2012年8月5日日曜日

De-leverage and Downsize.

少し寂しいと言うか、気になる動きがあります。

世の中はバランスシート調整の真っ只中であり、所謂債務の縮小、De-leverageが進行していますが、この流れの中で一世を風靡したヘッジファンド勢の業容縮小の動きも止まりません。

考えさせられるのは、リスク回避バイアスの強まりで慎重になった投資家達がヘッジファンドに預けていた資金を解約して手元に戻すと言う動きをしているのではなく、寧ろヘッジファンドの方から投資家達に資金を返還する動きの方が目立つと言う事です。

良い投資アイディアも、そのタイミングや賞味期間も減少傾向を強める中で、市場の動きに対処していく為には少し減量をしないといけないと言うのが最大公約数的な理由なのです。要するにこの商売もどんどん難しくなってきていると言う事です。

2010年にStanley Druckenmiller氏 が30年間運営したヘッジファンドを閉鎖して話題となりましたが、その後彼と共にGBP売りを仕掛けてBank of Englandを屈服させて名を上げたGeorge Soros氏も旗艦ファンドであるQuantum Fundをその38年間の歴史で初めて閉鎖しました。(新規マネーの受け入れ停止)

NY証券取引所の日々の取引高の2%前後を占めるSteve Cohen氏のSAC Capitalも同様の決断をした他、今年に入っても5月にはJames Lyle氏が運営するMillgate Fundが閉鎖を決めて投資家に資金を返還しました。(これはJulian RobertsonのTiger Fundグループです)

先週この流れに加わったのが、あのLouis Bacon氏が率いるMoore Capitalです。実に$2billionにも及ぶ資金を投資家に返還するという発表をして業界を驚かせました。これは運用資本の約25%に当たる資本の返還になります。

返還理由は過去18ヶ月のパフォーマンスに満足が行かない事、特に2012年は第二四半期だけでもファンドのパフォーマンスが▲3.2%と振るわなかったことだそうで、投資家向けのレターの中で彼は正直に以下のようにコメントしています。

I am more comfortable taking down the size of the fund than increasing the size of the positions in order to give clients an adequate return given the fees they are paying.
 I found myself trying to make money in a much less liquid environment, with less instruments to trade – it's very frustrating.

投資家に手数料に見合うリターンを提供するためには運用ファンドの拡大よりも縮小が必要と判断した事。市場は安全、安定的に取引できるプロダクトも減っており、流動性も悪化している事などが背景である事を説明している訳です。

個人的に危惧するのは、今後市場環境は益々悪化していく可能性がある中で従来以上にプロに運用を任せる必要もある中で、当のプロ中のプロ達は寧ろ事業規模の縮小を続けていると言う事です。こうなると新たな資産運用の担い手は誰になるのか・・・詐欺のようなスキームが出回る事の無いように業界全体がしっかりと注意していく必要があるのではないでしょうか。