Catch as catch can という言葉と初めて遭遇したのは格闘技関係の雑誌でした。
もうかなり昔の事です。まだ世間の太宗がプロレスを真剣勝負と信じていた頃の話ですが、純粋に強くなりたいと言う一部の選手達が既存団体を離脱して新団体を立ち上げる動きが幾度かありました。
それまでのプロレスから派手なショー的な要素を排除したかなり地味なスタイルでしたが、場外乱闘はもとより、飛び跳ねたり、相手をロープに振って・・・・と言う事もない真剣勝負スタイルは一定の説得力を持っていました。
こうなると、相当な実力差がある場合を除けば、かなり地味なグランドでの密着戦となる事が多く、最後は締め技か関節技で勝敗が決まるパターンが多かったですね。TVで放映するプロレスでは展開の狭間でのつなぎ的な要素でしかなかった関節技や締め技で勝負が決すると言うスタイルは斬新でしたが、玄人受けはしたものの徐々に支持を失っていったのは残念なことでした。
そんな選手達が指導を仰いだのはエンターテインメント色の強いアメリカンプロレスではなくCatch-styleとも呼ばれた欧州系(特に英国系)の実力派プロレスラー達でした。カール・ゴッチなんて懐かしいですね。
その際の戦術の柱がこの、Catch as catch can と言うコンセプトでした。文字通りに掴める所は何処でも掴んで捕まえてしまうと言うイメージですね。アマレスのグレコローマンスタイルなどは下半身を掴む事は反則ですが、プロレスでは何処でも何でもいいから相手を捕まえてしまえと言うことです。要はフリースタイルのことですね。
長い間、これは格闘技の世界の業界用語と考えていましたが、どうやらそうでもないようです。
良く言えばフリースタイルで臨機応変に、悪く言えば無計画、出たとこ勝負、行き当たりばったりに・・・・・物事に取り組む様子が形容詞でも副詞でも Catch as catch can と言う言い回しで表現できるということですね。
往年の名レスラーで代名詞だったダブルアームスープレックスと言う投げ技から人間風車と呼ばれたビル・ロビンソン氏の訃報が報じられました。彼もCatch as catch can スタイルの継承者でした。
ご冥福をお祈りします。