サッカーで英国がポーランドに勝ってワールドカップ出場権を手にした後、祝勝ムードも束の間、ハーフタイムに監督が使用した言葉が人種差別的であるとの批判が巻き起こりました。
大した事ではないと受け流そうとしたものの、批判の高まりを受けて監督は公式に謝罪すると言う事態に追い込まれたと言う出来事がありました。(詳細は以下のリンクで)
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2465550/Roy-Hodgson-apologises-feed-monkey-joke.html?ito=feeds-newsxml
問題となった言葉は、Feed the Monkey でした。
ハーフタイムに各選手の役割を再確認した際に、作戦上の自身の役割を再確認してきた選手Aに対して、選手Bにパスを出せという指示を出した際に以下の言葉を添えたそうです。
‘It’s like the old Nasa joke – feed the monkey’.
直訳すれば、「NASAの古いジョークのようだが、サルに餌をやるんだ」と言う事になります。
非常に運が悪い事に、このパスを貰う方の選手が混血の選手だった事からチーム内の一部に監督がこの混血の選手を侮蔑的に表現していると言う印象が持たれたと言うのが背景です。
スター選手のルーニー選手やこの混血の選手本人からも監督にそのような意図は無かった筈であり、批判は誤解に基づくものだと言う監督擁護の声明が出されたものの結局は公式な謝罪声明を出さざるを得ないところまで追い込まれたということです。
NASAの古いジョークと言うのは、かつてNASAが猿に宇宙船の基本操作を訓練した上で、人間の宇宙飛行士にこの猿を同乗させて宇宙に送り込んだ時のエピソードです。
次々に訓練通りに猿に指示を出す管制官に対して、退屈した人間の宇宙飛行士が自分は何をすればいいかと質問した際に、「君は後で猿に餌をあげてくれ」と返答したと言うものです。
恐らく監督は、このエピソードに準えて、自分の役割の遂行に徹するように指示を出したと言う事かと思います。それがあたかも猿に餌をやる⇒混血の選手にボールを与えると言う意味で使われたと言う批判を受けてしまったのでしょう。
Communicationと言うのは本当に難しいと思います。これはナショナルチームの話ですが、通常のリーグ戦ではどこもマルチナショナルな選手構成ですのでもっと言葉遣いには気を遣う必要があるのかもしれません。英語が堪能な政治家でも重要な交渉にはプロの通訳をつけることも多いと言うのも頷けますね。
Communicationの肝は、自分が何を言うかではなく、相手が何を聞くかだと言います。ある書籍で出会った”It is not what you say, but what they hear that really counts.”と言う言葉を思い出しました。
それにしても考えてしまうのは、このFeed the monkeyと言う言葉が慣用句のように別の意味で使用される事もあることです。
具体的には、いけないとしりながらやってしまうことを意味します。ちょっとやめられない、とまらない・・・かっぱえびせんのような意味です。多分観光地などで「猿に餌をあげないでください」と言う説明を受けてもかわいい顔の小猿などが近づいてくると思わずお菓子をあげてしまうという行為から来ているのではないかと推察しています。
例えば、野球で内角高目の速球で上体を起こされた後に、外角低めのカーブを投げられて腰が引けたまま空振り三振を繰り返す・・・・・或いは高目のつり玉に手を出すなと言う指示を受けても実際に打席に立つと無意識に手を出してしまう・・・そういう時に解説者が言うのが、
He is feeding the monkey again. と言う英語です。
悩ましいじゃーありませんか・・・・・