9月の後半は本邦当局が6年半の沈黙を破って円高是正目的の円売りドル買い介入を断行しましたが、それ以上に米FOMCが必要があれば11月にも量的緩和第二段に打って出るという意向を明確にした事が金融市場にとっての大事件になっています。
この米国の量的緩和第二段ですが、二発目の量的緩和(Quantitative Easing)と言う事でQE2と表記される事が多くなってきました。これが金融市場に与えたインパクトは想像以上だったと言えますが、その理由はこのQE2のSpeed感とScale感にあります。
Scaleに関しては既に1兆ドル規模を超える可能性も出ているのですが、1ドル=85円として85兆円規模と言う事になります。更にQE2はLSAP方式(Large Scale Asset Purchase)という方法で行われる可能性が高いのですが、これは広範なリスク資産を大規模に買い上げる方式ですので資産効果を経由した経済活力浮揚効果は相当なものになるはずです。Speed感でもこれを1年程度でやっていこうと言う事ですので物凄い事です。
日本の9月15日の為替介入規模が約2兆円で、1国の中央銀行が単独で行った介入としては史上最大でした。これで市場に放出された円資金を日銀が全く吸収しないという前提(=介入資金の非不胎化)で考えて、それを42.5回やるイメージが85兆円です。毎月3回~4回あれだけの規模の介入をやると言う事になったらまさに経済システム内を円資金の津波が駆け巡ると言う事になるでしょうが、まさにFRBは米ドルでそれをやろうとしている事になります。
これを受けての米ドル下落、資産価格上昇という動きが進行中なのですが、通貨毎に見てみると対米ドルでの上昇規模や速度にはかなりのばらつきも出始めています。
以下が先週の主要通貨ペアの変動率ベースTop10です。
通貨ペア 先週終値 前週終値 変動率(%) 変動幅(PIPS)
①EURGBP 0.8715 0.8524 +191 +2.19%
②EURUSD 1.3790 1.3488 +302 +2.19%
③EURCAD 1.4057 1.3809 +248 +1.76%
④GBPAUD 1.6262 1.6491 -229 -1.41%
⑤NZDUSD 0.7439 0.7336 +103 +1.38%
⑥GBPNZD 2.1248 2.1541 -293 -1.38%
⑦AUDUSD 0.9722 0.9590 +132 +1.36%
⑧EURCHF 1.3426 1.3260 +166 +1.24%
⑨GBPJPY 131.60 133.22 -162 -1.23%
⑩USDJPY 83.22 84.20 -98 -1.18%
欧州復活には程遠い状況だと思っていますが、とにかくEURが強いです。この通貨は対ドルのみならずあらゆるクロス取引で売り込まれてきただけに、新たな米ドル下落シナリオの台頭を受けて先ずは物凄い勢いで買い戻されているという背景がありそうです。
また9月15日には市場に強烈なメッセージを送る事に成功した本邦金融当局による円売りドル買い介入でしたが、上記の通り先週は83円割れ寸前のところまで反落して終了しており、本邦介入後に出てきた米国のQE2という材料によってドル円の水準もほぼ本邦の為替介入実施時点の円高水準にまで戻って来てしまいました。
今週からは、足元のドル安の動きの中で、大規模な介入努力が水泡に帰した格好の本邦当局の介入姿勢にも大きな注目が集まる事になります。