直ぐに立ち上がりましたが足元がふらついたためにレフェリーに試合を止められてしまい、初黒星を喫すると同時に虎の子の世界タイトルを失ってしまいました。
試合直後のインタビューで彼は、レフェリーのストップが早すぎたと必死に抗議します。
Yes, I was down but I was not out.
確かに自分はdownだったけどoutでは無かった・・・倒されたけれども、まだ大丈夫だった・・・彼はそう言っていたのです。
当時は単純に"down"と"out"の使い分けに感心していたのですが、倒されて立ち上がれない位のダメージを受けてしまえば、"down and out"となり、この語群は"落ちぶれた"と言う意味の形容詞句としても使用されるわけですが、やはり英国のホープで先般Floyd Maywether Jr.に初黒星を喫したRicky Hattonが痛烈なKO負けによる初黒星を乗り越えて再起すると言う記事で、"Hatton, down but not out"という記事が出ていたのでLenox Lewisの事を思い出したのです。
七転八起 ⇒ down but not out.
七転八倒 ⇒ down and out.
という対比は如何でしょうか・・・
さて、後半に荒れた2007年、そして年明け早々から荒れる初場所モードで座布団飛び交う2008年の金融市場ですが当然ながら震源地は東の横綱米国経済です。
年明けのデータだけを見てもいよいよサブプライム問題に端を発した金融経済の混乱が実体経済に影響を及ぼし始めている事が経済指標の悪化と言う形で確認され始めました。
例えば、2日のISM製造業調査の景況指数の悪化と支払価格の上昇の組み合わせからは、景況感の後退と物価上昇の同時進行=Stagflationの足音が聞こえてきますし、4日の金曜日の12月雇用統計における非農業部門新規就業者数が18千人と予想の70千人を大幅に下回り、失業率が4.7%から5.0%に大きく上昇した事も来るものが来たと言う懸念を強める内容でした。
最早予想通り、米国経済の"減速"、"失速"は明白であり、"後退"、"収縮"まで行ってしまうのかどうか、その場合どういう経路でそこに到達するのか・・・・市場参加者の関心事はそこに移ったといえるでしょう。
既に"Down and out"か、まだまだ"Down but still in" か・・・2008年度は米国経済の打たれ強さが試されるという大きなテーマを抱えての船出となりました。
話を戻してLenox Lewisですが、再起後は順調でヘビー級統一世界王者に長期間君臨し、Oliver McCallにはTKOで雪辱、Mike Tysonの挑戦は血祭りKOで退け、Evender Holyfieldの挑戦も2度退けて、あのVitali Klitschko(クリチコ兄弟の兄の方)との打ち合いも負傷TKO で制して王者のまま引退しました。
強いのですが、凄みが出し切れず、どこか歯がゆい感じの彼が私は好きでした。レスリングでは今は亡きジャンボ鶴田選手にも通じるものがありましたね。
同様にどこか歯がゆい感じの米国ですが、今年は米国経済の懐の深さによって、米国経済の懐の寒さ度合いが決まると言う事でしょう。